(左上から)カズレーザー、加藤浩次、恵俊彰、松本人志、笑福亭鶴瓶、博多大吉、東野浩二、太田光

 司会者やコメンテーターとして、近年、ニュースバラエティー番組を席巻しているのがお笑い芸人。

芸人には専門家とは違う切り口のコメントが期待されている

「専門家ではない芸人コメンテーターに求められているのは、多くの場合、視聴者目線のコメント。しかし最低限の知識に欠けていたり、あまりに普通の切り口でしか発言できなかったりしている場合は、視聴者もそれを敏感に見抜いています」

 と言うのは、芸能ジャーナリストの佐々木博之さん。そこで週刊女性PRIMEでは男女1000人を対象に「意見に賛同できる、信用できる芸人アンケート」を実施。視聴者から支持される芸人を探ってみた。

理論的と大絶賛のカズレーザー

カズレーザー

 栄えある1位に輝いたのは、いまや最強コメンテーター芸人との呼び声も高いメイプル超合金のカズレーザー(38)。

 本人はネットテレビ局のバラエティー番組で「コメンテーターは誰かの声を代弁しているか、誰も思っていないことを言うかの二択。誰でもできると思ってやっている」という趣旨の発言をしているが、視聴者からの信頼は絶大。

「数ある芸人の中で、まれに見るまっとうな存在。コメントにも共感できる場合が多い」(71歳・男性)

「博識ですべての社会現象に対して鋭く意見が言える」(69歳・男性)

「いつも冷静で理路整然としていて、感情に流されずきちんと意見を言っている」(65歳・女性)

 など、幅広い知識に裏付けされた理論的なコメントが厚い支持を獲得。

「コメンテーターとして登場する芸人は皆、炎上に気をつけています。ですから偏りのない中道の立ち位置でコメントする人が多いのですが、中でもカズレーザーさんは勉強したうえで、いろいろな人の意見も踏まえて話をしている感じがする。だからこそ『なるほど』と多くの人をうならせるコメントができるのでしょう」(佐々木さん)

「学歴があり視野が広い」(51歳・男性)という声に代表されるように、カズレーザーの場合、頭の良さを評価する意見も多数寄せられた。

「数多の芸人の中からコメンテーターとして呼び声がかかる一番の基準となるのが、人気と好感度。

 それに加えて、日本社会では今も『高学歴イコール頭がいい』という図式が健在ですから、有名大学出身であることも物を言います。彼はこの3つの条件に当てはまり、今後も活躍の場をどんどん増やしていくのでは」(佐々木さん)

“朝の顔”を17年間務めた実績

加藤浩次

 2位にランクインしたのは、『スッキリ』(日本テレビ系)の司会を務める加藤浩次(53)。来年3月に番組終了が決定しているが、視聴者からの評価は今も変わらず高い。

「誰にも媚びることなくズバズバと意見を言ってくれるので信用できる」(54歳・女性)

「白黒がはっきりしていて、正しいと思うことは貫き通すところが共感できる」(52歳・男性)

「毒舌で攻撃的口調ではあるが、弱者には優しい」(42歳・男性)

 強い正義感とはっきりと物を言う姿勢が評価されている加藤。17年間もの長きにわたり番組が続いたのも、これらの意見に代表される視聴者からの支持があってこそ。

「かつては『狂犬』とまで言われた加藤さんですが、スッキリではそのキャラを封印。過激な物言いは控えて、共演者にまんべんなく話を振り、時にはいじって笑いを生むなど、芸人としてのスキルをフルに活かしながら、司会進行の役割に徹していました」(佐々木さん)

 番組終了は「加藤の乱」と呼ばれる'19年の闇営業にまつわる発言が原因では、とも噂されるが……。

「それはないと思います。おそらくですが、理由のひとつはマンネリ化。朝の情報番組の中で、スッキリが最高視聴率を得ていた時期もありましたが、数字が落ちてくると、そろそろ変えようという流れになるのは仕方のないこと。

 また番組が長く続くと、ギャラも上がっていきますから、そこもネックになったのでは、と思います」(佐々木さん)

クセがない芸人が信頼度大!

恵俊彰

 3位に入ったのが『ひるおび』(TBS系)司会の恵俊彰(57)。

「意外と知識豊富で、他の出演者にも不快な思いをさせることがない」(63歳・男性)

「政治や内外情勢について、よく勉強していると思う。専門家のコメントに的確に返すなど、やりとりが成立している」(66歳・男性)

「人の意見を素直に聞く耳を持っている」(72歳・女性)

 来年3月で満14年を迎える長寿番組だけあって、共演者とのやりとりを安心して見ていられるという声が集まった。

恵さんはクセがなく人当たりがいいため、万人に好かれるタイプ。情報番組の司会者は『俺の番組だから、俺がやりたいことをやる』という意識になりがちですが、恵さんや加藤さんにはそれがなく、スタッフうけもいいと聞いています。

 おまけに2人とも共演者に対する気遣いがしっかりしている。場を読んだコメントをするには、番組スタッフと息を合わせることも大切です」(佐々木さん)

先輩後輩ならではの面白さ

 4位に入ったのは、クセが強い芸人の代表格であり番組内でもその個性を存分に発揮している『ワイドナショー』(フジテレビ系)メインコメンテーターの松本人志(59)。

「年季からかお笑いネタを織り交ぜつつも、言いたいことを伝えるコメント力がある。わからないことはうまく別の人にパスして聞くので、こちらも一緒に質問している気分になれる」(33歳・男性)

「意見に共感できる。知識がすごく浅いときもあるけど、面白く話をするので聞きやすい」(53歳・女性)

 同番組からは、司会者の東野幸治(55)も8位にランクイン。

『ワイドナショー』で共演する松本人志と東野幸治

「冷めた感じが中立的で司会に向いている」(46歳・男性)

「常に人をよく見てしゃべり、きつい言葉も愛情がある表現になっている」(73歳・男性)

 松本人志は芸人としての面白さが、東野は松本への冷静なツッコミがウケている様子。

「メインの立場である松本さんにとって、後輩の東野さんは組みやすい相手。東野さんならうまくフォローしてくれるだろうという信頼感のもと、松本さんが多少の毒を含むコメントを出し、東野さんがツッコむ。その掛け合いが番組の面白さにつながっていると思います」(佐々木さん)

笑福亭鶴瓶

 ランキングには松本以外にも、5位に笑福亭鶴瓶(70)、8位にタモリ(77)と2人の大御所がランクイン。笑福亭鶴瓶は人柄が高評価のポイントに。

「素直な物言いと視点が庶民目線で賛同できる意見が多い」(59歳・女性)

「いろいろな芸能人との心温まる関係と、人を思いやる優しさがよい」(63歳・男性)

 一方、タモリは博識ぶりで高い評価を得ている。

「博学であるが知識をひけらかさず、司会者として落ち着きがある」(50歳・男性)

「基本的な知識が豊富で、それをコメントに応用できる」(75歳・男性)

「笑福亭鶴瓶さんとタモリさん、どちらにもいえることですが、『嫌い』という人はほぼいないのではないでしょうか。

 かつてのみのもんたさんのようにクセの強さが番組の個性となる場合もありますが、近年はクセがない人が好まれる傾向が顕著。実際そういう人のほうが番組は長続きします」(佐々木さん)

回しがうまいと視聴者は安心

麒麟の川島明

 『スッキリ』の裏番組として昨年スタートした『ラヴィット!』(TBS系)の麒麟・川島明(43)は6位。

「いい声をしている。頭の回転が速く、状況に応じて的確なツッコミができる」(59歳・男性)

「笑いをとりつつも、誰も傷つけない口調がいい」(45歳・男性)

 出演者の多さが『ラヴィット!』の特徴だが、芸人としてのスキルの高さと低音ボイスを活かして番組を回す様子を視聴者は評価。

「たくさんゲストがいる番組では、いかに偏ることなく出演者全員に平等に話をふるかが司会者の腕の見せどころ。その点、川島さんは非常に回しがうまいので、視聴者も安心して見ていられるのではないでしょうか」(佐々木さん)

 7位はNHKの朝の顔となった『あさイチ』メインキャスターの博多華丸・大吉の大吉(51)。

「同郷だし話し方がやわらかいので親近感がわく」(47歳・女性)

「朝ドラ受けが毎日楽しみ。 鈴木奈穂子アナとの相性もGood!」(64歳・男性)

 10位には『ノンストップ!』(フジテレビ系)司会者のバナナマン・設楽統(49)が滑り込み。

「嫌みがなく進行がスムーズ」(75歳・男性)

「自己主張が強くないので、話がスッと頭に入る」(71歳・男性)

 博多大吉と設楽統も、やはりクセがないタイプ。

司会者に求められるのは、勉強家であることと回しのうまさ。それに加えて、70%程度の視聴者に受け入れられるような、極端なクセがない芸人が制作側からは好まれます。

 大御所であることよりも勉強家であることは制作側からすればやりやすい、ということに」(佐々木さん)

【信用できる芸人司会者・コメンテーターランキング】

〈1位〉カズレーザー(メイプル超合金)122票
〈2位〉加藤浩次(極楽とんぼ)72票
〈3位〉恵俊彰(ホンジャマカ)59票
〈4位〉松本人志(ダウンタウン)41票
〈5位〉笑福亭鶴瓶 39票

〈6位〉川島明(麒麟)38票
〈7位〉博多大吉(博多華丸・大吉)37票
〈8位〉タモリ 23票
〈8位〉東野幸治 23票
〈10位〉設楽統(バナナマン)22票

明るさが裏目にも……「信用できない芸人」

 続いて、意見が信頼できない芸人をチェック。1位になったのは、ハイテンションキャラで人気のフワちゃん(29)。

「無駄に騒いでいるだけ。中身がなく、まったく面白くなくて不快」(54歳・女性)

「キャラかもしれないけど人を見下しているような印象。年上でも呼び捨てにするような態度はいかがなものかと思う」(63歳・男性)

 その明るさがコメンテーターとしては完全に裏目に。

フワちゃん

制作側は視聴率アップを狙って、そのとき人気がある人をキャスティングします。しかし、視聴者が求めるのは的確なコメントができる人ですから、人気だけを選考基準にすると反感を買うこともある。フワちゃんはその典型例という気がします」(佐々木さん)

 2位は信用できる芸人でも2位だった加藤。

「感情的。熱くなりすぎて怖くなる」(58歳・男性)

「自我が出すぎて不愉快なときがある」(74歳・女性)

 長所と欠点は表裏一体というが、正義感の強さが信頼感を損なう原因に。

 3位は『サンデージャポン』(TBS系)司会者の爆笑問題・太田光(57)

「偏った知識で有識者に意見しようとするのがおかしい」(27歳・男性)

 宗教関連の問題に発言に共感できないという声も多く上がっていた。

爆笑問題の太田光

「ほとんどの場合、番組には台本があり、事前の打ち合わせでどんなコメントをするかが決められています。

 宗教に関する太田さんのコメントに対しては、共演者がこぞって意見していたので、番組内でバランスをとる構成だったのかもしれません」(佐々木さん)

 最後に質問。佐々木さんにとって、その意見を信頼できる芸人は誰?

「よく勉強していると感じるのは、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さん。はっきり物を言うタイプなので難しいでしょうが、彼がコメンテーターとして出演すると面白いと思います」

【信用できない芸人司会者・コメンテーターランキング】

〈1位〉フワちゃん 63票
〈2位〉加藤浩次(極楽とんぼ)59票
〈3位〉太田光(爆笑問題)53票

お話を伺ったのは……

佐々木博之(ささき・ひろゆき)さん○元『フライデー』記者で芸能ジャーナリスト。現在も週刊誌などで取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中

取材・文/中西美紀

 

 

《信用できる》芸人司会・コメンテーターランキング

 

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フワちゃん

 

太田光(2022年9月)