FIFAワールドカップカタール2022にて27日、コスタリカ代表に惜しくも敗れたグループリーグE組の日本代表。盛り上がりをみせるなか、ベテランDF長友佑都(36、FC東京)の発言に日本サポーターがピリついているようだ。
事の発端は、コスタリカ戦から一夜明けた練習後の取材。長友選手は、
《空を見ながら、スペイン戦後に僕がめちゃめちゃどでかい声で『ブラボー!』と言ってる光景が浮かんだ。これは現実になるなと。今までそうやって降りてきたものはほぼ確実に現実になってきた。みんなで一丸となって、勝負を挑みたい》
《スペイン戦で絶対にいい結果を残して絶対突破するので、メディアの皆さんも3150倍の称賛でたたえてほしい》
とスペイン戦に向け、熱い思いを語った。
DF伊藤洋輝を庇い、称賛も
この発言に対し、“熱くなっている”日本サポーターからは、
《年長でチームを引き締める立場のはずが、誰よりもハイテンションではしゃぎまくってて何なんだよ》
《簡単に絶対って言葉使うやつは信用無くすよ。逆に無理だったとき叩かれて、サッカー人気に影響与えることをわかってない》
《言葉が軽い》
《突破出来なかったらどうしてくれるって話は絶対しないんだよな》
と、長友選手のテンションについていけない様子だ。
そんな長友選手だが、後輩が批判された際に自らが矢面に立つなど、人情にあふれた熱い男でもある。初戦で強豪ドイツ代表を撃破するという偉業を成し遂げた日本代表。期待が膨らんでいたなかでのコスタリカ戦敗戦に、日本サポーターからDF伊藤洋輝(23、シュツットガルト)ら若手に批判が殺到した。
心ないバッシングが若手選手たちへ浴びせられている状況に対し、
《上手くいかなかった選手が批判されている、というのは聞いています。もちろん批判されるのは当たり前ですけど、それは若手にではなく、若手が躍動する雰囲気を作れなかった僕のようなベテラン選手に対してというか、一番批判を受けるべきなのは僕だと思っています》
とコメント。自らバッシングの壁となり、若手選手を守る男気を見せていた。
これに対し、
《長友選手の若手を庇う気持ちは、この人の情熱的感情を感じます》
《メンタルやチームの雰囲気の管理というのは、スポーツで勝っていく中でとても重要なことなのだろうな。その中でベストなパフォーマンスを出すために、長友選手は色々考えていると思った》
《長友選手に批判は俺にって言われても長友選手を批判する要素が今のところないし、寧ろ皆の為に頑張ってくれてありがとうと言いたい》
と長友選手を賞賛する声も多く寄せられていた。
僕の隣にはいつも「批判」がいた
そんな長友選手だが、今回の日本代表選出において年齢的な衰えを指摘する容赦ない「長友不要論」にさらされた。しかし長友選手はあえて積極的に記事のコメント欄を見て、自分の財産にしようと闘志を燃やしたのだとか。結果、アジア最終予選のサウジアラビア戦で躍動。不要論を一蹴してみせた。
インテル時代は、いいプレーをすれば神様のように扱われ、敗戦に直結するプレーをすれば「HARAKIRI(腹切り)」と書かれるなど、メディアだけでなくファンからも賞賛と批判の双方がすさまじかったそう。
《負けた翌日は、ミラノの市内を歩くのが怖かった》
と、長友選手の著書『[メンタルモンスター]になる。』(幻冬舎)にて語っている。明るい姿を見せている長友選手も、批判や重圧に押しつぶされそうになった過去があるのかもしれない。
同書にて、
《僕の隣にはいつも「批判」がいた。もう、友達と言えるくらいの存在だ。僕を成長させてくれる「ガソリン」と言ったほうが近いか》
と批判に対し、ミスをしてしまう未熟な自分をより成長させるためのエネルギーだと語っている。また、
《つらくても、きつくて、苦境にあっても「ポジティブな姿勢を貫く」》
《ポジティブでいると、思わぬ力を、特にここぞという場面で発揮することができる。ポジティブパワーがその人にもたらしてくれるものは、みんなが想像しているよりはるかに大きい》
と数々の重圧との闘いを経て、「ネガティブをポジティブに変換する術」を身に付けたのだそう。時にはポジティブすぎて引かれることもあるのだとか。
「批判やミスの中に、成長のチャンスがある」という信念のもと、今回の発言に至ったのだろう。長友選手にとってワールドカップのメンバー入りは、生きるか死ぬかの決戦だと言う。その熱い思いが裏目に出てしまい、「空気が読めない」などと捉えられてしまうこともあるかもしれない。期待が大きかったぶん、今回の長友選手のポジティブな発言は仇となったのだろう。
まだまだ興奮冷めやらぬワールドカップ。まもなく始まるスペイン戦、果たして長友選手の予言通り勝利を勝ち取ることができるのか。キックオフまで、世界チームの動きも目が離せない。