「内定確実だから、社員が使う飲食店を紹介したい」
そう言って、採用面接に来た20代女性を食事に誘い、身体を触るなどのわいせつ行為をしたとして、埼玉県警が強制わいせつの疑いで10月26日に逮捕したのは、同県草加市の化学製品メーカーに勤務する末吉正明容疑者(60)。
「被害女性は容疑者の言葉を信用して飲食店についていき、2人きりの席で酒を飲まされた。2軒目としてカラオケ店に誘われたので、それにも従った。ところが個室に入ると、無理やり身体を触るなどわいせつ行為が始まったため、隙をみて逃げ出して交番に駆け込んだ」
と全国紙社会部記者。
同県警によると、9月30日午後9時13分ごろから約25分間の犯行。さぞ、おぞましい思いをしたことだろう。
ムラムラして自制心が保てなくなった
警察の取り調べに対し、「酒が入り、2人きりになったことでムラムラして自制心が保てなくなった」などと供述。
大筋で容疑を認めている。
末吉容疑者の役職は工場長補佐。勤務先企業によると、9月中旬に定年退職するまでは工場長代理を務めていたが、犯行当時は再雇用された嘱託社員だった。
「業務内容は工場長のサポートで、指示された事務作業などをこなすこと。従業員をまとめる役割はありません。事件当日は2次選考の面接試験でしたが、このとき末吉容疑者は面接官を務めていませんし、内定者を決める権限もなければ知る立場にもない。そもそも内定確実という事実はなかったんです」
と同社の担当者。
採用予定1人の狭き門。1次選考を通過した複数の就活生が面接を受ける中、1人の面接直後に内定を決めたりはしないという。
どのように被害女性と接点を持ったのか。
「それがわからないんです。ただ末吉容疑者は、1次選考の書類審査とリモートで実施したウェブ面接には立ち会っていました。2次面接が終わった後、担当した面接官は被害女性を会社の玄関まで見送っており、接触する機会はなかったはず」(同・担当者)
同県加須市で妻子と3人暮らし。約25年前にローンを組んで一戸建てを新築し、自立した子どもを含め3人の子の父親だ。
「めちゃくちゃいい人。毎朝早くスーツ姿に自転車で出勤し、ハキハキと挨拶してくれる。子煩悩で家族仲もよさそうだった」(地元の男性)
近所の住民は、
「ごく普通の男性という印象ですが、夫婦ゲンカする声がよく路上まで聞こえてきました。旦那さんは少し劣勢だったかも」
と打ち明ける。
俺最強。会社でも怖いもん無し
末吉容疑者はSNSで、
《俺最強。人の半分の肝臓で酒も飲める。会社でも怖いもん無し》
と豪語する自信家だった。地元の古参住民が振り返る。
「千葉県の漁師町の出身で、若いころは活発だった。町内会の活動に積極的に参加し、祭りでは率先して神輿をかついだ。青年部の代表を務めるなどリーダーシップがあったが、少しやんちゃだったかもしれない」
会社の同僚はこう話す。
「遅刻や早退もなく、まじめに勤務していて、酒を飲むとそれ相応には酔うものの、暴力を振るったりセクハラめいた言動をすることはなかった。酒癖が悪いという話は聞いたことがない」
だが、犯行はもちろんのこと、採用権限もないのに「内定確実」とデタラメを言って就活生を飲食店に連れ出しただけでもタチが悪い。
同社は逮捕当日、懲戒解雇にしたという。