「目の前をあっという間に滑っていくスピード感や迫力がすごかったです」
世界一の津軽三味線奏者・中村滉己
プロフィギュアスケーター、羽生結弦(27)の初のソロアイスショー『プロローグ』にゲスト出演し、津軽三味線の音色とともに注目を集める中村滉己(19)。
羽生が「カッコいい音色」と称賛した中村の実力は折り紙つきだ。
名古屋の民謡一家に生まれ2歳のころからおもちゃの三味線で遊ぶようになり、以降祖父に手ほどきを受け研鑽。
14歳のときに史上最年少で津軽三味線日本一に輝き今年、世界大会に初出場し優勝。伝統文化の若き担い手として期待されている。
これまで競技会や公演など数々のステージには立っているが、アイスショーでの演奏は初めて経験した。
「異業種のファン7900人の前で演奏するのは新鮮でした。紅木と皮でできている三味線は温度差に敏感な楽器です。スケートリンクと楽屋での管理の仕方に違いもあって勉強になる部分もありました」
ショーでは『CHANGE』を生演奏した。
「以前の動画を見たりしましたが当日は羽生さんの動きを見ながらジャンプやスピンのタイミングなどに合わせて音に強弱をつけたりするようにしていました」
初対面の羽生の印象は?
「世界的名選手というだけでなくて、その人柄が多くのファンをひきつけ、多くの人に愛されていると感じました。人への気配り、周囲のスタッフに対しての感謝や敬意がいろんな場面で伝わってきました。
僕もやさしく接していただき人間性の素晴らしさのお手本のような方でした」
出演をきっかけにインスタグラムのフォロワーが急増し、来年1月のソロコンサートが即完売するなど反響は大きかった。
「後輩は“三味線界に夢を持たせてくれてありがとうございます”と。“こういう場面を通して津軽三味線が世に広まっていくんですね”というツイートや、ショーの翌日の演奏会では普段の何十倍もの反応があり、いろんな方から声をかけてもらいました」
古着系男子が三味線を弾いているギャップを
今年4月に慶應大学に入学。伝統楽器を引き継ぐ逸材だがアッシュヘアにピアス、古着スタイルという見た目とのギャップは目を引く。
「黒紋付に袴姿で演奏する三味線も素晴らしいけど、古着系男子が三味線を弾いているギャップを含めて、10代、20代にも入りやすく気軽に接してもらえる楽器になってほしいという思いがあります」
ロックやポップスなど現代の音楽が好きになっても三味線の軸はブレなかった。
「心を奪われ興味のある音楽があっても必ず三味線でも演奏できると結びつけて、三味線の存在は絶対忘れませんでした。三味線の魅力は奏でる音の大きさと繊細さのギャップです」
その魅力は自身のSNSでも発信している。
「海外からの反応も多いです。今回のアイスショーは、これまでの舞台とは比べものにならないくらい大きな経験でした。これに満足せず世界で活躍できる三味線奏者になるための夢に向かって有意義な第一歩になったと思っています」
“世界のコウキ・ナカムラ”にGO!
素顔を直撃! Q&A
Q.1 好きな食べ物
ステーキ。300~400g食べます。
Q.2 嫌いな食べ物
基本、ないけど強いてあげれば柚子。でも柚子こしょうは好きです。
Q.3 三味線以外で得意なこと
歌。カラオケで十八番は『ドライフラワー』
Q.4 苦手なこと
ストレスの発散。ストレスをため込みすぎたときは温泉とサウナで発散します。自転車の旅が好きで、ロードバイクで遠出するのも発散になります。
Q.5 好きな女性のタイプ
一緒にいて楽しくて、約束を守れる人。
Q.6 上京して驚いたこと
電車が多い。名古屋駅は路線が6本だけど東京駅は19本もある。覚えるだけで頭がパンクしそう(笑)。
Q.7 ハマっていること
古着。下北沢に通って買っています。
Q.8 モテた思い出
高校1年生のときにほかのクラスの女子が僕目当てに集まってきたことが1回だけあります。
Q.9 津軽三味線奏者以外でなりたいもの
プロデューサー。イメージは米津玄師さん。自分がやるだけでなく楽曲提供できる人。
Q.10 会いたい人
YOSHIKIさん。はじめしゃちょーさん。山縣亮太さん。YOSHIKIさんはミュージシャン、アーティストとして尊敬している方。
YouTuberのはじめしゃちょーさんは無名からトップに上り詰めたことに興味があります。100m日本記録保持者の山縣さんは自身や競技に対する考え方やストイックさを尊敬しています。
(撮影/山田智絵 ヘアメイク/山崎初生)