往年の名作がついに帰ってきた。16年間の沈黙を破り、12月16日に『Dr.コトー診療所』が新作映画として復活したのだ。
「原作は'00年から小学館『週刊ヤングサンデー』、'08年から『ビッグコミックオリジナル』で連載中の山田貴敏氏の同名コミック。医療設備が乏しい離島の診療所に赴任した医師・コトー先生こと五島健助と島民の交流を描いた作品です」(漫画誌編集者)
フジテレビによる実写ドラマ化で人気に
'03年にフジテレビで実写ドラマ化されると、さらに人気が高まることに。
「キャストとして、コトー先生役に吉岡秀隆さん、彼の助手を務める星野彩佳役で柴咲コウさんが出演しました。平均視聴率は19%、最高視聴率は22・3%を記録。好評だったため'04年には特別編が制作され、'06年にもシーズン2が作られました。こちらも最高視聴率25・9%と前作を上回る数字を記録しました」(制作会社関係者)
新作映画にはシーズン2から登場した堺雅人や蒼井優、芸能界を引退していた元子役の富岡涼ら、作品に携わった俳優が勢ぞろいしている。
「今作では新米医師役としてKing & Princeの高橋海人さんも出演。主役級のキャストが多く集まる作品ですが、どの出演者よりも気合が入っていたのが主演の吉岡さんです。かつては『北の国から』の黒板純役のイメージが強かったことに悩んでいたそうですが、『Dr.コトー診療所』で新境地を開いただけに思い入れが強いんです」(配給会社関係者)
公開を喜んでいるのは、作品の舞台となった沖縄県与那国島の住民も同じのようだ。
「16年前の名作ドラマを、再びこの島で撮影してくれるんですから感無量です。11月22日に行われた島での試写会のあとに、島内の飲食店で中江功監督や映画のスタッフ、キャストの皆さんが打ち上げを開催してくれました。吉岡さんや柴咲さんもいらっしゃったので、お疲れさまと感謝の気持ちでケーキを渡したら、吉岡さんは一緒に写真を撮ってくれました」(与那国島の住民)
与那国島は人口約1600人、車を使えば約1時間弱で一周できるほどの小さな島だけあって、撮影を通してスタッフと島民の交流が盛んだったという。
「撮影前の'22年1月ごろ、中江監督が下見に来ていました。そのときも“やっほー久しぶり”と、うちの店に顔を出してくれたんです。今回の映画の撮影期間中は、3回ほどお店に来てくれました。泉谷しげるさんも、島民と同じような格好で過ごされていて、島の人かと思うほど。いつもフランクに話しかけてくれましたね」(島内の居酒屋店主)
エキストラ募集では島内以外からも
映画の公開前から観光客も増えていたようだ。
「6月ごろに映画のエキストラ募集がされましたが、島内の方だけではなく、わざわざ与那国島に来て、参加してくださるファンの方もいました。その後も、ドラマの再放送の効果もあってかロケ地巡りの観光客の方にたくさん来ていただきました。シーズン1や2をリアルタイムで知らないような若い人が増えているのもうれしいですね。この映画をきっかけに、与那国に遊びに来ていただければなによりです」(与那国島観光協会担当者)
キャストやスタッフ、島の住民と多くの人に待ち望まれた大作だが、関係者の間ではある噂がささやかれていた。
「この映画を一番待ち望んでいたのは原作者の山田先生かもしれませんよ。そもそも今回の映画プロジェクトが立ち上がったのは、山田先生側に新たな『Dr.コトー診療所』の企画が持ち込まれたのがきっかけらしいんです。結局、前回の続編という形で完成しましたが、もしかしたらキャストを一新するなど、これまでと違った作品が撮られていたかもしれないんですよ」(フジテレビ関係者)
真相を確かめるため、12月上旬、仕事から帰宅した山田氏に声をかけると、自宅で話を聞くことができた。
「今から5年ほど前に、フジテレビではないとあるテレビ局から“新作の『Dr.コトー』をドラマか映画で作りませんか”というお話をもらったんです。前向きに検討しようと思って、フジテレビ側にも相談したところ“少し待ってもらえますか?”と保留されまして。さすがに他局に作らせたくなかったのか、それからフジで新作企画が動くことになりました。それが今回の映画になったんですよ」
実写化の話が、なぜ直接作者に来たのだろうか。
「多くの漫画作品の版権は、出版社が“代理人”として作者に代わり管理するケースが多いんです。私も以前は『Dr.コトー診療所』を掲載していた小学館に権利を管理してもらっていましたが、'03年や'06年の実写ドラマ制作後に、思うことがありまして、私自身で管理するようになったんですよ」(山田氏、以下同)
新作映画に原作者は「納得できました」
山田氏は以前から、作品に対する権利関係への意識が高く、版権のみならず電子書籍の権利に関しても自身で管理している。そのため、作品の映像化に関するオファーが直接来たということなのだろう。
もし他局で作っていた場合、これまでのキャストはもちろん、作品の主題歌として定着している中島みゆきの『銀の龍の背に乗って』も一新されると考えられるが……。
「それはそれで見てみたいというのもありましたね(笑)。原作のストックはまだまだありますし。なにより続編企画はフジテレビ局内で何度も会議で持ち上がっていたと聞いています。これまで新作が作られなかった理由は、前作や前々作が高視聴率だったため求められるハードルが高くなりすぎたからだそうです。企画する側にもプレッシャーがあったのでしょうね」
さらに時代の変化も大きく影響したようだ。
「シーズン1・2が作られた時代と比べ、ドラマ界全体が予算縮小の流れで大規模なロケが難しくなったこともあるみたいです。『Dr.コトー』は離島に長期滞在しながらの撮影になりますから、撮影費が一般的なドラマより膨大になるようで。前作でも予算超過が多々あったと聞いています」
それらの課題がクリアされ、満を持しての映画公開となったが、原作者の感想はというと─。
「先程話したとおり、地上波ドラマの際は自分は代理人を通していたので発言権もなく不完全燃焼だったところがありました。しかし今回は納得できるまで携わることができたので、自分的にはうれしいですよ!」
著者自らお墨付きを与える作品になったようだが、今後『Dr.コトー』シリーズのさらなる展開はあるのだろうか。
「それはこれからのお楽しみということで(笑)。どうか期待していてください」
フジテレビにも続編映画が企画された経緯について問い合わせたが、
「映画製作の詳細についてはお答えしておりません」
と、明言を避ける回答だった。
16年ぶりの新作映画完成の裏には、思いがけない巡り合わせがあった─。
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【出演】
金丸デスク(副編集長)
【パーソナリティ】
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