令和キモキャラ芸人筆頭の左からクロちゃん、アンガールズ・田中、ノンスタイル・井上

『水曜日のダウンタウン』(TBS系)で11月9日からスタートした新企画『モンスターラブ』。お笑いトリオ安田大サーカスのクロちゃん(45)が大好きという女性を募集し、選ばれた9人の女性が出演。

クロちゃんの魅力はキモ行動と高い声

 クロちゃんが毎週、“脱落”する女性を選択し、最終的にカップル成立を目指す企画だ。ただし、9人の中にはクロちゃんのことを好きではないアイドル志望の女性が含まれている。この企画が放送されるごとにSNS上では、クロちゃんの“キモさ”が話題に

「お気に入りの女性がものを食べている口の中を見ようとしたり、口が臭い疑惑のクロちゃんの口臭を嗅がせて“臭くない”と言わせるなど、見どころは満載です(笑)。最終回に誰を選ぶのか、またどんな大どんでん返しが待っているのか、ネット上では考察で盛り上がっています」(テレビウォッチャー)

 クロちゃんがなぜウケるのか。芸能関係やお笑いに詳しいライターの成田全さんは、

「最初に安田大サーカスで出てきたとき、クロちゃんはネタが始まっても一切話さないコワモテキャラで、口を開くと声がかわいいというギャップのインパクトがすごかった。高い声は“かわいさ”の大きなファクターでしょうね。『水曜日のダウンタウン』では視聴者の期待を裏切るどころか、それを遥かに超えてくる行動や考え方、腹黒さも出してくるし、いくらだまされてもへこたれない。そんなところがウケる理由でしょう」

 成田さん自身、カメラがまわっていないところでクロちゃんを目の当たりにしたことがあるという。

「存在をキモがる子どもたちに向かって、あの声で“クロちゃんはバケモノじゃないの! 人間! ヒューマン!”と言っていて、誰に対しても丁寧な方なんだなと(笑)。あとは自己愛や自己肯定感がすごい高いんでしょうかね?」

 キモキャラといえば、クロちゃんの独壇場かというとそんなことはない。アンガールズの田中卓志(46)、もはや殿堂入りの出川哲朗(58)など、愛され“キモキャラ”があふれている。いつから芸能界でキモキャラが人気を博すようになったのだろうか。

「わからない芸が気持ち悪い」と評された時代の筆頭はタモリ

タモリ(77)

「“キモい”という言葉は'90年代の後半からよく使われるようになった言葉です。そういう意味で考えるといわゆるキモキャラは江頭2:50が最初ではないかと思います。“キモ”に“かわいい”がつく“キモかわ”も同じころから使われ始め、その流れに乗ったのがアンガールズです」(成田さん)

 とキモ芸人のルーツが'90年代からだと明かす。ただし、“気持ち悪い”枠は遥か昔からあった。その筆頭がタモリ(77)だ。

 タモリは'17年に『第68回日本放送協会放送文化賞』を受賞した際にデビューしたころの自分をこう評している。

《今でいうと江頭2:50と同じような扱いで何をするかわからないから、番組に呼ぶなという風潮だった》

何をするかわからない=気持ち悪い扱いという風潮はありました」と明かすのはバラエティー番組の元プロデューサー。

関根勤さんもラビット関根という芸名のころは何をするかわからず不気味という意味で“気持ち悪い”と言われていた時代があります。デビューしたころの関根さんの芸で“カマキリ男”というキャラクターがあったんです。萩本欽一さんはそれがお気に召さなかったようで関根さん本人に“おれはおまえが嫌い! おまえみたいな気持ち悪いやつとは仕事したくない”と2メートルも離れた距離から叫ばれたとか(笑)。

 関根さんはそれをショックというより正直な人だなと思い、なんとか懐に潜り込んでやろうと気持ちを奮い立たせ、6年後に『欽ちゃんのどこまでやるの!』に出演し、小堺一機さんとの『クロ子とグレ子』というキャラクターで人気となりました」

キモいを“愛され”に昇華させた出川哲朗

出川哲朗(58)

 今では国民的人気者のタモリと関根の2人。同じようにキモいを“愛され”に昇華させたといえば出川哲朗だろう。

「かつては“嫌いな芸人”、“抱かれたくない芸人”、“気持ち悪い芸人”ランキングの上位常連の出川さんでした。出てきた当初の出川さんは『ビートたけしのお笑いウルトラクイズ』(日本テレビ系)などに出演し、身体を張ったロケやドッキリ企画でのリアクションの面白さで引っ張りだこに。出川さんにならどんなひどいことをしてもいい、という流れすら感じられた。だけど'07年から始まった『世界の果てまでイッテQ!』でその流れが変わってきたんです。子どもたちから“一生懸命やる姿がカッコいい”などと憧れられる存在になった。キモキャラが一転して好感に変わったんです」(前出の元プロデューサー)

 アンガールズの田中卓志も同じだと前出の成田さん。

田中さんは話すときに口角に唾をためるといった視覚的に気持ち悪い部分と、客席にダイブするなど露悪的な部分がありますが、ご本人は広島大で建築を学んだインテリ。キモキャラが生まれたきっかけは、キモかわと言われていたころに、FUJIWARAの藤本敏史さんに“おまえ、キモいだけやん”と言われて凹んだこと。でもそれで終わるのはよくないと、ツッコミに反撃するために考えたキャラだそうです

愛されないキモキャラノンスタイル・井上裕介

井上裕介(ノンスタイル)

 “嫌われキモ男”という不名誉な呼ばれ方をしたのは、NON STYLEの井上裕介(42)。『よしもとブサイクランキング』、『よしもとダサい男ランキング』などで数々の賞を総なめにした井上。それでもポジティブシンキングな“ナルシストキモキャラ”でブレイク。

「ポジティブ名言カレンダー『毎日ポジティブ』は'15年のカレンダー売り上げベスト10に入るほど人気に。井上さんのシャワーシーンなど思わず“キモっ”と言ってしまいたくなる写真がこれでもかと詰め込まれるとともに名言が書いてあるという日めくりカレンダー。キモいナルシストという新しいジャンルを切り開きました。

 今年、ひと回り以上年下の女性と結婚を発表した井上さんですが、彼はこれまでも数々の女性と浮名を流してきました。女の子にマメで優しくてスーパーポジティブ。モテないわけがないですよね

 そう語る前出の芸能記者は、続けてバナナマンの日村勇紀(50)についてこう指摘する。

「デビュー当初は歯並びが悪くガチャ歯でスキっ歯をいじられたり、マッシュルームカットに顎なしの姿が気持ち悪いなどと言われましたが、テレビ東京の『ゴッドタン』でヒム子というキャラクターを始めたあたりから“かわいい”と言われるように。私生活でも元NHKアナウンサーの神田愛花さんを射止めて、今では日村さんがキモキャラだったことを覚えている人は少ないかもしれませんね

愛されるキモキャラの条件

 他にも今活躍中のキモキャラとして成田さんは、コロコロチキチキペッパーズのナダル(37)、ピン芸人の永野(48)などを挙げる。愛されるキモキャラの条件とは?

ツッコミに対して怒らない、ふてくされない、キレないことでしょうか。しかもそこで相手に対して話せば話すほど、言い訳すればするほど、身振り手振りを交えながら言葉を重ねるほどキモさが増していくことが面白さにつながる人でないといけない。単に見た目だけの問題ではないですね。

 一方で出川哲朗さんや上島竜兵さんはリアクション芸が強く、しかも背が低くてお腹の出た愛らしい子ども体形なので、“キモい”とはならなかったのではないでしょうか」(成田さん)

 キモキャラ芸人が愛されていく一方でキモくてあまり見かけなくなった芸人も。

「消えていった、とは違いますけど、キモキャラをやり続けて別次元に入ったなぁと思うのは小島よしおさんですね。早大教育学部卒の頭脳があるとはいえ、まさか教育関係でブレイクするとは。でも実際にお会いすると、スタイルのいいイケメンなんですよ」(成田さん)

 クロちゃんを超える愛され“キモキャラ・モンスター”は今後の芸能界に登場するのだろうか。

 
菊地亜美を掴んで離さないアンガールズ・田中卓志('16年6月)

 

田中圭に冷たい目で見られるクロちゃん

 

田中圭に引かれるクロちゃん

 

金の盾と銀の盾を披露する江頭2:50(YouTube『エガちゃんねる』より)