「授業がうまくて、男女問わず生徒から憧れの目で見られる教師。授業の進め方などを教える本を何冊も出しており、その教育論に感化される後輩教師もいたほどだから事件には心底驚いている」(学校関係者)
その教師とは、千葉県内の進学校として知られる私立市原中央高校の数学教諭・栗田正行容疑者(46)。県内在住の10代少女に現金を渡してわいせつな行為をしたとして、県警茂原署が11月16日、児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童買春)の疑いで逮捕した。
同署によると「間違いありません」と容疑を認めている。
SNSで出会った10代少女と車の中で…
犯行は6月29日午後11時35分ごろから翌30日午前0時5分ごろにかけて。
「数日前にSNSで10代少女と知り合い、会うのは初めてだった。目的が目的だけに待ち合わせたのは犯行の少し前くらいで、容疑者が車を運転して人けのない駐車場に停め、車中で性交類似行為におよんだ」(捜査関係者)
7月4日に被害関係者から県警に相談があり、捜査に着手。
「SNSのやり取りや防犯カメラ映像を確認するなど所要の捜査を経て逮捕に至った」(同関係者)
同校は難関国立・私立大への進学率が高く、地域では「このへんで頭のいい子が通う高校で礼儀正しい生徒が多い」(地元の自営業男性)などと評判は高い。校舎には「真心教育」「英才教育」の文字が踊り、1日7時間・週35時間にのぼる豊富な授業量で学力向上をバックアップすると謳う。
数学を教える栗田容疑者は異色の経歴の持ち主。日本大学理工学部を卒業後、県内の女子高で教師人生を歩み始めたものの「理想と現実のギャップに耐えられず」(著書の記述より)すぐ挫折。調理師になるための専門学校に入り直してレストランに勤務したが、これも挫折。塾講師に転身して再び指導者となり、高校教師に返り咲くというジグザグ半生を歩んできた。
同校では2学年のクラスを担任し、教科部長としても指導力を発揮してきたという。
「勤務態度はまじめで遅刻や無断欠勤などはありません。生徒の面倒見もよく期待の高かった教師です」(同校の校長補佐)
著作は確認できただけで20冊以上ある。『仕事のできる先生だけがやっているモノと時間の整理術』(明治図書出版)、『高校教師の最高KEYフレーズ50 生徒の心の扉を開く!』(東洋館出版社)など現役教師向けの指導書ばかり。講演活動もこなし、名前をもじって自ら「マロン先生」を名乗り、ブログなどでも情報発信してきた。
いわば“先生の先生”だったわけだが、生徒はどう評価していたのか。
「授業はわかりやすく、親身になって相談にも乗ってくれました。教員志望なのでどうしたらいい先生になれるか尋ねると、“人の顔を覚えること。そして相手の立場になって物事を考えることだ”とアドバイスしてくれました」(同校の男子生徒)
女子生徒を性的な目でみるようなことはなかったのだろうか。
「私の知る限り、そんな様子はなく、悪い評判や噂も聞いたことがありません。調理などをするフードカルチャークラブの顧問を務めていて、“元料理人”として腕を奮う料理はかなりおいしいらしいですよ」(同校の女子生徒)
生徒はだれも「マロン先生」とは呼ばず、「普通に栗田先生と呼んでいました」(別の男子生徒)という。
夫婦仲も良い2児のパパがなぜ?
私生活では男の子2児のパパ。著作の記述などでは夫婦仲のよさが伺える。
公私とも順調そうな教師がどうして道を踏み外したのか。同校は緊急保護者会を開いて事情と対応策を説明し、保護者からは「しっかりやってほしい」などと要望を受けたという。
「まだ本人と面会できておらず、事件報道ベースの情報しか得ていないんです。捜査には全面的に協力し、事件の詳細を把握した上で厳正に対処します」(前出の校長補佐)
著者『9割の先生が知らない! すごい板書術』(学陽書房)では、あとがきで《これまで授業でかかわってきた、すべての子どもたちに》と宛ててこう綴っている。
《いっしょに学び続けてくれた子どもたちがいたからこそ、今の私があります。これまで学んだ多くのことを、これからもさまざまな方々に伝えていくことで、恩返しをしていきたいと考えています》
恩返しどころではない裏切りとなった。