『M-1』審査員に選ばれた山田邦子

 12月18日に決勝を迎える漫才日本一決定戦『M-1グランプリ2022』(テレビ朝日系。午後6時34分)の審査員に、お笑いタレントの山田邦子(62)が新加入することがざわつかせている。

 なぜ、山田邦子なのか。今、山田邦子なのか。

 レジェンド・上沼恵美子(67)が鋭い評論を武器に君臨していた席に、山田が納まるという“やまだかつてないサプライズ”。

 その裏側にチラつくのは、吉本&関西カラーの排除と、演芸長寿番組『笑点』のレギュラー出演者の桂宮治(46)や『笑点』のスピンオフ番組『BS笑点特大号』の若手大喜利メンバーの春風亭昇也(40)らとの交流だ。

『水ダウ』に出演して成功

 上沼の後継者を探すにあたり番組サイドは当初、ハイヒール・モモコ(58)を候補者のひとりとして目論んでいた。

「上沼さんに代わる女性芸人が、案外いないんです。モモコは適任者のひとりなのですが、彼女を起用すると吉本色が強くなるというジレンマがある。一時、メディアが、爆笑問題が審査に加わると報じましたが、東京の芸人のブッキングを模索していたのは間違いありません」(スポーツ紙文化部記者)

 女性で東京、しかも上沼の後継者として遜色ないキャリア。この連立方程式の解として浮上したのが山田だった。

 今年6月、TBS系『水曜日のダウンタウン』に山田は出演した。

「しんどい先輩芸人からYouTubeでコラボしたいといわれたときの断り方ムズい説」というドッキリの仕掛け人というお役。あまりおいしくない仕事を山田はおもしろくこなした。

「いい作りでした。吉本の若手に絡む、近頃見たことない女芸人、という面倒な役でしたが、こんな芸人がいたんだ、という印象を若手に残すことに成功した。その後、邦子さんのYouTubeに、番組で共演した鬼越トマホークらが出演していますよ」(テレビ局関係者)

 すでに業界で“終わった”と思われていた山田は使える! 関係者はそう認識し、今回のM-1の審査員への道へと続いたとみられる。

寄席芸人・山田が今、誕生しつつある

 そんな山田のお笑い感性を鈍らせなかった背景にあるのが、桂宮治や春風亭昇也との交流だ。

 演芸関係者の話。

「山田は以前、NHKラジオで長年、レギュラー番組『日曜バラエティー』を持っていた。その際、桂宮治、春風亭昇也らをはじめとした若手を重用していたんです。そのころから、飲み会を開いては、丁々発止のやり取りをして“若手の今”を吸収していた。飲み会にはプロレスラーも来たりしていましたよ。山田は本当に面倒見がよくて、東京の若手芸人に慕われていますからね」

 宮治や昇也らとの交流から山田が今、自分の将来として描くようになったのは“寄席芸人・山田邦子”という姿だ。

山田邦子

 演芸評論家が明かす。

山田は今、春風亭昇太が会長を務める公益社団法人落語芸術協会の“準会員扱い”なんです。若手芸人より先に、同協会の理事の桂竹丸と交流があり、竹丸が引き込んだ形です。寄席に出たい、と山田が申し出て、それが理事会で議論されたことがあります。結果、将来、協会員になることを視野に寄席に出演してもらえれば、ということになり、時々寄席に出演しています。

 12月も、浅草演芸ホールで出て、大ウケしていましたよ。生の舞台に出ていることで、お笑いの勘は鈍っていない。そんなふうに思いましたね。大げさに聞こえるかもしれませんが、寄席芸人・山田が今、誕生しつつある段階で、自分のファンでもない客の前でネタを披露する寄席が、高座が、山田の新たな一面を引き出しているということです

 寄席に出ることで、多くの芸に触れることができる強み。芸の良し悪しを見極める目が自然とできる強みが、山田を芸人としてたくましくさせている。そんな山田をポスト上沼としてM-1の審査員として選んだ番組関係者のセンスは、案外鋭いと言える。

 決勝戦での的確なコメント次第で、山田がさらに注目を集める可能性が出て来た。要注目だ。

〈取材・文/薮入うらら〉

 
『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)に出演していたころの山田邦子

 

片岡鶴太郎と山田邦子。『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)より

 

山田邦子と旦那・後藤氏

 

山田邦子