バスケットボール漫画『SLAM DUNK』の劇場版アニメ『THE FIRST SLAM DUNK』が今週末3日(土)より、いよいよ公開となる。
原作となる『スラムダンク』はバスケット漫画の魁であり金字塔。魅力的キャラたちの“友情”、初心者がチームに欠かせない存在となるという“努力”、弱小から強豪を下すという“勝利”、そして数々の名言……その魅力を上げればキリがないが、その分“原作ファン”が非常に多く、劇場版アニメを“不安視”する人も少なくなかった。
そんななか投じられた一石……。それはさらに原作を愛するファンらの心を逆なでさせた。
『COURT SIDE』。これは製作スタッフにインタビューした“製作日誌”的なサイトだ。サイトは『公式』が運営している。
「スラムダンクの映像化は今回が初めてではなく、最初にテレビアニメ、さらに3本の劇場版があります。それらの作品で起用されていた声優さんを一新したことで、まず最初の炎上。その後、映像を3DCG化したことで2度目の炎上。そして3度目となったのが製作スタッフたちのサイトによるものですね」(アニメ雑誌編集者)
『COURT SIDE』は、今回の劇場版スラムダンクのスタッフたちが、製作にあたっての苦労や作品の魅力を語る……というものだ。これに対しては、
《製作陣の苦労話とか公開前に熱く語られても冷めてくだけ》
《公開前にスタッフの裏話とか公開されてるらしいけどマジで順序意味不明そんなん特典映像にでもしとけ見る前から苦労話とかいらねー》
といった辛辣な声も一部ある。
「確かに公開前にこれだけ大変だったんです! と言われても知らんがなというのは理解できます。ただプロモーションの一貫ですからね(苦笑)」(前出・アニメ雑誌編集者、以下同)
苦労話よりもストーリーを知りたいファン
製作スタッフらのサイトに登場するのはプロデューサー・演出・キャラクターデザイン・美術・編集といったスタッフたち。作品のストーリーに関わるスタッフではなく、“映像”に関わる人たちが登場する。
「そもそも今回の劇場版は、原作の“どこ”を描くのか、そのストーリーは公開直前になっても明らかになっていません。その面から“苦労話なんか公開するより……”と、多少なりともストーリーを公開してほしいという声もあります。明らかになったからといって観に行く人が減るとは思えませんし」
サイトに登場するスタッフは、その技術を雄弁に語る。その一部を抜粋する(以下、『COURT SIDE』より引用)。
《(ゴールネットの揺れは)自動化しまして。設定をいくつか選べるようにして、アニメーターさんのほうでボタンを押せばシミュレーションが完成する(中略)。ただ、監督のこだわりのあるいくつかのカットについては、時間をかけて手作業で調整を重ねました》
《自動化できてるっていうのは確かにすごい》
《自動化は多分、今のところ世界唯一なんじゃない?》
《海外だったら作れちゃうのかなと思いますが(笑)》
《この作品としての見どころですが、これだけ細かいシワが入るシミュレーションは…メチャクチャ作るのが大変なんですね。で、コストもすごいかかるんです。国内でこれだけシミュレーションが入る作品は珍しいと思います。相当ハイレベルな技術が詰まっていると思います》
随分な“自画自賛”と“褒め合い”だ。しかし、彼らが誇るその“映像”にも、公開前から苦言が飛んでいる。
背景が「手抜き」「PS2レベル」
「特に指摘されているのが背景ですね。ジブリの宮崎駿先生が重要視しているように、作品において背景美術はその価値をわかりやすく示すものの1つ。今回の劇場版スラムダンクの試合中の背景は、現状公開されている予告編を見る限り、“動かない1枚絵”という、止まった絵。まったく臨場感のないものです。しかもその背景の観客というのが、全員が若干うつむき加減で、応援しているどころか試合を観ているようにも見えないもので……」
これについてはネットでも辛辣な声が。
《背景葬式やん》
《客席が手抜き》
《背景がぼんやりさせすぎててこれで臨場感ある絵になるのか》
《背景死んでる。PS2レベル いや迫力、、いや臨場感。。。》
《時間かけて作ってる映画なのに製作費ケチってるのか?》
しかし、これには理由があるといえばある。
「背景を動かしすぎる、または色合いを抑えないと、背景の前面にいるメインとなるキャラに目がいかないということはあります。そのため、背景はあまり動くものにしない、色を淡くするといった描き方をする。
しかし、予告を見た限りスラムダンクは“中途半端に描いている”から違和感を生んでいるのではないでしょうか。スポーツ系のアニメは観客を“点”のように描くか、もしくは割り切って“描かない”というのが一般的です。その方が観る人の目は自然とキャラに集中します。実際、前作までのスラムダンクのアニメ映画はそうしていますし」(アニメーター)。
そもそも『SLAM DUNK』をあまり知らない
ちなみに引用した“製作スタッフの声”は、別の部分でも炎上を生んでいる。以下の発言がその原因だ(以下、『COURT SIDE』より引用)。
《コミックで読んでいた時は“青春おバカな感じ”があったんですけど(笑)》
《そもそも『SLAM DUNK』をあまり知らなかった》
《最初は“『SLAM DUNK』、こんなんで少年の心、掴めるのかよ”って思ってたんですけど(笑)》
「これらの発言に対しては、“馬鹿にしている”、“スタッフなのに作品へのリスペクトがない”とだいぶ炎上しましたね……。技術系のスタッフが、作品に注ぎ込んだ技術を語ることは、どういう評価となろうが良いと思います。それに悪い評価を下す人もいますし、逆に“そんなにすごいなら観たい”という人もいるでしょう。
ただ、“こういうことをスラムダンクのサイトで言ったらマズいんじゃないか”という意識が、関わっている人の誰にもなかったのか……。そりゃこんなこと言ったらファンは怒るでしょという話でしかない。“作品への愛”とか、そういう話以前の問題だと思いますね」(前出・アニメ雑誌編集者)
公開前から前途多難な劇場版スラムダンク。主人公の桜木花道はデビュー戦からずっとミスや退場をくり返し、結果欠かせないメンバーになった。本作もきっと公開されれば、その評価は……。