岸田文雄首相は12月8日、防衛費の財源確保のため“増税”する方針を示した。JNNが12月3、4日にかけて行った世論調査によると、岸田内閣の支持率は過去最低となる34・2%を記録。だが、首相の“増税”発言により国民からの怒りが渦巻く今は、さらに下降線をたどっていそうだ。そんな支持率低下のウラに、国民はどのような不満を抱えているのか?
政治家が取り入れるべき感覚とは
『週刊女性』は全国18~70歳の既婚女性3000人にインターネット上でアンケートを実施。編集部で用意した複数の『支持しない理由』と『支持する』という選択肢を設けて、その中から最も当てはまる1つを選択してもらった。
全国の主婦が岸田首相を支持しない理由は⁉
◆ ◆ ◆
岸田首相に感じている不満の第1位は738人が投票した『物価上昇を抑えられず、景気が悪いから』。
「将来的に明確に景気回復する打開策をすぐに行ってほしい。給料は下がる一方なのに、消費税も高く、物価上昇はひどく、生活が困難。一時的な補助金などでごまかしてほしくない」(42歳・福岡)
「物価上昇に対応した政策がなされてない。子育て支援政策も場当たり的で、所得制限を設ける政策が多く、共働き家庭・中間所得層への支援になっていない」(33歳・埼玉)
「食料や消耗品の消費税を期間限定で下げてほしい。家計が悲鳴をあげている。生活していけない」(54歳・大阪)
ロシアのウクライナ侵攻や円安進行の影響による物価の上昇が家計を直撃。民間の調査会社によると、年間で約9万6000円も家計の負担が増えるとの試算もある。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏は、
「主婦のみなさんは日々、何が変化しているか一番よくわかっている。物価の優等生であるはずの卵が、ずいぶん値上がりしているというのは、景気動向の資料を見てもわかりません。政治家はカップラーメンや大根1本の値段までわかっている必要があるとまでは言わないですが、その感覚を取り入れれば“よく知ってるじゃない”と国民の評価も変わってくる。岸田首相はこのアンケートから、学ぶことがたくさんあります」
2位には527人が選んだ『税金を増やそうとしているから』がランクインした。
「年金も65歳まで納めることになりそうだし、どうやって生活していけばいいのか、不安しかない」(54歳・広島)
「今ある財源でやりくりせずに増税や社会保険料を増やすことで賄おうとしている」(50歳・東京)
「防衛費という名目で増税を考えているようだが、まずは無駄遣いをなくしてから言ってほしい」(43歳・東京)
「検討します」しか聞いたことがない
政府は'23年度から5年間の防衛費総額を現行の27兆円から43兆円へ増額する方針。'27年度以降、財源が毎年4兆円不足するとされ、そのうちの1兆円を増税により確保することを検討している。
「財布に10万円あったら、主婦はその範囲でやりくりするのが当たり前。なのに“1兆円足りないから頼むよ”なんて言われたら、“こっちはいつも足りねぇよ”って言いたくもなりますよ。無駄をなくすという視点は、本当に正しいと思います」(角谷氏)
3位は『判断や決断が遅いから』で395人が投票。
「大臣の罷免も遅すぎる。決断力がない」(63歳・秋田)
「菅さんは1年で不妊治療の保険適用などいろいろしたけど、岸田さんは何かしたの?」(49歳・大阪)
4位には『リーダーシップがないから』がランクイン。3位に続いて一国のリーダーとしての価値が問われている。
「何も成し遂げてないし“検討します”というセリフしか聞いたことがない気がする。具体的なビジョンが伝わってこない」(31歳・埼玉)
これらの回答について前出の角谷氏は、
「不祥事のあった閣僚をクビにする判断が遅かった。アイヌ民族を揶揄するブログ投稿や性的少数者への差別発言をした杉田水脈議員を野放しにしていることも許しがたい。杉田議員の任命責任について問われると“この人事は適材適所”と答弁するとか、本当に大丈夫?と心配になります。岸田さんの足を引っ張っている人を守っていたら、支持がどんどん下がるというのがわからないのでしょうか
ただ、唯一判断が早かったことがあったと続ける。
「安倍晋三元首相の国葬に関してだけは、即決しましたよね。ただ開催を9月にしたのは失敗だった。2か月半もあれば、批判が渦巻くのは当然。問題視され評価を下げました。これについては、判断と決断の両方を間違えたと思います」
「国防と同レベル」で行うべき子育て支援
ランキングでは12位となった『子育て支援が足りないから』だが、自由記述欄に子育て支援や少子化対策を求める声が数多く寄せられた。
「所得制限で児童手当が5000円しかもらえず、うちは2人目を諦めました。家計が厳しいです」(34歳・神奈川)
「高齢者への手厚い支援ばかり。子どもや若い世代も大事にしてほしい」(34歳・長野)
「子育て支援策で10万円とかふざけるな。10万円で成人まで子どもを育てられるわけがないでしょう。もっと未来を考えた政策を打ち出してほしい」(26歳・富山)
「出産育児一時金を増やすより、その後の子育てのほうがお金がかかるのだから、すべての子育て世帯に手厚い援助が欲しい」(27歳・北海道)
「所得制限付きのばらまき政策を行っているが、税金を多く払っている世帯は保育料が高く、高校の学費も無料にならず、給付金も対象外。せめて税金をきちんと納めている人が損をしないようにしてほしい」(32歳・東京)
政府は42万円だった出産育児一時金の支払いを、来年度から50万円に増額する。その一方で、今年10月から世帯主の年収によって児童手当の支給を廃止された家庭も。
自治体によって違うが、0~2歳までの子どもの保育料も世帯年収によって変わってくる。都内で2歳の子どもを育てる30代の女性は、
「うちは月3万円ほどですが、高収入世帯の友人は、子ども2人の保育料が月10万円超えだと嘆いていました。累進課税で多く税金を払っているのに保育料だけで年間120万円以上って……。同じぐらいの水準の家庭では“3人ほしかったけど、うちは1人で限界かな”と話すお母さんもいるそうですよ。
国は子育て世帯がどれだけお金が必要なのか、わかっていないように感じます。出産育児一時金の増額はいいことだけど、それよりも収入問わず保育料や学費の無償化といった、すべての世帯に恩恵のある政策を行ってほしいと思います」
人口が減れば税収は少なくなり、労働力の確保ができなくなれば経済も衰退していく。
「国防と同じぐらいのレベルで子育て支援は行っていくべき問題です。極端に言えば、武器を買っても将来的に扱う人がいなくなる。なら、何のために防衛費を増やしているのかわかりません」(角谷氏)
岸田首相には都合のいい“聞く力”ではなく、本当に助けを求める人の声を“聞く力”が求められている─。