芸人・加藤浩次(極楽とんぼ)が、新たなターニングポイントを迎えている。2006年からMCを務めてきたワイドショー『スッキリ』(日本テレビ系)の終了が決定。
11月11日の放送では、
「来年の3月末まで続くので。俺、何言うかわからないよ」
と、らしいコメントをした。
“狂犬”加藤浩次が重宝されたワケ
なんにせよ、浮き沈みの激しい芸能界では、こうした曲がり角がつきもの。そこをうまく乗り切ってこそ、幸せな芸能人生を全うできるわけだ。
はたして、彼はどうだろう。
その最初のターニングポイントは23歳のとき。フジテレビの深夜番組『とぶくすり』のレギュラーに起用されたことだ。
すでに人気のあったナインティナインとともに注目され、この3年後にスタートする『めちゃ×2イケてるッ!』(フジテレビ系)でお笑いの第一線に躍り出た。ナイナイやよゐこに比べ、芸風は粗削りだったが、そこが幸いしたともいえる。特に加藤は“狂犬”と呼ばれるほどの破天荒な言動で、ほかの芸人にはできない笑いをとった。
ただ、'02年に学園祭で不祥事(相方の山本圭壱が公然わいせつ、加藤はその幇助)を起こし『天才てれびくんワイド』(NHK Eテレ)を降板。山本は翌年にも、女性問題で謝罪した。が、これが加藤の転機に。単独でのMC仕事の緩急を使い分けたさばき方が評価されて『スッキリ』に起用されたのだ。
そのスタートから3か月後には、山本が10代少女との淫行事件を起こし、吉本興業をクビになったが、加藤は会社の方針に抗い、極楽とんぼの継続を主張。これが「男気」として支持され「モノ言うMC」としてのイメージも強化された。
いわば、ターニングポイントでもアクセルを踏める度胸とカンのよさが『スッキリ』の長命にもつながったわけだ。
そんな長寿番組の終了については、視聴率の低下や番組の最近の不祥事も原因として挙げられている。しかし、多くの人は3年前の吉本闇営業騒動における加藤の言動を思い出したのではないか。
『スッキリ』で会社の体質を批判して「経営陣が変わらないなら僕はやめる」とまで宣言。この対立関係はエージェント契約に切り替えることで決着したものの、昨春、吉本側がこれを打ち切った。つまり、騒動のほとぼりが冷めるころ、吉本が加藤を見限ったように、日テレも吉本芸人ではなくなった彼に期待するのをやめたという見方もできる。
だとしたら、加藤も悔しいだろう。それこそ、番組終了発表の4日前には、King& Princeの騒動を取り上げ、事務所を退所することで仕事が制限されるという予想に対し「いつまでそんなことやってるの」と反論。
「優秀な人間を使っていくっていうのがエンターテインメントであって、それは平等にあるべき」
と、主張した。実際、彼は独立後も4本のテレビレギュラー(1本は地方ローカル)を確保している。ただ、来春にはその最大の1本が失われることに。ターニングポイントを巧みに回り切り、むしろ加速すらしてきた加藤だが、闇営業騒動のカーブでは曲がり損ねたのかもしれない。
ユーチューブならともかく、テレビ業界はまだまだ事務所の力関係がものをいう世界。また、狂犬と呼ばれた男ももう若くはない。風を読み違え、自らの衰えに気づかなかったことが、この状況をもたらしたのではないか。
はたして、ここからの逆襲はあるのか。お手並み拝見といこう。