日本テレビ系列の出演者

 軽快なテーマ曲から始まる、おなじみのテレビ料理番組『キユーピー3分クッキング』(日本テレビ系列・月~土曜・午前11時45分~、CBC系列・月~金曜・午前11時20分~・土曜・午前11時30分~)。

 CBCテレビ(東海地区)で1962年12月3日から番組が始まり、日本テレビでは翌'63年1月21日からスタートした長寿番組で、人間でいえば還暦である60周年を迎えることに。

1962年の放送開始初期のようす。左は初代講師の宮本三郎さん(CBC)

 日本テレビの番組プロデューサー・山本めぐさんは次のように話す。

「視聴者の皆さまの応援のおかげで、1万8000回を超える放送を重ねてこられたことに感謝しております。60周年を記念して、来年1月21日からは『未来に伝えたい思い出レシピ』を5人のレギュラーの先生方がご紹介します。それぞれの先生方の思いがこもった絶品レシピですので、ぜひご家庭でお楽しみいただければと思っております」(山本さん)

番組の歴史は食文化の歴史

 番組の開始時はテレビのネットワークが未整備で、現在の2系列のほか、北海道、宮城、福岡の5局が順次制作を始めた。当時はまだ全国の食品流通網が整っておらず、地域ごとに食文化が異なっていたため、各エリアで番組を制作する必要もあったという。その後は2系列に集約され、現在は日本テレビ系列(18局)、CBC系列(13局)がそれぞれ制作して全国に放送されている。

1980年、三郎さんの息子・宮本和秀さんが講師に。現在も講師を続けている(CBC)

 オープニングシーンとエンディングは共通だが、メニューなど内容は違う2種類の番組が毎日放送されていることは、意外と知らない人も多いのでは?

 キユーピーの広報を担当している加藤幸江さんに、番組の成り立ちを伺った。

「“天気予報のようにヒントをお伝えし、毎日の献立づくりに役立ちたい”“食文化に貢献したい”という思いから、番組の制作が始まりました。簡単に用意できる食材や調味料しか使わず、初心者の方にもわかりやすい工程を心がけています。タイトルの由来は、放送開始時は5分間番組で正味3分だったことからです。現在は10分間(正味約7分)ですが、当初の番組名が継承されています」(加藤さん、以下同)

 テレビが生放送だった時代には、驚くようなハプニングも。

「食材のウナギが逃げ出し、それを先生が追いかけて誰もテレビに映っていないまま放送されたこともありました」

 番組で紹介される料理の内容を振り返ると、日本の食文化の変遷がうかがえる。

1983年8月1日放送(日テレ系)「チンゲンサイのかにあんかけ」

「'60年代は洋食が普及していき、'70年代からは健康志向が高まります。'80年代になるとイタリア料理やエスニック料理が登場し、働く女性が増えると簡単な料理レシピが望まれるなど、番組の歴史は食文化の歴史でもあります」

 そして『キユーピー3分クッキング』といえば、だれもが思い浮かべるのがオープニングのテーマ曲。

「『おもちゃの兵隊のマーチ』という曲で、番組開始当初、日本テレビの女性スタッフが、交際中の男性に『どんな曲がいい?』と相談してこの曲が候補に挙がったのがきっかけだったといわれています。その後、2人はゴールインされたそうです。2014年2月24日からは親子で楽しんでもらいたいと考え、キユーピーとヤサイな仲間たちがダンスをしているオープニング映像になりました」

料理を作る人=主婦ではなくなった

 番組はキユーピーの一社提供だが、メニューの選定は局に任せているという。

「こちらからキユーピーの商品を使ってくださいと言うことはありません。野菜の日(8月31日)、マヨネーズの日(3月1日)、ジャムの日(4月20日)など記念日に合わせた食材の使用をリクエストしているくらいです」

 両局とも半年ほど前にレシピを決定し、料理のレギュラー講師は5人。1週間を1人が担当し、収録は1日で1週間分をまとめ撮りしているそう。月曜は手軽なもの、週末は凝った料理をラインアップするのも共通だ。

 一方、時代を反映して番組内容も少しずつ変化を見せている。

「今年の10月からは、世帯平均人数が減少していることや、フードロスをなくす観点もあって、今まで4人分だった材料を2人分に変更しました。また60周年を機に、12月7日放送から両系列とも、毎週水曜を『プラスエコ』の日としてエコレシピを紹介してまいります。その他の曜日でもエコなポイントがあれば紹介していきます。旬の食材を食べる、食材を無駄にしない、エネルギーの使い方など、手軽にできるエコに取り組むきっかけになればと考えています」

葉っぱをモチーフにキユーピー人形がこちらをのぞく「プラスエコ」のロゴマーク

 番組が始まった当初の料理を作る人=主婦というイメージは時代とともに変わり、視聴者のターゲットも変わってきた。

「料理を作るのは主婦だけでなく、夫婦で家事を分担されている方も増えています。以前は主婦向けの番組を意識しておりましたが、現在は性別にとらわれず、講師にも男性を起用していただいています。男性アナウンサーがアシスタントに入ることもあり、講師もアシスタントも男性なのを見て、『時代を感じます』といったご意見も寄せられています。講師の方も手軽な料理が得意な方、和食が得意な方などさまざまで、初心者から料理が得意な方まで楽しんでいただける番組づくりを目指しています」

 CBCのプロデューサー・大谷佐代さんは、60周年を迎えることへの思いを次のように話す。

「番組制作に携わったすべての方々、そして視聴者の皆さまへの感謝のひと言に尽きます。長寿番組として大きな節目を迎え、今は100周年を目指して進化するときだと感じています。先生方による旬の食材の解説や料理の基本など、日本の食文化の継承も大切な要素として、発見のある番組にしたいと考えています。『簡単・便利で美味しい家庭料理』、台所の環境は変わってもお伝えしたいことは変わりません。

 見れば作ってみたくなる献立の提案、やがてそれが家庭の味へと定着していく。3分クッキングの献立が、ご家庭の『わが家の味』に仲間入りさせていただけるよう、信頼できる番組であり続けたいと思っています」

CBCテレビ系列の出演者

 すでに人の一生分のレシピを紹介しているという同番組。時代とともに進化しながら、これからも末永く番組を続けてほしい。

番組こぼれ話(1)

 日テレ系列の番組では、男性アナウンサーが講師のアシスタントとして加わることがある。あの徳光和夫さんも新人時代、しかも番組初期に短期間アシスタントを務めたことも。

番組こぼれ話(2)

 キユーピーと野菜が踊るダンスのオープニング映像は有名ダンサーが振り付け。「かわいい」と評判で、子どもたちにも大人気。映像を見ながら一緒に踊る子どもが続出し、踊っている様子をSNSにあげている人もいる。

番組こぼれ話(3)

 日テレ系列では土曜日企画として毎週土曜日はレギュラー以外の講師が担当。何度も作りたいお菓子、フライパン1つで作る初心者お助けレシピ、夏の親子クッキングなど多彩なラインアップ。

(取材・文/紀和静)