キャラメルのおいしさだけでなく、何が入っているかわからない小箱のおもちゃにわくわくドキドキして、おもちゃ目当てに買ってもらった経験はありませんか?誕生から100年。これまで3万種類、55億個にのぼるグリコのおもちゃの知られざるトイ・ストーリー。
1. 人気の始まりはメダル
江崎グリコの創業者、江崎利一の“子どもにとって食べることと遊ぶことは二大天職”という考えから生まれたグリコのおもちゃ。
1922(大正11)年の本格販売で絵カードを封入したのが始まり。
'29(昭和4)年におもちゃを入れる小箱が登場した。人気を呼んだのはメダルだった。
「質のいいメダルを作りたいと造幣局に創業者自ら頼み込んで実現させました。豊臣秀吉、西郷隆盛らを刻印した精巧な作りで評判がよく、追加発注を繰り返し60万個になりました」(石橋達二・江崎記念館館長)
2. オリジナルおもちゃ誕生
'35(昭和10)年に既製のアイテムからオリジナルのおもちゃに移行した。
「オリジナル第1号のおもちゃが何なのか資料がなくわかりませんが、専任を設けて製作していました。アンチモニー、セルロイド、木や紙などいろんな材質を使い、種類も豊富になりました。組み立てると家になる小箱も登場しました」(石橋館長、以下同)
3. もうひとつのおもちゃ“引換賞品”
販促キャンペーンとして'32(昭和7)年に始まり、戦争による中断を経て、'50(同25)年に復活した。
「小箱のサイズに制約を受けず子どもたちに文化的な物を提供するためのもので、グリコに入っている点数に応じて引き換えていました。戦前の賞品の“グリコ日記”は、書店でも販売されるほど人気でした。戦後は、ペットブームを背景にペットショップと提携して小鳥が当たるキャンペーンが話題になりました。なかでも世界の切手が当たるキャンペーンは大反響で、切手ブームの火付け役といわれています」
4. 小箱が下から上になったワケ
小箱は下についていたが、'37(昭和12)年に上になった。
「コストがかかるため社内で反対がありましたが、小箱はおもちゃの保護やバリュー感があるということで創業者がこだわってつけたものです。その小箱に入ったおもちゃを下ではなく、ゴールインマークのランナーが両手をあげて持ち上げているように見える上にしたことでバリュー感がアップしました」
5. 大人をターゲットに大ヒット
2001(平成13)年に発売した『タイムスリップグリコ』は、子どものときにグリコのおもちゃに心ときめかせた大人たちが箱買いするなど大人気に。
「グリコのおもちゃは未就学児童が主なターゲットですが、タイムスリップグリコは大人向けおもちゃを復刻版として企画しました。昭和30年代の高度成長期の車や家電製品、家具、学校給食などをおもちゃにしました。精巧な作りでクオリティーが高いうえに、当時を懐かしむ大人の癒しになったほか、昭和ブームやフィギュア人気もあってヒットしたと思います」
6. アナログとデジタルを併用
2010(平成22)年から登場した『アソビグリコ』は、プラスチックから木のおもちゃが主流に。近年はスマートフォンやタブレットで二次元コードを読み込むと専用アプリで遊ぶことができる。
「例えば木のおもちゃのキリンがスマホのアプリに取り込まれるとデジタル上のサバンナの中に入って動き回るほかクイズが出題されたり幅広い遊びができます」
7. “おまけ”と呼ばないで
「グリコのおまけ」と口をつく人は多い。
「創業者は子どもたちの身体と心の健康の両方を大切にすることを指針にしました。グリコーゲンの入った栄養菓子のグリコ、情操教育や知育のためのおもちゃ、どちらも主役です。付随しているイメージの“おまけ”ではなく当社では“おもちゃ”と呼ぶことにこだわっています」
8. 唯一無二“鉄人28号”パッケージ
『グリコ』といえば赤いパッケージにゴールインマークがトレードマークだが、'64(昭和39)年に100年の歴史で唯一無二のパッケージが登場した。
それは当時、大人気のアニメ『鉄人28号』がデザインされた。
「グリコが番組のメインスポンサーになっていたことから、鉄人28号をおもちゃだけでなくパッケージにも採用しました。
従来のグリコのパッケージと違うデザインになっているのは鉄人28号だけです」
9. 親に大好評のおもちゃ
『ぐりこえほん』('05年)や『ペーパークラフト(紙でつくろう地球のなかま)』('09年)は、親子のコミュニケーションにひと役買うおもちゃとして好評を集めた。
「おもちゃは安心、安全性に配慮しています。どちらも子どもに安心して与えられるだけでなく一緒に読んだり、作ったりできるので親子の対話になるおもちゃが好評の要因だと思います。ミニチュアの絵本は、かわいいとお母さんたちや女性に人気でした」
10. 100周年記念の特別商品
『グリコ』100周年を記念して建築家の隈研吾氏、ゲームデザイナーの堀井雄二氏ら10人のクリエイターが“心の中にあるグリコ”をテーマにデザインした『クリエイターズグリコ』(935円税込み)が11月22日から数量限定で発売される。
隈氏は「伝統的な架橋技術を現代によみがえらせ、地域に根差す建築物のジオラマです」、
堀井氏は「床や壁を自由に組み合わせて、わくわくする冒険の1シーンを創り出しましょう」と、それぞれコメントを。
グリコのおもちゃ年表
1922年 グリコ本格発売。絵カードを封入
1929年 おもちゃ小箱登場
1941年 紙や粘土のおもちゃが主流に
1942年 戦争により一般向けのグリコの製造中断
1947年 グリコ復活、おもちゃはクレヨン、消しゴムなどの実用小物
1949年 グリコのおもちゃが本格的に復活
1953年 エールフランスの飛行機、テレビ、洗濯機、冷蔵庫の三種の神器など“憧れの世界”をミニチュア化したおもちゃが主流に
1857年 プラスチック製のおもちゃが登場
1964年 鉄人28号グリコ発売
1967年 男の子用と女の子用のおもちゃが登場
1974年 大きくカラフルなおもちゃに
1981年 グリコ独自のキャラクターおもちゃが登場
1987年 みんなのおもちゃが登場
1998年 木のおもちゃが登場
2001年 タイムスリップグリコ発売
2005年 ぐりこえほん登場
2009年 ペーパークラフトグリコ登場
2010年 アソビグリコ登場
2022年 クリエイターズグリコ発売