ABEMA放送への不満の声もあった(Twitterより)

《先ほどのアルゼンチン×サウジアラビア戦で、ABEMA史上過去最高視聴数記録を更新しました。皆さま、ご視聴ありがとうございます》

 AbemaTV社長の藤田晋氏は22日午後9時、このように感謝の旨をツイートした。20日に開幕したサッカーワールドカップカタール大会。ネットテレビ『ABEMA』は今大会、“全試合無料生中継”を実施している。

「22日に行われたアルゼンチン対サウジアラビア戦は、前半にエースのメッシがPKで先制し、アルゼンチンが幸先のいいスタートとなりました。しかし、今大会は機械的に判定することでよりオフサイドの判定が厳しくなったこともあり、その後アルゼンチンは3つのゴールが取り消しに。対する“格下”であるサウジアラビアは、高い守備意識でアルゼンチンの猛攻を耐えつつ逆転、2-1で勝利しました。ワールドカップ史上に残る“ジャイアントキリング”といえるでしょう」(サッカーライター)

 サウジアラビアは今大会の出場国のうち世界ランキングは下から2番目。一方のアルゼンチンは3位。

「アルゼンチンは、メッシが“最後のワールドカップ”と公言。直近の代表戦は36戦無敗と絶好調であり、優勝候補の声も多かっただけに、今回の敗戦は世界的に大きな衝撃を与えました。ABEMAの記録更新もサウジアラビアの同点ゴール、そして逆転ゴールと試合の盛り上がりによって徐々に増えていき、過去最高にのぼったのではないでしょうか」(前出・サッカーライター、以下同)

 アルゼンチン対サウジアラビア戦は、地上波放送はなく、国内ではABEMAが独占生中継だったことも大きい。しかし、ABEMAの放送は地上波放送より評価が高い面もある。

地上波のような余計な“煽り”がないABEMA

「ライト層ではなく、普段からサッカーをよく見ているファンこそ特に評価しているように見えます。理由は複数あり、まず地上波放送のような、アナウンサーや解説者による余計な“煽り”や過剰な“盛り上げ”がない。ある程度落ち着いた雰囲気で観戦できます。

 アルゼンチン・サウジアラビア戦の解説者は現役選手の槙野智章さんでした。彼は日本サッカー界屈指のひょうきん者で、しゃべりも達者。むしろサッカーファンには“ウザい”と嫌われがちなところがあるのですが、この試合は落ち着いた語り口で、解説も的確。珍しく……というと失礼ですが(苦笑)、非常に好評でした。解説は地上波とABEMAで線引きしているのかもしれませんね」

 さらにネットの強みを活かした中継をしている点も。

「一般的なピッチを横から撮影したメインカメラの配信だけでなく、片方のチームを追ったカメラがそれぞれ1つずつ、上空から撮影する全体カメラ、そしてそれらを1つにした4分割カメラと4パターンから選べます。特にピッチ上空から俯瞰で捉えた全体カメラは、より戦術的な部分やメインカメラでは映らないボールを持っていない選手の動きなどがわかるため、サッカーファンに好評ですね。全体カメラは実況・解説が入らないのでスタジアムの雰囲気が直に伝わるのも良い。

 ただ、これらの特別なカメラは、ABEMAが独自にやっているわけではなく、ワールドカップを運営するFIFA(国際サッカー連盟)が提供しているものです。つまり地上波でもやろうと思えばできるもの。しかし、テレビというシステム上難しい。ABEMAはこの部分でもネットの強みを活かした中継をしていると思います」

 藤田社長が言うように、この試合はABEMA史上過去最高視聴数記録を更新。同時接続数(現在、動画を視聴している視聴者数)は500万を超えたという。メッシという“世界最高のサッカー選手”が出場、優勝が期待される国の初戦ではあったが、日本とは関係のない試合でこの数字だ。

“最高”を叩き出した歪みか。これだけの人数を集めたため、“影響”を受けた人たちも……。ネット環境により、快適な視聴ができなかったという声が出ている(以下の声は、Twitterより引用)。

「カクカクする」「時々止まる」の声も…

《ABEMA見てるけどカクカクしすぎててちょっと酔うレベル。せっかくだけど見るの辛い。サウジ、アルゼンチンに勝ったらすごいね!》

《うち回線つよつよなのにAbemaカクカクすぎて見られたもんじゃないんですけど》

《試合見させてくれてありがとうAbema様なんだけど、めーーーーーーーっちゃとまる、5秒に1回くらいカクカクしてる、、、、》

《Abema は自分の家だけ画質悪いのか?時々止まる。有線にしないとダメか?》

《ABEMAでラグ無しで視聴できてる人いるのかな?普段プレミアリーグ観てる分には遅延ほとんど無いけどワールドカップ始まってからはまともに視聴できてない。回線は有線だから結構強めだと思うけど。》

《ワールドカップ、テレビでAbema見てるけど、ちょいちょいカクカクするの私だけ?》

《AbemaでW杯をテレビで見たけど、ライブ中継は画質悪すぎだし遅延凄いし固まるしでヤバない?》

《DAZNやアマプラは大丈夫なのに、abemaだけ画質低下って頻発するのはネットワーク不良が原因ではないでしょ。この質じゃ、将来有料にされても払えない》

「ネット環境」は人それぞれ。なかには動画視聴がしづらい弱い回線・環境の人もいただろう。しかし、基本的には“弱い”とは考えづらい有線環境でも視聴しづらいという人も……。

「批判は“画質が悪い”という声がもっとも多く、《ご利用のインターネット接続が現在不安定です。画質を下げて再生中です。》というテロップが出ていた人もいますね」(前出・サッカーライター)

 ABEMAはかつてスポーツ中継において“前科”がある。

亀田興毅に勝ったら1000万円(ABEMA公式HPより)

「'17年に『亀田興毅に勝ったら1000万円』という、元プロボクサーの亀田さんにボクシングで勝てば賞金1000万円を獲得できるという番組を生配信しました。大変な注目を集めましたが、このときはサーバーが負荷に耐えきれず、試合開始と同時にダウンしてしまいました。対応として、配信日夜に特設サイトにて無料放送となりました」(ITジャーナリスト)

 今年6月には、キックボクシングのRISE王者・那須川天心とK―1王者・武尊の“世紀の一戦”『THE MATCH 2022』を同じく生配信している。

「『THE MATCH 2022』では、亀田さんのときの反省を生かし、サーバーの増強やネットワーク帯域の確保を事前に行い、過去最高の接続数を想定し、券売実績に対して数倍以上のキャパシティを確保したうえで、配信に臨みました。

 また、当日は、予期せぬトラブルや障害につながるリスクに対応するため、50名以上のエンジニアがリアルタイムでシステム状況のモニタリングを行っています。失敗から学び成功を果たしたABEMAでしたが、アルゼンチンとサウジアラビアの試合はそのさらに上をいく予想以上の視聴者数だったのかもしれません。ネット中継というものは、その人のネット環境に左右されるため、どうしたって“見づらい”“止まる”という人は出てくるものではありますが」(前出・ITジャーナリスト)

ABEMAの解説はあの本田圭佑

 いよいよ本日23日、日本代表の今大会初戦となるドイツ戦が午後10時にキックオフとなる。ABEMAの解説はあの本田圭佑だ。

「日本戦のためABEMAだけでなく地上波はNHKが中継します。ABEMAは試合を通しての解説は“初めて”の本田さんという非常に強力なカードを切りました。

 ABEMAの不安要素は、地上波視聴組と食い合うとはいえ、アルゼンチン・サウジアラビア戦以上の視聴者を集めることが確実ななか、快適な視聴環境を提供できるか、になるでしょう。もし日本代表の初戦で“見れない”“止まる”という声が頻出してしまえば、次の試合までに急ピッチで配信の環境を整備する必要が出てくるでしょう」(前出・サッカーライター)

“(サーバーダウン等に)絶対に負けられない戦い”にABEMAは勝利できるか――。それ以上にまず日本の勝利を願いたい。

 
ABEMA放送への不満の声もあった(Twitterより)

 

ABEMA放送への不満の声もあった(Twitterより)

 

ABEMA放送への不満の声もあった(Twitterより)

 

いよいよ日本代表戦が始まる(JFA公式Twitterより)