麺のつゆとしてだけでなく、調味料としての存在も確立している「めんつゆ」。しょうゆに砂糖や酒、だしがバランスよく配合されているので、和食の味が一発で決まり、忙しい主婦には欠かせない存在だ。
それゆえ、さまざまなメーカーから各種発売されているが、どうせなら「いちばんおいしい1本が知りたい!」と、和食のプロに味比べをしてもらった。
味の決め手は「だし」ではない
ジャッジしてくれたのは銀座で50年続く割烹料理店の店主、下田文晃さん。違いを大きく左右するのは、やっぱりだしの種類だろうか?
「昆布やかつおなどの種類がありますが、それぞれバランスよく配合されているので、だしで味が大きく変わるという印象はないですね。それよりも、製造元の業種がかなり影響していると思います」(下田さん、以下同)
例えばキッコーマンやヤマサといったしょうゆの会社が作ったものは、しょうゆの味がより引き立っている。酢に強いミツカンなら、酢と合わせてもおいしい仕上がり。かつお節を扱うにんべんや“創味シャンタン”でもおなじみの創味などは、だしの風味や旨みが強めといった具合。
さらに、購入するときは、濃縮度合いも要チェック。
「ストレートタイプはそばつゆに特化しているものが多いので、フレッシュなだしの風味と柔らかい味わいが楽しめます。使い切りを想定していると思われ、開封後の日持ちは冷蔵庫で2~3日と短いものが多い。
濃縮タイプはストレートタイプよりも味が濃い分、日持ちがいいですね。そばつゆに特化していないので、オールマイティーに使用できるのも便利」
この年末年始、活躍しそうなのはどのめんつゆか? 買い物の参考に、ぜひチェックしてみてほしい。
※ランキングは、原材料として使われているしょうゆやかつお節、昆布などの香りが食欲を高めるかを採点した「風味」、全体の味のバランスの良さを採点した「味のバランス」、麺類だけでなく料理にも幅広く使えるかを判断した「汎用性」、そのほか「甘み」、「しょうゆの味」の5項目を評価し、合計点で決定。
※めんつゆ価格は編集部調べ、2022年11月時点のもの(税別表記)
【5位〜3位】普段使いにぴったりな3本
〈第5位〉キッコーマン 濃いだし本つゆ
風味「3」 甘味「3」 醤油の味「5」 味のバランス「4」 汎用性「3」
用途が広くコスパがいいのもうれしい!
「かつお節、宗田かつお節、いわし節、マグロ節の4種と昆布の合わせだしを使っているので旨みが高い。ほかに比べてしょうゆの主張が強く感じられ、“だししょうゆ”という印象。火を入れる煮物や焼き物との相性がよさそう。4倍濃縮でコスパがいいので、普段使いにぴったり」(下田さん、以下同)
●用量とタイプ:4倍濃縮、500ml
●価格:178円
●主なだし:かつお節、宗田かつお節、いわし節、マグロ節、昆布
〈第4位〉ヤマサ ぱぱっとちゃんと これ!うま!! つゆ
風味「3」 甘味「4」 醤油の味「3」 味のバランス「4」 汎用性「5」
汎用性ピカイチ!麺よりも料理におすすめ
「白だしに近い万能調味料。だしの風味がさほど強くないので、和食だけでなくパスタやスープといった洋食にも使えそう。
旨み、甘み、塩味のバランスがとれているため、味つけはこれ1本でも十分決まる。めんつゆとしてはやや薄味。どちらかと言えば、そばよりうどんが合うのでは」
●用量とタイプ:濃縮タイプ、500ml
●価格:298円
●主なだし:かつお節、煮干し、しいたけ、昆布
〈第3位〉ヤマキ めんつゆ
風味「4」 甘味「4」 醤油の味「4」 味のバランス「4」 汎用性「4」
重層的なだしの味わいは煮物やおでんに
「“かつお節屋のヤマキ”というだけあり、かつお節の旨みが効いています。加えて後味には煮干しの旨みも広がり、重層的な味わい。甘みや塩味は突出しておらず、バランスがよいので万人に好まれそう。
どんな麺とも相性がよく、ザ・めんつゆといった印象です。練り物とも合うと思うので、おでんだしに使うとおいしく仕上がるのでは」
●用量とタイプ:2倍濃縮、500ml
●価格:188円
●主なだし:かつお節、魚介エキス
ベスト5圏外のめんつゆ
惜しくもベスト5圏外となってしまっためんつゆたち。決して上位のめんつゆとくらべて劣っているわけではなく、それぞれに特徴が。料理に合わせてめんつゆを変えてみるのもおもしろい。
■ヤマサ 昆布つゆ
(500ml、3倍濃縮、198円)
肉や魚の旨みがのる濃厚昆布だし
「グルタミン酸を多く含む昆布ベースで、肉や魚の旨み成分イノシン酸との相性は抜群。しょうゆのコクもほどよく汎用性は高い」
■久原 あごだしつゆ
(500ml、4倍濃縮、500円)
隠し味としても際立つ焼きあごの旨み
「主張の強いあごだしは野菜料理に使うと、深みのある味わいが楽しめる。九州の甘いしょうゆといった感じなので、甘みのある筑前煮などに」
■ミツカン 八方だし
(500ml、濃縮タイプ、398円)
どんな料理にも合う使い勝手の良さ
「八方と名がついているだけあって、煮物や鍋物などいろいろな料理のベースに。火を入れるとよりまろやかな味わいになる」
■創味食品 創味のつゆ
(500ml、濃縮タイプ、398円)
希釈せずに使えばだししょうゆに
「塩味がやや強いので、火をじっくり通す料理に使うと味がキツくなるかも。おひたしやマグロ漬け、豆腐にかけるなどがおすすめ」
■藤原製麺 北海道きたそらち農協 幌加内支所推奨めんつゆ
(500ml、4倍濃縮、298円)
肉や魚の旨みを引き出す
「しょうゆが強めでだしも味も濃いので、肉や魚を漬け込むような料理に。麺に合わせるつゆとしては、やや主張が強め」
【2位〜1位】プロもうなる!風味抜群な2本が上位に
〈第2位〉ミツカン 追いがつおつゆ
風味「5」 甘味「3」 醤油の味「4」 味のバランス「4」 汎用性「5」
濃厚なかつおだしで本格的な和食にも
「かつおで2回だしをとっているだけあり、かつおの旨みと香りをしっかり引き出しています。きめ細かくひいたかつお節も加わっているので、旨みが強い。
甘みがあるので口当たりが柔らかく、酢との相性も抜群。南蛮漬けや酢の物に最適。肉じゃがなどの煮物も、品良く仕上がります」
●用量とタイプ:2倍濃縮、500ml
●価格:188円
●主なだし:かつお、昆布、しいたけ
〈第1位〉 にんべん つゆの素
風味「5」 甘味「4」 醤油の味「4」 味のバランス「5」 汎用性「5」
豊かな風味と柔らかな甘みでどんな料理にも合う!
「元禄12年創業以来、かつお節を追求しているにんべんだけあって、かつおの旨みが豊潤。昆布だしも入っているので、旨みに奥行きがありますね。
にんべんはめんつゆの歴史も古く、王道のおいしさ。しょうゆの味はマイルドで柔らかな甘みが感じられ、肉、魚、野菜のどれとも相性よく、煮物、丼もの、ドレッシングなど、幅広く使えそう」
●用量とタイプ:3倍濃縮、500ml
●価格:348円
●主なだし:かつお節、昆布
年越しそばに合う1本はコレだ!
大みそかに味わう年越しそば。ワンランク上の味わいを堪能できるのはいったいどのめんつゆ?
〈第3位〉上野藪蕎麦総本店 藪そばつゆ
風味「4」 味のバランス「4」 汎用性「3」
そば処の本格的な味が楽しめる
「江戸っ子に愛された上野藪蕎麦のつゆだけあって、濃くて深い味わい。大豆の旨みが存分に感じられる本醸造のしょうゆを使い、火入れをせずに仕上げているそう。そばとの相性は抜群で、お店そのままのおいしさを堪能できる」
●用量とタイプ:ストレート、340ml
●価格:298円
●主なだし:宗田かつお削り節
〈第2位〉桃屋 桃屋のつゆ 大徳利
風味「4」 味のバランス「4」 汎用性「3」
強いこだわりが感じられる丁寧な仕上がり
「厚削りかつお節の一番だしを使っているので、上品なかつお節のコクと香り。紫外線に強い黒いボトルを使っている点もこだわりが感じられて好印象。
甘みとしょうゆの旨みがやや強めなので、火を通すと味がキツくなる可能性が。料理に使うならあえ物やドレッシングなどがおすすめ」
●用量とタイプ:2倍濃縮、400ml
●価格:358円
●主なだし:削り節(宗田かつお、かつお、さば)
〈第1位〉ヤマモリ 吟御膳そばつゆ
風味「5」 味のバランス「4」 汎用性「3」
主役のそばを引き立てる、まろやかな甘みと風味
「甘みに砂糖を使う商品が多い中、三河産本みりんを使用しているのでまろやかな甘み。焼津産かつお節の風味がふわりと口に広がり、そばの風味をより引き立ててくれそう。塩味はさほど強くないので、年配の方にも好まれる味」
●用量とタイプ:ストレート、400ml
●価格:298円
●主なだし:かつお削り節、宗田かつお枯れ節削り節
こちらもおすすめ
■ヒゲタ 特撰つゆ
(400ml、3倍濃縮、298円)
上品な味で白だし的に使うと◎
「かつおに加えてさばの甘みがふわりと広がります。白だしに近いさっぱりとした味で、うどんと相性よし。お吸い物に使っても」
名店の味を家庭で堪能!下田さん直伝めんつゆレシピ
加減が難しい和食も、めんつゆがあれば味がパシッと決まる! 年末年始の食卓にぜひどうぞ。
※めんつゆはすべて、“にんべん つゆの素(3倍濃縮)”を使用。
◎きのことだしの旨みで、しみじみおいしい
しめじと舞茸の炊き込みご飯
【 材料・作り方(作りやすい量) 】
〈1〉米3合は洗って水けをきる。
〈2〉しめじ1パックと舞茸1パックは、石づきを切って手でほぐし、めんつゆ少々で軽く洗う(★)。
〈3〉炊飯器に米ときのこ、めんつゆ150ml、水450mlを入れ炊く。3合の目盛りまで達しない場合は水を加えておく。
〈4〉器に盛り、さっとゆでた三つ葉少々をのせる。
★プロのテク★
きのこにめんつゆをくぐらせておく。こうすると、炊き上がったときに味ムラが出ない。
◎クタッとしないひと手間がミソ!
ナスの揚げびたし
【 材料・作り方(2人分) 】
〈1〉なす4本は、へたとがくを切り落とし、縦半分に切って皮目に切り目を入れる。
〈2〉揚げ油を180度に熱し、なすを3~4分揚げて取り出す。熱湯にさっとくぐらせて油抜きをし(★)、水けをよく拭く。
〈3〉鍋にめんつゆ100ml、水400ml、種を抜いた赤唐辛子2本を入れて火にかけ、沸騰したら火を止めて〈2〉を入れ、冷ます。
〈4〉器に盛り、かつお節と赤唐辛子をのせる。
★プロのテク★
湯で油抜きをしておくと、だしで煮たときに味が入りやすくなる。煮すぎると食感も色味も悪くなる。
◎ふっくら仕上げるため煮詰めすぎに注意
ぶりの照り焼き
【 材料・作り方(2人分) 】
〈1〉ぶりの切り身2切れは、片栗粉をまぶしておく。
〈2〉フライパンにサラダ油を薄くひいて中火で熱し、ぶりを並べ入れる。焼き色がついたら裏返し、1分ほど焼いて余分な油を拭きとる。
〈3〉めんつゆ大さじ2と水大さじ4をまぜて〈2〉のフライパンに入れて中火にかけ、煮立ったら、みりん大さじ2を入れて照りをつけ、煮からめる。
〈4〉器に盛り、刻みゆず少々をのせる。
採点してくれた匠は……
取材・文/樫野早苗