《自撮りスタジオと勘違いしてないか?》
《写真目的で来る人なんているんだ。驚愕》
ある女性インスタグラマーの“撮影”に、SNS上で批判の声が寄せられている。
「アパレル通販の会社を経営するAさんは、商品を自ら着用して販売ページの“モデル”も務めているのですが、その写真がスタジオなどではなく、大手家具量販店の『IKEA』で撮影されていることが判明して炎上。Aさん以外にも同様の行為に及んでいる人がいるようで、実際に目撃したことがあるという人も多く、ネットを中心に厳しい意見が飛び交っています」(WEBメディアライター)
騒動を受け、Aさんは12月5日に自身のSNSを更新し、
《お客様、並びにIKEAの方々にご不快な思いと多大なご迷惑をおかけしましたことを、心からお詫び申し上げます》
と謝罪コメントを投稿。IKEAジャパン広報部の担当者は、『ENCOUNT』の取材に対し、
《規約として書面であるわけではありませんが、他のお客様のご迷惑になる行為はご遠慮いただいております。店舗スタッフが発見した際には、その場でお声がけさせていただくこともあります》
《撮影をご希望される場合は、一度事前にお問い合わせいただければ》
と回答しているが、ネット上では、商品を購入する目的で来ている人の邪魔になる“迷惑行為”として、今なお辛辣な声が寄せられている。
商品そのものにも転売疑惑がかかる
そんな中、Aさんに関してはこんな疑惑も。
「中国の通販サイトで“高見え”する服を大量に仕入れ、それをあたかも自社ブランドの製品かのように見せて販売しているという“転売疑惑”がかけられています。激安商品の多い中国の通販サイトは“中華サイト”とも言われ、低価格帯で商品が手に入ることから人気になっていますが、転売目的での利用には懐疑的な見方もされています」(同・WEBメディアライター)
Twitterでは、
《自社ブランド名に変えたらアウトじゃね?》
《理に適ってるというか法に触れてる》
と違法性を問う声の一方で、
《安く仕入れて高く売るは商売の基本》
《ずる賢さこそ正義。儲ければ官軍》
と、転売が事実だったとしても問題ないとするコメントも見られる。
Aさんは『IKEA』での撮影行為に関する謝罪コメントの発表後、
《弊社では信頼できる仕入先との取引をしております》
《弊社はオリジナル商品ではなくセレクトショップとなります。海外拠点での数回の検品後、日本でさらに検品、必ず国内発送をしております。お客さまには安心してご利用いただけますと幸いです》
《憶測でのコメントや利用されていない方からの悪質なレビュー、口コミ、など精査させていただき、今後然るべき対応を取らせていただきますのでご了承いただければと存じます》
という文章を投稿し、Twitterで寄せられた疑惑を否定しつつ商品の扱いについて説明をしている。
不退去罪、威力業務妨害罪も問われる
今回騒動となったAさんの撮影・販売手法は、法的な観点から見て問題ないのか。弁護士法人・響の古藤由佳弁護士に話を聞いた。
「量販店などの多くの人の出入りが想定されている店舗内で短時間撮影を行ったことが、即時に刑法上の業務妨害罪として罰せられる可能性は低いですが、撮影をやめて店から出るように何度も注意されているのに撮影を続けるような場合には不退去罪、態様によっては威力業務妨害罪が成立することも考えられます。この場合、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます」
転売行為については、違法性の有無を分ける詳細な決まりがある。
「仕入値よりもかなり高い価格で販売したとしても、商品の性質・状態を偽って販売しない限り違法ではありません。ちなみに、中古商品を輸入して転売を行う場合には、古物商許可の申請が必要で、無許可営業をした場合には、3年以下の懲役または100万円以下の罰金、もしくは懲役刑と罰金が併科されます。また、仕入れた商品の性質・状態を偽って表示して販売したような場合には、景品表示法などに違反することになります。不当表示を行うと、当該表示行為について差し止めが命じられたり、不当表示であったことを周知し、再発防止策を策定するよう命じられますが、これに従わない場合には2年以下の懲役、または300万円以下の罰金が科せられます」
詐欺罪が成立する可能性も
騒動となったAさんは自社サイトを《セレクトショップ》と説明しているが、仮に自社ブランドの製品として販売していた場合には、法に触れる危険性も。
「商標登録されているマークがプリントされたようなデザインを別のブランドの商品として使用した場合には、商標権違反になります。この場合にも10年以下の懲役または1000万円以下の罰金が科せられることになります。また、輸入したブランドが一定程度有名なブランドであれば、タグを付け替えて販売することが“品質等誤認惹起行為”に該当するとして、不正競争防止法に違反することになります。これに違反すると、輸入ブランドから、ブランドの信用を回復するための措置を講じるよう要求されたり、損害賠償請求されることもあります。そして、一般的に、どこのブランドの商品であるかは購入する人にとって重要であるため、刑法上、詐欺罪が成立する可能性があり、製造元のブランドの業務妨害行為として、偽計業務妨害罪が成立し、3年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられることも考えられます。もちろん、この場合にも民事上の損害賠償責任が生じます」
海外の通販サイトの普及によって、初心者でも運営が容易になっている“転売”ビジネス。しかし、その“グレーゾーン”に潜む線引きには、十分注意しなければならない。
弁護士法人・響。明治大学法科大学院卒業。東京弁護士会所属。FM NACK5『島田秀平と古藤由佳のこんな法律知っ手相』にレギュラー出演するほか、ニュース・情報番組『news イット!』(フジテレビ系)などメディア出演も多数。民事事件から刑事事件まで幅広く手掛ける。https://hibiki-law.or.jp/