テレビ、YouTube、CM業界などの放送作家として、数々のコンテンツを作り出してきた澤井直人(32)。今、ほかの誰よりも「人間」に興味がある平成生まれの彼が「今、話を聞きたい!」と思う有名人と対談する、好奇心と勢いだらけのインタビュー企画『令和にんげん対談』も第5回に突入!
2022年を締めくくるゲストは、元サッカー日本女子代表でタレントの丸山桂里奈(39)。W杯で奮闘した日本代表の試合を振り返りつつ、本並健治(58)との独特すぎる家庭内ルールや、バラエティ愛、憧れの存在である明石家さんまの魅力を存分に語ってくれました。笑いっぱなしのスペシャル対談をどうぞ!!
澤井直人(以下、澤井)「いや~サッカー日本代表の試合は興奮しましたね~。丸山さんも頻繁にサッカー関連のツイートをされていましたが、今大会の日本の試合を振り返ってどうでしたか?」
丸山桂里奈(以下、丸山)「ドイツとスペインに逆転勝ちしたのを見て、『もしかしたら優勝するんじゃない!?』と期待を感じさせてくれました! というのも、自分たちが優勝した時(2011年のFIFA女子ワールドカップ)と流れが似ていたんです。途中出場の堂安選手や浅野選手が点を決めて、チーム全体が勢いづいていく状況は、まさに私たちの時と同じでした。今大会は番狂わせが多かったですし、日本代表も何かやってくれるんじゃないかとワクワクしながら見てました」
W杯の大舞台でも「緊張しなかった」
澤井「『死の組』と言われつつも、グループリーグ1位突破ですもんね。だからこそ余計に、PK戦でクロアチアに負けたのが悔しかったですね……」
丸山「本当に惜しかったですね。でも、日本代表の今後の可能性が大きく広がった大会だったと感じています!」
澤井「応援されている選手はいましたか?」
丸山「三笘選手は意識して見てました! ポジションや役回りが、現役時代の自分と重なるんですよ。私も三苫選手も、途中からピッチに立つ選手ですし、ドリブルで切り込んで行って相手陣営を突破していくタイプ。当時は私も、佐々木監督から『ボールを持ったら全員抜いてきていいよ』ぐらいに言われており、できる限り攻め込んでチャンスメイクしていました。三苫選手を見ながら、代表時代の自分を懐かしむ気持ちもありました」
澤井「日本代表の経験があるからこその楽しみ方ですね! 実際、W杯の試合でピッチに立つ時は緊張されるものですか?」
丸山「個人的には全く緊張しないんですよ(笑)。私の役割は『とにかく目の前の人を抜いて点を決める』と明確だったぶん、プレーに集中できました。むしろ『自分のプレーを多くの人に見せたい!』という気持ちでした。監督や周りの選手も、私の役割を汲み取ってくれて連携してくれたので、今思うと周りからとても支えられていたなと感じます」
澤井「まさにフォワードタイプだ。僕なんか前に芸人やってた時に、劇場で漫才するときはいつも緊張していましたよ。放送作家の仕事も長いですけど、今でも緊張の連続ですし……(苦笑)」
丸山「それは緊張の種類が全く違うじゃないですか(笑)。漫才は人からずっと見られているからかなり緊張しそうですよね。サッカーは屋外だから開放感があるというか、芸を見られるよりはのびのびと出来そうです」
澤井「確かに!スタジオ収録と外のロケで向き不向き分かれますからね。ただクロアチア戦の時のPKは、見ているだけなのに手汗が止まらなかったです……(笑)。PKを蹴るときも緊張しないものですか?」
丸山「人それぞれだと思いますが、私は全然緊張しなかったですね。小中学生の時に所属していたサッカーチームのメンバーが全員男子だったので鍛えられました。当時はよくPKを止められていましたが、相手が同性なら絶対決められるという自信もつきました! PKのコツとしては、とにかく蹴る直前まで相手のキーパーの重心が動くのを待つんです。遠藤選手がよくやる『コロコロPK』ですね。あの蹴り方をマスターしたら、それから1回も外さないようになったんですよ」
ちょっと変わった「家庭内ルール」
澤井「旦那さん(元サッカー日本代表の本並健治)がゴールキーパーだから、PK戦を一緒にみると盛り上がるんじゃないですか?」
丸山「それが本並さんはずっと仕事だったんですよ~。YouTubeなどの生配信や解説で忙しくて、なんだかんだ全試合で仕事していたんじゃないですかね。まあ仕方ないかと思いながら、本並さんが解説している配信を家で見てました。寂しいと思う反面、一緒に見ていたらゴールキーパーとフォワードで意見が分かれて喧嘩していたんだろうなという気持ちもあり……(苦笑)」
澤井「旦那さんの配信を観てるところが仲のよさを表してますね!」
丸山「周りからは仲良しと言われることが多いけどどうなんだろう。夫婦で仕事する時も多いですし、それぞれ別な仕事の時も『何時に帰ってくるの?』など連絡は取り合ってるので、お互いのことを考えている時間は長いかも。そのぶん喧嘩もしますよ。
よくあるパターンですが、私が『ご飯何が良い?』って聞いたら、『なんでもいい』って言われた時とか。そういう時はマネージャーさんに間に入ってもらってます。なんだか申し訳ないなと思いつつも、『旦那に晩御飯なにがいいのか細かく聞いておいて!!』って(笑)」
澤井「マネージャーさんも大変だ(笑)。僕も奥さんいますけど、旦那さんと決めている家庭内のルールなんかはありますか?」
丸山「『どちらかが帰宅したらダッシュで迎えに行く』というのはありますね。もともと本並さんとは監督と選手の関係でしたし、当時は監督だった本並さんが笛で号令をかけることで、選手の私が集合していたので、その名残りがあるのかな。逆に、本並さんが私に駆け寄ってくるのをみると、新鮮な気持ちというか、やり返した気持ちにもなります(笑)」
澤井「お互い元サッカー選手ならではの独特すぎるルールですね(笑)。理由がめちゃくちゃ斬新で面白いです(笑)」
丸山「それから本並さんは、車も後部座席に座るし、一緒に散歩をしていても私の後ろを歩くんです。ゴールキーパーだからか守護神的な感じで、後ろからフォワードの私を見守っていたいという気持ちがあるのかも……!? これは家庭内のルールというか、本並さんの独特な癖ですね(笑)」
澤井「車の中や散歩中でも、サッカーのフォーメーションが形成されているんですね(笑)」
丸山「妊娠する前は、私が運転していると『青やで』って指摘されたり(笑)。でも掃除や洗濯は本並さんがやってくれるんです。そこは夫婦として分担してますね」
澤井「現在はバラエティを中心にタレントとして活躍されていますが、もともとバラエティやテレビは好きだったんですか?」
収録後に共演者と仲よくなる番組
丸山「はい、以前からめちゃめちゃ好きでした! 特にさんまさんが憧れの存在で、幼少期の頃から『あっぱれさんま大先生』を観てました。当時はさんまさんが芸人ではなく、本物の教師だと思い込んでいたんですよ(笑)。こんなに陽気で面白い先生がいるんだと」
澤井「確かに先生感もありますよね~。今でもさんまさんの番組は見ます?」
丸山「もちろんです! 『さんまのお笑い向上委員会』『さんま御殿』『ホンマでっか!?TV』は、毎週チェックしていますね。さんまさんはサッカーも好きで話題も合いますし、初共演してからずっとお世話になっています~」
澤井「めちゃめちゃファンじゃないですか! 過去には『さんま御殿』などにも出演されていますが、実際にさんまさんの印象はどうでしたか?」
丸山「さんまさんと番組で一緒になると安心しますね! ゲストに満遍なく話を振ってくれるし、どんなことを喋っても面白く拾ってくれるので、いつも助かってます。さんま御殿のようなひな壇の仕事だと、喋り出すタイミングが難しかったり、自分のエピソードトークが面白いのか不安になることも多くて。
以前出演した収録で3時間ぐらい1回も喋れず、輪にも入れない時があって落ち込みましたね……。なんで私いるんだろうみたいな(苦笑)。でもさんまさんならそんな心配ないし、いるだけで現場も明るくなりますから」
澤井「いやほんと、さんまさんのいる現場って空気が明るくなりますよね。自然と笑いが起こるというか」
丸山「しかもさんま御殿に出演して思ったのが、色んな人を巻き込みながら番組を盛り上げてくれるので、収録後に演者さんと仲良くなることが多いんです! 収録前は面識ないのに、収録が終わると共演者の人が話しかけてくれて、そのまま世間話しながら一緒に楽屋まで帰ったりとか。あの現場の一体感はさんまさんの力ありきだと思いますね」
澤井「さんまさんの存在感大きすぎますね! 逆にさんまさんがいない現場だと、緊張したり不安になったりするものですか?」
丸山「今でもバラエティの収録はかなり緊張しますよ~」
澤井「PKですら緊張しないのに意外ですね」
丸山「そうなんですよ。なんでテレビの仕事だと緊張するのか考えたことがあるんです。自分なりに解釈したのが、バラエティやテレビの仕事って『自分がいかに爪痕残せたか』『誰かにハマることが出来たか』が分かりづらいからじゃないかと。
これがサッカーの試合だったら、点取れば明確に良い仕事をしたと思われる。バラエティとかひな壇の仕事は手応えを感じづらいですし、いつも収録後はマネージャーさんに大丈夫だったかどうか確認しています」
サッカー選手引退後でいちばん楽しい時間
澤井「確かに正解がないですよね、それでいうと、さんまさんが拾ってくれたり、場を回してくれるのはかなりやりやすいですよね」
丸山「ほんとにいつも芸人さんやMCの方にサポートしてもらってばかりです。実際にテレビの仕事をしていく中で、番組を盛り上げていくのにはチームプレーが必要なんだなと。サッカーと同じですね」
澤井「本当にそうですよね。会話の掛け合いとかテンポとか大事ですし。大阪の劇場に行くと、芸人さんたちがネタを披露した後に、全員集まってフリートークする時間があるんですよ。その時はもうパスの応酬というか、『場を繋ぐ人』『ボケる人』『最後にオとす人』みたいな感じで、役割分担をしたうえで全員でボケまくるんですよ。それで最後に決める人がきっちり締めて終わりみたいな。綺麗な流れが大阪の文化としてできているんですよね」
丸山「演者さんだけでなくて、裏方の人たちもすごいですよね。テレビって1つの番組に何十人何百人も人数をかけててすごいなと。この笑う瞬間にどれだけの労力をかけているんだろうと思いますね」
澤井「僕も『細かすぎるモノマネ選手権』のオーディションをやっているんですけど、若手の芸人さんとかは、何回も来てくださるんですよ。そこでディレクターさんと一緒にネタを見て、ブラッシュアップをお願いして……というのを何回も繰り返す。でも本番はたった1分。そのためにかける情熱というか、一球入魂な感じはありますね」
丸山「私はよくドッキリにかけられるんですけど、落とし穴はまさに一球入魂ですよね。一度、落とし穴のドッキリで、階段の途中に穴があるんですけど、なんか私の体幹が強すぎたのか全然落ちなくて(笑)。それで何回か撮り直してようやく落ちた後、穴から出てきたら周りのスタッフさんの量が尋常じゃなくて。
落ちたことよりもスタッフの量にびっくりしましたね。驚きを通り越して、感動というか、新鮮というか。顔も汚れていたんですけど、むしろ清々しいような不思議な気持ちでした」
澤井「まさか落とし穴に引っかかって感動する人がいるなんて(笑)」
丸山「やっぱ人を笑わせることってそれだけ大変で、大切なことなんだなと実感しました。やっぱバラエティで笑うことで救われている方もたくさんいるでしょうし、私自身は演者ですけど、その仕事に携われてよかったなと感じています」
澤井「じゃあ今後もテレビやバラエティのお仕事を続けていく予定ですか?」
丸山「はい! バラエティーは本当に魅力的な仕事ですし、芸人さんと一緒に仕事しているときが、サッカー選手引退後で一番楽しい時間かもしれないです。これからも同じようなバラエティーの仕事を続けて行けたらいいですね」
澤井「バラエティ番組に関わっている作家としてめちゃくちゃ嬉しいです! ぜひ機会があれば番組でご一緒したいですね。本日はありがとうございました!」
丸山「ありがとうございました!」
●丸山桂里奈(まるやま かりな)
東京都大田区出身。日本体育大学体育学部体育学科卒業。元サッカー日本女子代表として2011年W杯優勝、2012年ロンドン五輪準優勝。引退後はタレントとしてバラエティ番組等に出演。夫は元日本代表の本並健治。
●澤井直人(さわい なおと)
テレビ、YouTube、広告などの放送作家として活動。2022年より対談作家の道へ。『ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ(フジテレビ)』、『タクシー運転手さん一番うまい店に連れてって!(テレビ東京)』、『NEOべしゃり博(フジテレビ)』、『爆笑ヒットパレード(フジテレビ)』などを担当。
https://twitter.com/onaona525(Twitter)
https://www.instagram.com/gui_nao1990/(Instagram)
構成・文/佐藤隼秀 撮影/山田智絵