ニューハーフタレントとして演芸や歌謡ショーなどで活躍。妖艶な美貌とドスのきいた声のギャップが魅力のカルーセル麻紀さん(79)。60代から患っている病気と付き合い続け、80歳を目前にしてもなお、自分らしい生き方を貫く様子を紹介したい。
脳梗塞で救急搬送されるも後遺症なし
カルーセルさんが脳梗塞で救急搬送されたのは2020年4月30日のことだった。
「医師から脳卒中の警告をされていたのに、自分に限っては大丈夫だと過信していたのよね」と雑誌のインタビューで振り返るカルーセルさん。実は60代半ばから右足のふくらはぎに異常を感じるようになり、2011年に「閉塞性動脈硬化症」と病名が告げられていた。
閉塞性動脈硬化症とは、足などの血管が動脈硬化により狭くなったり、詰まったりする病気。カルーセルさんは左足にも発症するなど再発を繰り返し、6回もカテーテル手術を受けたという。
喫煙に好きなお酒、イケメンが命の糧に
「りんくう総合医療センター」で循環器内科部長を務めていて、動脈硬化症が専門の増田大作医師に、血管の健康について聞いた。
「カルーセル麻紀さんが2020年に発症した脳梗塞も、その9年前に発症した閉塞性動脈硬化症も、場所は違いますが、どちらも血管が詰まることで起こるので〝血管病〟ということができます。現在の日本人はおよそ4人に1人がこの血管病で亡くなっているので、血管を健康に保つことはとても大事です」
足の血管が詰まるたびに治療をしてきたカルーセルさん。なぜ何度も同じような血管の病気になったのだろう。
「偏った食生活や運動不足などの生活習慣に加え、喫煙も動脈硬化のリスクを高める要因です」(増田医師、以下同)
実はカルーセルさんは若いときから大のヘビースモーカー。当時は1日2箱吸っていたという。医師から「言っても聞いてくれないかもしれませんが、せめて減らしてください」と懇願されるも、長年の習慣を改めるのはなかなか難しかった。努力したが、喫煙本数を激減させることは叶わなかったようだ。
「カルーセルさんの場合、喫煙を続けたために血管の壁にプラークというこぶができ、血液の流れが徐々に悪化。まず足の動脈硬化が進み、それと同時に脳梗塞のリスクが上昇していって、ついに2020年に脳梗塞を発症したのだと思われます」
今、タバコは1箱半に減らした。さらに、家の中では少なくとも1日3000歩を心がけ、夜に散歩するときは緩めの坂道を2000歩ほど歩くなど生活習慣を改善している。運動の効果か、3か月に1回の通院での肝機能をはじめとする血液検査の数値もほぼ正常と落ち着いているそう。
「病院には若くてイケメンのドクターが多いから楽しみだし、主治医は、検査結果を褒めてくれるから、本当にうれしい」(カルーセルさん)
定期的な通院の胸キュンも生命力の糧にしてしまうあたりは、女性として見習いたいくらいだ。
「まだまだ食べたいものを食べ、おいしいお酒も楽しみたい」というカルーセル麻紀らしい生き方を貫き通し、80歳を迎えてもなお、ひと花もふた花も咲かせてくれそうだ。
約4人に1人が血管病で亡くなっている!
【死因別の死亡者数の割合】
がん 27.8%
心疾患 15.2%
脳血管疾患 8.2%
老衰 7.6%
肺炎 7.2%
不慮の事故 3.0%
2位の心疾患と3位の脳血管疾患で死亡した人の割合を合わせると、全体の23.4%を占める。(出典●厚生労働省「平成29年人口動態統計」)
(取材・文/相原郁美)