「来月誕生日ですが、楽しいですか?」
11月13日、世界的な人気を誇る韓国の7人組グループ・BTSの最年長メンバーであるJINは、ファンの問いに対し、
「いいえ……“最前線”に決まりました」
と、なんとも複雑そうな様子で答えた――。
10月17日、BTSの所属事務所は、韓国の男性に義務づけられている兵役の入隊期限が迫っていたJINが近く入隊することを発表。ほかのメンバーも順次、兵役に就く予定で、所属事務所は“3年後の'25年ごろにグループとしての活動を再開したい”とした。
韓国では通常、男性は18歳から満28歳の誕生日を迎えるまでの間に、2年間の兵役に就かなくてはならない。しかし、'21年に施行された“BTS法”とも呼ばれる改正法によって、大衆芸術の優秀者に限り、期限を30歳になる年の年末まで延期できるように。これはBTSによる国への高い貢献が認められた特例措置だったが、延期であって免除ではない。12月に30歳の誕生日を控えている最年長のJINは、最終的に期限を待たずして入隊を発表することになった。
「“最前線”というJINさんの言葉は、ファンとの交流サイトで発せられたもの。韓国で言う“最前線”とは、北朝鮮との軍事境界線周辺を指します。発言をそのまま受け取るなら、軍事境界線近くの師団の“新兵教育隊”に入る通知書を受け取ったということでしょう。入隊の時期は、12月になる可能性が高いと見られています」(スポーツ紙記者)
“最前線”での兵役は、どのようなものなのか。韓国の兵役制度に詳しい作家の康(かん)熙(ひ)奉(ぼん)氏に話を聞いた。
歩兵として軍事境界線を守るのが主な任務
「韓国軍の1番の目的は、北朝鮮との戦闘に備えること。朝鮮半島を分断する軍事境界線の南側を守るのが“最前線”で、陸軍の主力部隊はそこに配備されています。韓国の徴兵制では、陸軍に行くとほとんど歩兵になります。 “最前線部隊”への配属は全体の割合で見ても多く、歩兵として軍事境界線周辺を守るのが主な任務となります」
そんな重要な務めは、やはり楽なものではないようで……。
「最前線は多くが山間部に位置していて、韓国でもいちばん寒いところ。これから春までの時期は、とても辛い訓練になります。今のタイミングで最前線に入隊するというのは、時期的に考えて、春以降に入隊する人と比べるとかなり厳しい環境が待っているということ。韓国軍は、訓練の内容は海兵隊が最も過酷ですが、訓練される場所は南方です。北朝鮮との緊張感や自然環境といった点では、最前線部隊のほうが大変な部分もあります」(康氏、以下同)
かなり過酷な訓練になりそうだが、具体的にはどのような流れになるのか。
「陸軍は、まず最初に5週間の“新兵訓練”を受けます。多くの人は韓国中部にある『論山(ノンサン)』の新兵訓練所に入るのですが、それ以外に、各師団にも“新兵教育隊”というものがあります。JINさんは発言の内容を踏まえると、最前線部隊の新兵教育隊に入隊し、そのまま最前線部隊に配属される可能性が高いと考えられます」
ネット上では、
「万博誘致のための釜山コンサートまでやり遂げた後、急いで入隊延期願いの取り消し手続きに動いたから、不人気な“最前線”に回されたのではないか」
という声もあるが、康氏はこう語る。
JINは“最前線部隊”を志願した?
「最前線部隊の入隊は、志願することもできます。入隊する人員は、志願者の中から陸軍が選抜する形になります。確かに、山間部という過酷な環境や交通の不便さもあって、一般の人が志願することはあまりありません。ただ、JINさんは“最前線”に赴くことを自ら明かしたわけですから、おそらく志願したのではないかと思います」
そこには、韓国の芸能界特有の風潮も関係しているという。
「K-POPのアーティストがあえて最前線を志願するのは、しばしばあることです。兵役に行くのなら、“国のために頑張っている”という印象を強く残せる部隊に行こう、というのは自然な感情であり、韓国ではこういった意志が大事です」
BTSはほかのメンバーも順次兵役に就く予定としているが、ほかのメンバーも同じように“最前線”へ向かうのか。
「もしJINさんが“最前線”を志願したのであれば、兵役を延期してきたという経緯もありますし、BTSで初めて兵役に入るメンバーとして模範を示したかったのかもしれません。以降のメンバーに関しては、28歳までであれば、技能を活かした部隊や、兵士の意識を音楽によって鼓舞する“軍楽隊”への入隊もできる。JINさんが最初に厳しいところに行くことで、ほかのメンバーは批判を浴びることなく、いろいろな兵役履行の道が拓けると思います」
過酷な環境での訓練は心配だけど、先陣を切った最年長に続いて全員がスムーズに兵役を務めあげれば、7人での早期活動再開も見えてくる!