東京卍リベンジャーズ(東京卍リベンジャーズ【公式】Twitterより)

《東リベ、ガチ考察してた人達かわいそう》

《最終回見てから熱がすんごい勢いで冷めてる》

 物語の完結から1週間が経ってなお、SNSで多くの意見が飛び交っている人気漫画『東京卍リベンジャーズ』。過去と現在を往来する“タイムリープ”の能力が登場する同作中には、張り巡らされた“伏線”や“謎”が多い。連載終了を迎えた11月16日から約1か月前の10月19日に「残り5話で終幕」ということが発表された際には、

《終われるのかってくらい伏線ありまくりなんだが》

《どうやって伏線回収して終わらせるつもりなんだろう…》

 と、残された謎があまりにも多すぎることへ不安の声が上がっていた。

回収されなかった伏線に読者は置いてけぼり

 それでも、予定通りに最終回を迎えた『東リベ』。果たして、読者が抱えていた疑問は解消されたのか。ここでは、ネット上で特に話題となっている伏線や謎をピックアップして検証していく。

『東リベ』の主人公は、しがない26歳のフリーター・花垣武道(タケミチ)。彼はある日、中学生時代に付き合っていた恋人・橘日向(ヒナ)と、その弟・直人(ナオト)が犯罪組織の『東京卍會』(東卍)の抗争に巻き込まれて死亡したというニュースを目にする。その後、物思いにふけっていると、駅のホームで何者かによって線路に突き落とされ、電車に撥ねられて死亡……したかと思いきや、目を覚ますと、そこはちょうど12年前。つまり中学生時代に戻っていた――というところから物語は始まる。

 その後、“能力”に気づいたことから、ヒナたちを救うために、過去と現在を往来しつつ“未来を変える”ことに尽力するタケミチ。だが第1話に、連載終了後も残る謎が登場していた。「誰がタケミチを突き落としたのか」だ。物語の根幹をなす事件だけに、犯人は作中ではっきりと明かされる、と思われていた。

 第8話では、タケミチの親友の千堂敦(アッくん)が、「線路にタケミチを落としたのは自分だ」と、東卍の主犯から脅されて、犯行に及んだことを自白する場面がある。これはタケミチがタイムリープで過去を変えたことにより、自分やアッくんらの仲間が“東卍入り”したことで起きた話。第1話の時点での現代では、アッくんは東卍に深く関わっていないはずなのだ。

 タイムリープ前、タケミチを突き落とした犯人は誰なのか? SNS上では「アッくんは過去改変前の現代では末端のチンピラになっていて、どのみち主犯の指示でタケミチを殺すことになっていた」という説が囁かれている。確かにそれなら矛盾はないが、作中では明確な説明がないまま完結を迎えた。

 アッくんは、もともと親友を殺す運命だったのか……真相は藪の中だ。

タイムリープの能力は不思議のままに

 一方、10月19日の「残り5話」発表の時点では、タケミチの発言にも疑問の声が上がっていた。

 タケミチに発現したタイムリープの能力は「現代から12年前のちょうど同じ日に戻る」というもの。はじめはタケミチ自身の死亡をきっかけに能力が発動し、ナオトを救うことに成功。その後は“姉を救うため、過去を変えたい”と強く願うナオトとの握手を、発動のためのスイッチのような“トリガー”として2つの時代を往来していた。

 しかし、その性質上、12年前より過去に死亡してしまった人物は、それ以上時間を遡ることが不可能なため、救うことはできない。ところが、タケミチは第152話で、過去の世界で死亡してしまった登場人物たちも救うことを宣言。「タイムリープ自体ありえない事だし、不可能はない」と言い切ってみせた。

 多くの読者がこの言葉に希望を見出す中、物語の終盤に奇跡が起きる。過去の世界で、東卍のトップに立つ“無敵のマイキー”を深い闇から救うべく彼との最終決戦に挑んだタケミチ。戦いの中、マイキーに日本刀で刺され、そのまま命を落とすかに見えたが、死の直前、なんとそこからさらに12年前へのタイムリープに成功。目を覚ますと、マイキーと2人で小学生時代に戻っていた。

 その後の結果として、タケミチとマイキーは数々の因縁によって歯車が狂ってしまった登場人物たちの人生をすべて救いながら生きていくことを叶える。最終回ではみんなが笑顔でタケミチとヒナの結婚式に参列する、というこのうえないハッピーエンドを迎えた。

 不可能に見えたタケミチの「全員救う宣言」は、伏線として見事に回収されたのだった。

 しかしながら、この仕掛けには疑問も残る。小学生時代にまで遡るタイムリープの“仕組み”が説明されていないどころか、タケミチとマイキー自身も「何が起こったのかわからないけど、とりあえずよかった」というような状態で終幕に向かってしまう点だ。

 先ほども触れたが、タケミチがマイキーとの最終決戦に向かったのは、マイキーを彼自身が抱える“黒い衝動”という破壊衝動のような闇から救うためだった。

 終盤で、そもそもタケミチのタイムリープ能力は、マイキーの兄・真一郎から譲り受けたものだということが明かされる。真一郎はもともと、とある事故によって植物状態に陥ってしまったマイキーを救うため、タイムリープ能力を手に入れるべく、当時能力を保持していたホームレスを殺害する。その後、見事マイキーを救うことに成功した真一郎だったが、実はホームレス殺害の際に“呪い”を受けていた。能力によって救われたマイキーにこの呪いが移り、それが“黒い衝動”という周囲にも影響を及ぼす“業”となって彼の中に存在することになったのだ。

 すべてを壊してしまう“黒い衝動”から仲間を守るため、1人タケミチたちのもとを離れていったマイキー。しかし、そんなマイキーを救うため戻ってきたタケミチ。日本刀で刺されながらもマイキーに歩み寄り、マイキーもその姿に涙を流す。前述の“奇跡のタイムリープ”が起きたのは、2人が手を繋ぎマイキーの涙がその手に落ちた瞬間だった。

 なんとも美しい展開なのだが、なぜそのような“奇跡”が起こったのか、文字どおり“奇跡”としか表現できない流れのまま完結してしまった。

 能力が人の手を渡ってきたということは明かされたが、その起源は解明されず。ほかにも、タケミチは終盤で“未来視”という少し先の未来が見える能力も手にしており、こちらの発現経緯も不明なまま。不思議な能力は、不思議のままに……。

 そして、『東リベ』を考察する上で欠かせないのが、作中最大の宿敵ともいえる稀咲鉄太(きさきてった)の存在。

稀咲鉄太の残した言葉が思わせぶりすぎる?

 タケミチが初めにタイムリープする理由はヒナを救うためだったが、何を隠そう、この稀咲こそがヒナを殺し続けていた元凶。その正体は、小学生時代にヒナと同じ塾に通っていた幼なじみ。稀咲はヒナに一方的な好意を抱いていた。

 ある日、公園で猫をいじめる中学生たちをヒナが注意。塾から一緒に帰っていた稀咲は物陰に隠れて、今にもヒナが襲われてしまいそうなとき、“ヒーロー”として駆けつけたのがタケミチだった。結局ボコボコにされてしまうタケミチ。そこに真一郎が登場。このとき不良を追い払うとともに、タケミチの勇姿を見て、タイムリープの能力をこっそり授けていた。

 この件で、ヒナはタケミチに好意を寄せることに。稀咲もタケミチに尊敬の念を抱いたが、ヒナの思いを知って、“タケミチを超えてヒナを手に入れる”ことに執着するようになる。そして、中学生時代にタケミチの後を追って不良になり、裏社会でのし上がっていくが、当然ヒナはそんな稀咲には振り向かず、ついには殺害――という悲劇が、タケミチが稀咲の真意に気づくまで何度も繰り返されていた。

 その連鎖に終止符が打たれたのは、過去世界で稀咲が死亡してからのこと。タケミチは、何度過去を変えてもヒナが助からないことを受け、「稀咲もタイムリーパーなのでは」という仮説に辿り着く。その後、タケミチに追い込まれた稀咲は、道路上でトラックに撥ねられて死亡することになったが、このとき彼が残した言葉が謎として残されている。

「オマエ…まだ」

「オレがタイムリーパーだと思ってんのか?」

「オレは」

 そう言い残して稀咲は死亡。口ぶりから、稀咲はタイムリーパーではなかったことが窺えるが、その後の「オレは」に続く言葉は最後まで明かされなかった。

 その後の物語で稀咲に関する描写は少なく、さらにタケミチも、やり直しの効かない一度の人生で不良世界の頂点に立っていた稀咲に対するリスペクトを漏らすシーンもあるため、単にタイムリーパーではないことを伝えるだけだったという見方もできるが、それにしては思わせぶりなセリフ。稀咲は何を伝えようとしたのか……。

 数々の謎を残したまま終わった『東リベ』の最終回を受け、SNSには冒頭のほかにも

《考察してきた人々が救われねーわ》

《うすうす伏線回収されなさそうとは思ってたけど、なんか一生懸命辻褄合わせて考察してたのにな…》

 という厳しい意見が多く寄せられている。その一方で、

《考察の隙間の残しつつ最高のハッピーエンドでした》

《全然わたしの考察と違う…めちゃ面白いな》

 と物語終盤の怒涛の展開を支持する声もある。

 賛否がわかれたとしても、多くの反響が寄せられているのは人気作の証拠。残された謎を解き明かし、見事な伏線回収を見せてくれる“リベンジ”に期待⁉︎