《中央線サイレント遅延 7分 接続ズレて乗り換え出来ない》
《東海道線が10分もサイレント遅延している》
《東西線くん、、、5分以上の遅延は言ってくれ、、サイレント遅延やめて》
《大阪メトロさん、御堂筋サイレント遅延されたら、有給消化されるんだよ。迷惑なんだよ。遅延証明お願いだから、出して?》
《JRのサイレント遅延なんなん??????どこが平常運転なん??????》
《ホンマに環状線サイレント遅延やめてほしい ちゃんと遅延した時間表示して詫びたまえ テスト逃しかけてんねんこちとら》
《また京阪 サイレント遅延 謝れや》
《恒例のサイレント遅延やめろ、こんくらいええか思てるやろ近鉄》
『サイレント遅延』――今クールいちばん話題のドラマ『silent』(フジテレビ系)が、プロ野球日本シリーズの影響で放送開始時間が遅延したこと、そしてそれに怒っている人たち……ではない。最近Twitterによく投稿されているこの言葉……。
Twitterで散見されるサイレント遅延
「共通の“定義”は定かではないですが、電車が遅延した際に、そのアナウンスやお詫びがないが遅れている、遅延情報は出ていないけど電車が遅れている、という状況を指した言葉のようですね」
そう話すのは、元東京メトロ職員で鉄道ジャーナリストの枝久保達也さん。
遅延の旨が、
●駅構内などでアナウンスがされず
●案内表示(ホームにある運行時刻・行き先が示された電光掲示板)にも“遅れ○分”などと表示されず
●鉄道会社ホームページにも情報はなく“通常運転”となっている
●乗り換えアプリなどでも表示されない
といった、遅延が伝えられない・明らかにされてない、しかし明らかに遅延しているという電車の遅延が“サイレント遅延”となる。
Twitterで“サイレント遅延”と検索すると、非常に皆、憤っている。サイレント遅延となる“原因”は何だろうか。
サイレント遅延の原因
「まず整理すると、基本的に鉄道事業者が遅延の情報を表に出すのは、概ね“15分以上”の遅延です。JRは“30分以上”としていますが、公式にアナウンスする遅延の基準が15分程度から、ということです」(枝久保さん)
鉄道会社各社のホームページに掲載されている遅延情報の発信の“基準”は以下となる。冒頭で憤られた鉄道会社を中心に引用する。
《列車の運行に15分以上の遅れが発生、または見込まれる場合の情報をお知らせしています。》(東京メトロ)
《概ね10分以上の列車の運転見合わせが発生した場合、または見込まれる場合の情報を、路線別でお知らせします。》(大阪メトロ)
《4時~翌2時の間に、JR東日本管内で30分以上の遅れが発生または見込まれる場合、「遅延」とご案内しています。》(JR)
《おおむね30分以上の遅れや運転見合わせが発生した場合、または見込まれる場合に、情報を表示しお知らせいたします。》(京阪電車)
《30分以上の遅れが発生した場合、列車運行情報をお知らせします。》(近鉄列車)
「ただ最近ですと、15分以上遅れないと一切何もアナウンスしないかというとそうではなくて、数分の遅れでも“電車の到着が遅れまして申し訳ありません”というお詫びであったり、“今何分遅れております”といったアナウンスはほとんどの場合行われています。ただ、それは義務付けられているわけではないですね」(枝久保さん、以下同)
また“基準”とは違う、“現場判断”もある。
「現場レベルで判断して、駅員や車掌が個別に状況説明やお詫びをすることも当然あります。人によっては“2分遅れで運行しています”と言う人もいます。一方でそこまでしっかりアナウンスをしない車掌も中にはいるでしょうから、そういうところで気になっている人がいるのかな、という印象ですね。ただ利用者からすればどこからが正式なアナウンスで、どこからが現場判断のアナウンスかわからないという面はありますよね」
また、このような遅延に憤るのは、少なからずコロナも影響もあるのかもしれない。「日本の電車は世界一、時間が正確」などと昔から言われてきたことだが……。
鉄道会社からしたら時間の約束はない
「ここ2年、コロナの影響により電車も非常に空いていて、あまり遅延が起きていなかったということも大きいと思います。しかし、朝や夕方から夜にかけての混み合い乗り降りにも時間がかかるラッシュ時などはやはりどうしても電車は時間通りに走らないのが実情です。しかし、その感覚が電車や駅が空いていたこの2年で薄れた人も少なくないのかもしれません。そのため、遅延に敏感になっている人もいるでしょう」
最近は各鉄道会社が提供するアプリによってリアルタイムで電車がどこを走っているか、何分遅れているか等の情報をピンポイントで確認できるようになった。
「ただ、すべての遅延が表示されるわけではなく、だいたい5分以上の遅れしか表示されません。5分以下の遅延は“見えない”。調べてみると“サイレント遅延”と呼ばれているのは5分前後の遅れを指していることが多いようです。ここまでリアルタイムで遅延がわかるようになったからこそ、少々の遅延、細かい遅延も気になってしまうという面もあるかもしれません。
昔は30分や1時間といった遅延でないと情報は出ませんでした。15年ほど前から15分以上の遅延は発信しようというのが一般的な考えになりました。数年ほど前からアプリが広まって5分程度の遅延が発信されるようになり、じゃあそれ以下の遅延はどうするかというとまだ見えない。ただ、1分単位で遅延情報を出しても、そこまで乗降客に実害はないと鉄道事業者は思っているでしょう」
サイレント遅延で“被害”に遭ったという人の多くは、「乗り換えができなかった」と言っている。
「数分の遅れで乗り換えができなかったというのは、そもそもで乗り換えのプランとしてちょっとキツキツ過ぎるんではないかと正直思いますね(苦笑)。利用者からすれば約束してくれている時刻表に沿って動いてくれという話ではありますが……。ただ、鉄道会社からしたら、“時間の約束”はありません。あくまでA地点からB地点まで確実に輸送しますという対価で運賃を取っており、それを“何分で”であったり、“遅れずに”という約束はない。新幹線の特急券も2時間以上遅れた場合に払い戻されますが、逆に言えば2時間までの遅れなら、料金はそのままなわけです」
運行情報や乗り換え案内など、列車を取り巻く環境はひと昔前に比べたら格段に便利になった。ネットやアプリを見れば、“どの電車に乗ればいいのか”、“いつ乗れるのか”、そして“遅れているのか”が瞬時にわかる。
「かつては大幅な遅れでないと発表されませんでしたが、現代では公式のいろいろな媒体で情報提供がされています。しかし、それによって“情報はあって当然”という意識のなかで、5分程度の遅れは“見えない”。だからこそそこに不満が生まれているのかもしれませんね」
余裕を持って家を出ましょう。と言ってもなかなか人間それができないもので……。