かもめんたる・岩崎う大が、近々きっと話題になりそうだと思うお笑い芸人を予想する連載企画。今回の芸人はカベポスター。
2人とも頭の良さそうな雰囲気が漂うところが肝
カベポスターは、今年のM-1グランプリで決勝に駒を進めた若手漫才師です。関西のほうではすでに有名で、2022年のABCお笑いグランプリをはじめさまざまな賞を受賞している大ホープです。
僕が数年前に初めてカベポスターの漫才を見た時の印象は「この2人は何か新しいことをやろうとしている!!」というものでした。
実は、こういう印象を持つことはそう多くありません。大抵は「新しい」を装った「新しい風味」のネタだったりします。
しかし、彼らのネタを初めて見た時、彼らは既存のフォーマットを借りずに、ネタの設計図から、新しいものを世に送り出すような強い気持ちでやっていると伝わってきました。
そういうネタの持つ「わかりにくい」という弱点も、そのころは、まだ見られましたが、「この先、カベポスターのネタはどんなふうに進化していくのだろう」とワクワクしたのを覚えています。
もし漫才に打撃系と組み技系があるとしたら、カベポスターは間違いなく組み技系でしょう。漫才を見ているうちに、自然といろんな箇所を押さえられて気づいたら笑いで締め落とされている、そんなイメージがあります。派手さはなくても、技の美しさやアイデアで魅了する漫才です。
長身でインテリっぽい見た目はハンサムな永見くんが、話題を提案して話を進めていき、それに対して凛々しい眉毛と低音ボイスが特徴の浜田くんが落ち着いたツッコミを繰り出していく。それが彼らの定番のスタイルです。
カベポスターを特徴づけるのは、2人ともインテリな雰囲気を漂わせていることでしょう。永見くんだけでなく浜田くんも頭が良さそうな雰囲気があるのがこのコンビを分析するうえでの肝だと思います。
ネタ全体が魔法にかけられたように洗練されて見える
2人の漫才は、浜田くんまでおバカキャラだと成り立たない構造になっています。お客さんの思考の何歩か先を進む浜田くんがツッコんでいる。
そこにお客さんの思考が追いつくような順序になっていると僕は感じています。そんなお客さんの先を進む浜田くんが結局さらに先を進む永見くんの手のひらの上で踊らされる。それが彼らの真骨頂だと僕は思います。
そして、このカベポスターを単なる小難しいネタをするだけのコンビにはさせていないのが、永見くんの大喜利力でしょう。
やっぱりお笑いですから笑えないといけません。お笑いのネタは笑えないとカッコ悪いし、粋じゃないんです。永見くんの繰り出す、さまざまな題材の中に出てくるボケがピカイチなんです。だから、ネタ全体が魔法にかけられたように洗練されて見えます。
そして彼らが、あの落ち着いた関西弁でするやりとりが、彼らのネタをとても良い意味で「漫才」というおもしろいお話の範疇にとどめていることも忘れてはいけません。
カベポスターは、永見くんがその大喜利力をもって、ネタの構造から面白くしようとしている姿勢が感じられます。おそらく今、他の芸人がああいう頭を使うネタをやろうとしても、彼らの背中を見るのもなかなか難しいのではないでしょうか? 彼らはそれほど独走状態だと思います。
ここまでのネタ作りの道のりは茨の道のりだったに違いありません。
しかし、観客を信じ、自分たちのネタの発想を信じ、形にしてきた漫才は完成し、今はすでに黄金のウイニングロードを歩いているように僕には見えます。素晴らしいタイミングでM-1の決勝に上がったと思います。天晴です!