劇作家の谷賢一氏(本人のインスタグラムより)

 女優・大内彩加が12月15日付のツイッターで、劇団「DULL-COLORED POP」の主宰で演出家の谷賢一氏を「提訴いたしました」と報告。大内は同日、メディアプラットフォーム・note上でも谷氏からのハラスメントの数々を告発していた。

 一方、谷氏も同日中に自身のウェブサイトで「この度は私に関することで大事なお客様、および公演関係者に多大なるご迷惑とご心配をおかけしていることを、まず深くお詫び申し上げます」などとコメント。しかし、大内の訴えに対しては「れっきとした名誉毀損」と憤り、彼女と争う構えを見せ、業界内外の注目を集めている。

女優が実名で告発

 まず、大内は「DULL-COLORED POP」に所属してきた中で、「2018年6月から谷に『日常的に胸やお尻を触る』『卑猥な言葉をかけられる』『卑猥な内容のLINEが送られてくる』等の性加害を2021年3月まで受け続けました。もっと深刻な、辛すぎる性加害もありました」と、自身の被害を記載。

 ほかにも「稽古中に飲酒をしながら稽古をする」「酩酊状態で稽古場に来る」「性的な演出を演者の許可を取らず行う」「若い役者・スタッフを複数人の前で怒鳴りつける」「女性キャストに肩を揉ませる」「女性を必ず自分の隣に座らせる」「物に当たる、態度に大きく不快感を出しながら稽古をする」「急に人を叩く、蹴る」といった谷氏の行為を暴露したのだ。

 現在、大内は適応障害、うつ病を患って通院や投薬治療をしているというが、「今まで声をあげられなかった被害者たちが声をあげられるように、そして被害を受けた人たちの心が少しでも休まりますように、ここに、実名にて告発・提訴いたします」と表明している。

 この事態に、谷氏は自身のサイトで「彼女の文章は事実無根および悪意のある誇張に満ちており、受け入れられるものではありません」「これはれっきとした名誉毀損」「取り下げて頂くまで戦う覚悟でおります」と真っ向から反論し、大内と争う姿勢を示した。

 しかし、谷氏の演出舞台『家を壊す−他、短編−』は初日となるはずだった12月16日、同氏の騒動を受けて「全公演中止」と発表。また、谷氏は「青年団」演出部にも所属していたが、同劇団の公式サイトでは主宰・平田オリザ氏が「他の関係者の証言もあることから大筋の告発は事実であったと思われます」と大内側に立ち、「谷氏は青年団演出部を退団することとなりました」と報告した。

過去にもあったハラスメント疑惑

「今年は3月に榊英雄氏が映画監督の立場を利用した者たちによる女優へのハラスメント報道があり、大問題になりました。それだけに、舞台業界でも谷氏に浮上した疑惑を放っておくわけにはいかなかったのかもしれません」(映画誌ライター)

 ちなみに、大内の告発内容に関しては「事実無根」などと否定していた谷氏だが、同文章中には「かつては稽古場で怒号を飛ばしたこともありました。性的なハラスメントもあったと反省しています」という記述も。

 ただ、谷氏いわく2016年に自身が「非常に強いパワーハラスメントを受けた」ことを機に、以降は「そのような手段に頼らず現場に立つべきだと自覚を強くしました」とのこと。大内と仕事をするようになったのは「2018年」からで、「彼女に対し訴えにあるような行いをしたことはございません」と断言している。

谷賢一氏の新作公演『家を壊す―他、短編―』を主催する「浜通り舞台芸術祭実行委員会」が全公演を中止すると発表

「今回、大内さんの告発を受けてツイッター上で『連帯致します』と反応した女優・ハマカワフミエさんは、2010年に『谷賢一におぱいさわられたなう』(9月)、『谷さんにおぱいさわられたなう』(10月)などとツイートしていたことが判明。谷氏自身がサイト上につづっていたように、2016年以前に『性的なハラスメント』を行っていた事例の1つに含まれそうです」(スポーツ紙記者)

 一方、2016年以降の谷氏にも疑惑がある。たとえば2021年5月、劇作家協会は同年2月に開催した「劇作家と俳優のためのせりふの読みかたワークショップ」において、「講師が受講者に対して高圧的な態度で接し、受講者の尊厳を傷つける場面」があったとして謝罪していたが、同ワークショップで講師を務めたのは谷氏。本人も同年5月8日に自身のサイト上で「当該文書における『講師』とは私、谷賢一のことです」と明かしており、受講者側の発言に問題を感じて口論になったなどと説明していた。

「私刑と同じ」だと主張

 この時、谷氏は受講者に対しての反論内容自体は「私の強い信念に基づいたものであり撤回するつもりはありません」としつつ、「その表現の仕方が人を傷つけたことは間違いなく私の過失です」と認め、謝罪している。

 また今回、大内の告発があった同日には俳優・宮地洸成もnoteで「DULL-COLORED POPを退団いたします」と発表し、「劇団主宰・谷賢一による性暴力及びハラスメントの件を受け、今後も劇団活動に参加するわけにはいかない、したくないと考えた」「稽古場に酩酊状態であらわれたり稽古場で飲酒することがよくありました」などと暴露していたが……。

「大内さんも宮地さんも、谷氏が仕事中に飲酒、または酩酊していたという問題点を挙げていましたよね。実は谷氏、2018年9月9日にミュージシャン・有島コレスケ氏とツイッター上でやり取りしていた中で『俺もあなたもアル中仲間 仲良くしよう 俺はちなみに昼間から人に隠れて飲んでいて、悩んでいるのです』とリプライを送っていました。診断が下りていたのかは不明ながら、自らを『アル中』と言うくらい、お酒を手放せない状態だったのかもしれません。ツイッターアイコンにも“酒瓶を手にした写真”が設定されています」(同・前)

谷賢一氏に対してハラスメント行為を告発した女優お大内彩加(本人のインスタグラムより)

 ツイッター上では現在、大内らの告発を知って谷氏への思いを吐き出す者も。演劇ユニット「くじら座なごや」の主宰・りとうさき氏は「去年、谷賢一さん率いるダルカラの創作現場にスタッフとして関わりました。その現場で、どんなに演劇が好きでも、彼とは今後一切関わりたくないと思い、次の仕事を降りました」と、詳細は伏せつつネガティブな感情をのぞかせた。

 しかし、谷氏は大内と「戦う覚悟」を示している上、『家を壊す−他、短編−』の全公演中止が決まったことにも、自身のサイトに追記する形で「訴状すら見ず、司法の判断も待たずにこの決定を下すことは行きすぎたキャンセルカルチャー、私刑と同じであり承服できません。続きは司法の場で争いつつ、私個人として、この社会的風潮に対し抗議の声をあげていこうと考えております」と、まったく納得していない様子。同騒動は今後、どのように展開していくのだろうか。