いま『うる星やつら』がリメイクされ、話題を集めている。
昭和のアニメがリメイクされブームに
同作は、漫画家・高橋留美子のデビュー作で、'81年から'86年にかけてアニメ化されると、一世を風靡する人気アニメに。今回、36年ぶりにカムバックするとあって、リメイク版が始まるや、さっそく「'80年代の放送当時の雰囲気が懐かしい」「昔のほうが面白かった」などなど、賛否が渦巻く状況に。
これまでも、『宇宙戦艦ヤマト』『ひみつのアッコちゃん』『おそ松くん』などがリメイクされてきたが、そのたびに賛否両論が巻き起こるのは、リメイク作品の宿命なのかも……。
とはいえ、往年のアニメがリメイクされると盛り上がるのも事実。そこで週刊女性では、「もう一度見たいアニメ」と題して緊急アンケートを実施! 好きな推しキャラ含め、あなたが好きなアニメはランクインしている?
世界的人気作&王道&イケメン系が上位に
「初めて大好きになったアニメ。声優とデザインが好きすぎる」(福岡県・35)
「たくさんのセーラー戦士が登場して、友達と好きなキャラについて話したり、イラストを描いたりした」(長野県・39)。
栄えある1位は、『美少女戦士セーラームーン』('92〜'97年)。'92年に少女漫画雑誌『なかよし』で連載が始まると爆発的な人気を得て、アニメ化だけでなく、ミュージカル化、テレビドラマ化されるまでに。今年は30周年ということもあって、『30周年プロジェクト』を展開中だ。
「女の子向けの戦隊モノのパイオニア的作品。それまでヒロインが活躍する作品は多々ありましたが、個々のキャラクターが立っているチームヒロインというジャンルは、セーラームーンによって確立されたと思います」
そう話すのは、エンタメ企業で版権やIP(知的財産)関係の事業戦略を担当する鷹鳥屋明さん。金字塔的作品だからこそ、与えたインパクトは多岐にわたった。
実は鷹鳥屋さん、海外(特に中東地域)で日本のアニメやマンガ作品を紹介する仕事にも携わり、「中東で一番有名なサラリーマン」という顔も持つ。
「先日もサウジアラビアで行われた『サウジアニメエキスポ2022』へ行ってきたのですが、現地でもセーラームーンは大人気で、コスプレをしている中東の女性たちもいるほどです。コスプレという観点から見ても、セーラームーンが与えた影響は大きい」(鷹鳥屋さん)
たしかに、女子フィギュアスケートのメドベージェワ選手(ロシア)がセーラームーンの衣装でエキシビションを披露するなど、同作の女性人気は国際的だ。
続く2位に輝いたのは、『キャンディ・キャンディ』('76〜'79年)。その理由を見ると、「グッズもコミックスも持っていたし、アニメも歌も好きだったから」(神奈川県・52)、「子どもながらに不幸ばかり続くキャンディが頑張る姿が胸に響いた」(京都府・47)と、アラフィフから圧倒的な支持を得たもよう。
「4位の『アルプスの少女ハイジ』('74年)や10位の『ひみつのアッコちゃん』('69〜'70年ほか)にも言えることだと思うのですが、いわゆる女の子の王道系の作品。言い換えれば、色あせない不朽の名作。人気が高いのも納得ですよね」(鷹鳥屋さん)
そして、トップ3に滑り込んだのが、「この作品で、初めてバスケをカッコいいと思ったから」(愛知県・41)、「面白かったしハマりすぎて散財するは、同人活動までしてしまって、今や黒歴史」(茨城県・49)といった声を集めた『SLAM DUNK』('93〜'96年)。
今年12月には、『THE FIRST SLAM DUNK』として劇場版が公開され現在も人気の高い名作だが、連載されていたのは『週刊少年ジャンプ』。少年マンガを女性が支持するのは意外な気もするが……。
「時代背景的に、野球からバスケットボールやサッカーに人気がシフトしていく時期。特にSLAM DUNKによって、“バスケ=カッコいい”という風潮が高まりました。また、たくさんのイケメンが登場する同作は、いわゆる“カップリング”(キャラクター同士の関係性)要素の強い作品なので女性人気も高くなる」(鷹鳥屋さん)
“キャラ推し”文化は昭和から!
こうしたイケメン、美少年が活躍する作品が支持を集めるのは、今回のランキングを見ても顕著だろう。
例えば、6位にランクインしている『ベルサイユのばら』('79〜'80年)では、「オスカルがとにかく好きだった」(神奈川県・53)をはじめ、キャラクターに魅了されたという声は多く、9位の『幽遊白書』('92〜'95年)でも、「キャラクターや物語などすべてが好きだった。小中学生でお金がなかったけれどグッズを買っていた」(東京都・41)というように“キャラ推し”の声が少なくない。
「先のコメントに“同人活動までしてしまって”とありましたが、'90年代前半って作品をモチーフにした女性の二次創作が活発化していく時期。ベルばらから続く、好きなキャラクターを推す“推し活”が花開いていく。
『幽遊白書』で言えば、蔵馬と飛影といった美少年、イケメンがいて、さらにカップリング要素がある。ランクインこそしていませんが、『るろうに剣心』もそうですよね」(鷹鳥屋さん)
放送時期、主題歌……「思い出補正」で記憶に残る
では、5位の『タッチ』('85〜'87年)はどうだろう? 投票した人の声は、
「毎年夏休みに再放送していて見ていた」(神奈川県・45)、「話の内容が今までの野球マンガとは一味違ったから」(神奈川県・53)といった意見が寄せられているが、「夏休みの思い出補正があると思う」と鷹鳥屋さんは笑う。
「今回、このランキングを見て、『タッチ』と『シティーハンター』('87〜'88年ほか)の女性人気がこれほど高いことに驚きました。両作に共通するのは、定期的に再放送をしていた点。前者は夏休みに、後者は学校から帰ってきた夕方に。そうした当時の思い出と相まって印象に残りやすいのではないか」
そして、この2つにはもうひとつ共通点があるという。ズバリ、主題歌だ。
「岩崎良美さんの『タッチ』、『シティーハンター』はTM NETWORKさんの『Get Wild』、どちらも大ヒットした超名曲です。主題歌がもたらす影響力の大きさを、この2作品は教えてくれていると思います。もう一度見たいと思うのは、いまなお記憶に残っているということ。再放送×超名曲ともなれば記憶に残りやすいですよね」(鷹鳥屋さん)
7位には、「ありえない面白おかしい話が多くたくさん笑えたから」(神奈川県・49)、「小さいころ、グッズをたくさん持っていた」(福島県・45)という声が多かったトップ10唯一のギャグアニメ『Dr.スランプ アラレちゃん』('81〜'86年)が名を連ねる。
やっぱり“王道”は強い
鷹鳥屋さんは、もう一度見たいと思わせるアニメには、次の共通点があるのではないかと話す。
「わかりやすい王道的なストーリー、主題歌、カップリング、グッズ展開……こうした要素を持つ作品は盤石。すべての要素を満たしているセーラームーンが断トツで強いのも納得です(笑)」
ちなみに、版権やIP(知的財産)に明るい鷹鳥屋さんに、「そもそもアニメのリメイクは難しいことなのか?」と聞くと─。
「原作の先生次第です。先生がNOと言えば、リメイクはできないでしょう。リメイクする場合も、口を挟む先生もいれば、お任せしますではないけどノータッチの先生もいます」
【復活希望! もう一度見たい昭和&平成アニメTOP10】
〈1位〉『美少女戦士セーラームーン』('92〜'97年)/77票
〈2位〉『キャンディ・キャンディ』('76〜'79年)/45票
〈3位〉『SLAM DUNK』('93〜'96年)/33票
〈4位〉『アルプスの少女ハイジ』('74年)/31票
〈5位〉『タッチ』('85〜'87年)/30票
〈6位〉『ベルサイユのばら』('79〜'80年)/26票
〈7位〉『Dr.スランプ アラレちゃん』('81〜'86年)/24票
〈8位〉『シティーハンター』('87〜'88年ほか)/23票
〈9位〉『幽遊白書』('92〜'95年)/19票
〈10位〉『ひみつのアッコちゃん』('69〜'70年ほか)/18票
別途「好きな推しキャラ」のアンケートも実施。その結果、放送中のアニメがやっぱり強いことも判明。
昭和・平成から今も放送中の作品のキャラクターが上位に
栄冠に輝いたのは、「ロボットなのにご飯を食べ、喜びや悲しみを共有してくれる最高の友達だから」(兵庫県・43)といった支持を集めた『ドラえもん』('73年〜)。
次点が、「推理するときと普段のギャップが面白い」(静岡県・60)をはじめ幅広い世代から票を集めた『名探偵コナン』('96年〜)の江戸川コナンだ。
「親子で楽しめるのも大きいですよね。“もう一度見たい”で1位だったセーラームーンが、3位なのはセーラー戦士は5人いますから票が割れたのでしょう(笑)」(鷹鳥屋さん)
8位の『ちびまる子ちゃん』('90年〜)のまる子も放送中の作品だが、「実は海外でも人気が高く、中東では『MAROCO』の名で親しまれています」と鷹鳥屋さん。
「ドラえもんもコナンも海外(特にアジア)人気が高い。日本のアニメがあまり知られていないインドでさえ、ドラえもんは人気があります。日本には、海を越えるほどの人気を誇るキャラクターがたくさんいる。これは本当にすごいこと」
日本の声優たちが海外でも人気に
気になるのは声優だろう。そのキャラを演じる声優の声があるからこそ、魅力的なキャラクターが完成すると思うのだが、はたして中東にTARAKO(まる子の声優)のような声が?
「ぜんぜん違う声です(笑)。しかし、現地の人がアテレコするので、中東の人たちにしかわからない思い出の声がある。一方で、最近はクオリティーの高い日本のアニメをそのまま楽しもうという風潮があります。
例えば、昨年、中東でも『劇場版「鬼滅の刃」~無限列車編~』が公開されたのですが、現地のツウは“アニメは日本語で見る”ということで、日本語音声・アラビア語字幕で見ています。今後は、日本のアニメに加え、声優が海を越えて人気を得ていくようになるのでは」
時代とともに、次々と名作アニメが誕生していく。10年後には、「もう一度見たい」と思うアニメも変わっているかもしれない。
「昔のアニメ=テレビでしたが、今はディズニープラスやNetflixなどでしか見られないアニメもある。今は、最もコンテンツが豊富な時代だと思います。細分化しすぎていて、すべてを追いきれないから、かつてのような“みんなが見ているアニメ”は生まれづらいでしょう。
しかし、心に残るというのは別。『鬼滅の刃』のようなアニメは、いつまでもあるのではないか」(鷹鳥屋さん)
「もう一度見たい」、そう思える作品が今後も日本から生まれることを願うばかり。
【大好き! アニメ“推しキャラ”TOP10】
〈1位〉ドラえもん『ドラえもん』('73年〜)/88票
〈2位〉江戸川コナン『名探偵コナン』('96年〜)/52票
〈3位〉月野うさぎ『美少女戦士セーラームーン』(92〜'97年)/41票
〈4位〉キャンディス・ホワイト・アードレー『キャンディ・キャンディ』('76〜'79年)/33票
〈5位〉ラム『うる星やつら』('81〜'86年ほか)/31票
〈6位〉ハイジ『アルプスの少女ハイジ』('74年)/28票
〈7位〉オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ『ベルサイユのばら』('79〜'80年)/26票
〈8位〉まる子(さくらももこ)『ちびまる子ちゃん』('90年〜)/25票
〈9位〉ルパン三世『ルパン三世』('71年〜)/23票
〈10位〉孫悟空『ドラゴンボール』('85〜'89年ほか)/21票
お話を伺ったのは……
1985年、大分県生まれ。メーカー、商社、NGO職員として働く間に「中東で一番有名なサラリーマン」として中東で話題に。現在は日本のゲーム会社で、漫画やアニメのアライアンス案件などを担当。
取材・文/我妻弘崇