《栗山監督に『来年のWBC出場しなさい』と言われたので出場します》
12月6日、自身のツイッターを更新した『サンディアゴ・パドレス』ダルビッシュ有投手が、2023年3月に開催される『ワールド・ベースボール・クラシック(以下、WBC)』への出場を明言した。
これでWBCに“出場する”メジャーリーガーは、11月にインスタグラムで意思表示した『ロサンゼルス・エンゼルス』大谷翔平選手に続いて2人目。期待がかかる3度目の優勝に向けて、『侍ジャパン』に着々と“最強メンバー”が集結しようとしている。
「ワールドカップ(以下、W杯)の影響もあるのは明らか」とは、連日の試合観戦で寝不足気味のスポーツ紙・野球担当記者。
「前評判を覆して、強豪国のドイツやスペインを下して決勝トーナメント進出を決めた『サムライブルー』。プロ野球はオフシーズンだけにW杯に釘付けの選手も多く、ダルビッシュも《サッカー日本代表凄い!》とツイートしていました。“今度は野球も”と触発された選手は多いでしょうね。
そして栗山英樹監督です。自身もまた森保一監督のように、日の丸を背負って日本中を感動させたいと今からワクワクしているはず。こうなると、もう止まりませんよ(笑)」
冒頭のツイートには、力強く握手を交わすダルビッシュと栗山監督の近影も添えられていた。『北海道日本ハムファーターズ』ではすれ違いでチームに加入、退団した2人だったが、OBとして日ハムの米国キャンプ訪問もしたことがあるダルビッシュだけに、交渉もスムーズに進んだわけだ。
“ドリームチーム”を作りたい
2021年12月の監督就任会見では、大谷選手の招集を記者から問われると「必要ですか? 翔平」とまさかの逆質問。会場が一瞬ピリッとした空気に包まれるも、「ファンが待っている」と返されると、柔和な笑顔を浮かべて「ファンが見たい、夢のようなチームを作りたい」と抱負を語っていた栗山監督。
長年にわたってプロ野球の現場を取材するスポーツライターは、「栗山さんは怒るかもしれませんが(苦笑)」と前置きしつつ、
「日ハムの監督を辞めたばかりの彼に白羽の矢が立った背景には、大谷への説得を期待するNPB(日本野球機構)の思惑もあったことは想像に容易い。“二刀流”を信じ続けて世界的スターへの育てた恩師からの誘いを無下にはできませんからね。
プロ志望ではなくメジャー挑戦を表明していた大谷を指名したときもそうでしたが、栗山さんはマスコミの使い方が非常にうまい。“ファンのため”“子どもたちのため”という大義名分のもとで夢や理想を熱っぽく語られたら、悩んでいる選手も背中を押されてその気になってきますよ。
有言実行とも言えますが、先に各メディアに“外堀を埋めて”もらうことで世論を動かし、既成事実を作り出してから本人と面会するという交渉術にも見えます。ダルビッシュに関しても、11月には札幌市内で開催されたイベントで、彼を含めた豪華投手リレー構想を興奮気味に語っていました」
鈴木誠也に公開ラブコール
栗山監督の“ドリームチーム”構想はなおも止まらない。ダルビッシュへの“説得”が終わると、アメリカ・サンディエゴで開催されたWBCメディアデーに出席。ここでも、WBC出場は微妙と見られていた『シカゴ・カブス』鈴木誠也選手を「日本(チーム)の中心」と評して、
「僕の中では、誠也が1試合でも2試合でも(チームに)いてくれるならばというのはすごくあります。(メンバー登録の締め切りまで)ギリギリまで待ちます。2月まで待つくらい」
全試合に帯同せずとも、貴重な選手枠を鈴木選手のために確保するという特例の“誠也ルール”構想をもぶち上げた模様。
「それだけ侍ジャパンに必要な選手である、と。プライドをくすぐられるでしょうし、ファンも主砲の合流に期待を膨らませてしまう。いや、既に“大谷やダルに続き、誠也も出場する”という流れになりつつある。
でも、彼が置かれている立場は、メジャー屈指の選手に数えられる2人とは違う。メジャー1年目は怪我の影響もあって、チームが期待した成績を残せなかった。彼自身が一番わかっていることで、来シーズンの開幕に向けてコンディションを万全にしておきたいはずです」(前出・ジャーナリスト、以下同)
「判断は本人に任せる」の意味
来季は20億円超えともされる鈴木選手の年俸を払うのはカブスだ。チームを指揮するデビッド・ロス監督は、WBCに出場するか否かの判断は「誠也本人に任せている」と話しているようだ。
「この進言を本人はどう解釈するのか。そしてエンゼルスGMは、大谷のWBC出場には理解を示しつつも、代表への合流時期について“これから話し合う”とまだ全てが決まったわけではありません。そして誠也やダルビッシュ、そして万一にも大谷までもが直前で辞退することになっても、彼らが矢面に立たされる謂れもありません。
チームを勝たせる仕事と合わせて、スポンサーウケするような“ドリームチーム”結成に尽力する、WBCを成功させる使命を背負っている栗山監督。とはいえ、選手にも夢と理想を背負わせるだけでなく、日ハム時代に毎日のように口にしていた“俺の責任”を貫いてほしいですね」
サッカー日本代表だけでなく、野球監督の仕事も大変そうだ。