またまた“出川のターン”なのかもしれない。
10月にゴールデンに進出した、有吉弘行の冠バラエティー『有吉クイズ』(テレビ朝日系)。最近では有吉自身が飲食ロケに繰り出し、無言でひたすらむさぼり食う様が「逆においしそう」と話題を集めている。
上島竜兵さんと並ぶリアクション芸
深夜枠時代から継続するコーナーも複数あるが、なかでも出川哲朗がカーナビに頼らず、道中に出会った人々に聞いた手がかりをもとに目的地にたどり着く「出川のドライブマイカー」が人気だ。
「いまや番組の看板コーナーといってもいい企画に成長しているのではないでしょうか」
と、あるテレビ関係者は言う。
「最近は車を使わないバージョンとして、街歩きロケ『出川の聞き込み散歩』がスタートしましたが、車を使っても使わなくても本質的な面白さは変わらず、出川さんが一般人と作り出す空気そのものの面白さが浮き彫りになっています」(同前)
出川といえば、ダチョウ倶楽部の上島竜兵さんと並ぶリアクション芸の面白さ、言い間違いや勘違いの天然ぶり、やりとりのチグハグさ、さらにカタコトすぎる英語での外国人とのコミュニケーションは“出川イングリッシュ”と呼ばれ、さまざまな場面で笑いを獲得してきている。
一般人とのやりとりの面白さを全面に楽しめるのが、電動バイクで旅をするテレ東の人気番組『充電させてもらえませんか?』だ。
「バイクの充電をさせてもらうために、必然的にその土地の方との交渉が生じるわけですが、出川さんと一般の方とのコミュニケーションの面白さをフルに生かした番組となりました」
と、前出のテレビ関係者は語る。
それにしても、出川といえば90年代から00年代にかけては「嫌いな男」「抱かれたくない男」の上位常連タレントだったはずが、気づけば好感度タレント、今のバラエティーに欠かせない愛される存在となった。
「第7世代」がすでに“ひとつ前のブーム”になってしまったように、移り変わりの早い世界で、なぜ出川は好感度を獲得し、なぜ次々と新しい「愛される場所」を見つけられるのだろうか。
出川哲朗の最大の武器
「出川さんの人間性、人としての魅力に尽きると思います」というのは、人気バラエティーを手掛ける放送作家。
「人との触れ合いの中でにじみ出る“いい人”な部分が大きな魅力ですよね。決して100%の善人ではないだろうけど正直者なんです。基本的にすごくポジティブで、言っちゃいけないことを素直に言っちゃって、それを自分でフォローしようとして墓穴を掘ることもありますが、でもそのフォローがポジティブでおもしろいんです。
小学生が見ても爆笑できるリアクションとコメント、そしてわかりやすく噛む。そうした子どもっぽさとおじいちゃん ぽさを兼ね備えたところが単純に面白さにつながっているんだと思います」
出川が“愛されキャラ化”する背景には、いじられる側の存在として、キャリアを重ね続けてきたことも大きいという。
「普段はキャリアを重ねることで、ある程度、常識的になるのですが、出川さんの場合は真面目に正直にやることで鈍感力が磨かれている気がします」(同前)
まさに、出川哲朗のままでい続けることが、彼の最大の武器のようだ。
〈取材・文/渋谷恭太郎〉