もちは本来、お正月などハレの日の食べ物だったが、今では日常的に食べるように。その理由は、パックタイプのもちの普及。
「パックのもちは賞味期限が長いので、常備しておくと便利。忙しい朝に手軽に食べられるので、朝食にすることもあります」と話すのは、日本料理店の店主・林亮平さんと、フードプロデューサーの石川範子さん。
忙しい朝にピッタリ!正月以外も食べよう
今回はおふたりにパックの切りもち(角もち)15種類と丸もち5種類を実食してもらい、ランキングしてもらった。切りもちは焼いて、丸もちはゆでて風味やコシ、香りなどを総合評価した。
「計20種類を食べ比べましたが、パックもちの2大メーカーといえるサトウ食品と越後製菓のクオリティーの高さに驚きました。
もち米の風味や使いやすさを含めてトータルでよくできていると思います。また、味や質の良しあしが、みごとに価格に反映されている点も興味深かったですね」(林さん&石川さん、以下同)
ちなみに、雑煮に向いているもちは、適度な弾力があり、あまりのびすぎない歯切れのいいもちだそう。お正月の雑煮に入れるもち選びの参考にどうぞ。
※商品の本体価格は編集部調べ(2022年11月現在)
【角もち10位〜6位】悪くはないが上位には敵わない
角もちは種類も多く、ふたりも「これまでのランキングで一番難しいかも……」(石川さん)「原材料が同じせいか、違いが微妙すぎますね(苦笑)」(林さん)と今回はジャッジが難航。それでも食べ比べてみることでそれぞれの違いが見えてきた。
弾力はあるが風味の印象は薄い
〈第10位〉妙高山湧水仕込み 新潟県産こがねもち100% 越後もち
和鑠/500g入り550円(100gあたり110円)
「弾力があって雑煮向きで、もちを食べている満足感はあるが、他と比べてもちの風味の印象は薄め」(林さん&石川さん、以下同)
もちらしい歯ごたえがないのが残念
〈第9位〉魚沼産こがね米100% 黄金もち
マルシン食品/400g入り350円(100gあたり87円)
「もち米の甘みもありコスパもいいが、のびすぎるほどやわらかく、もう少し歯ごたえがあるといい」
特徴がなく惜しくも下位に
〈第8位〉国内産もち米100% 越後生一番 切り餅
越後製菓/400g入り378円(100gあたり94円)
「越後製菓のスタンダードな切りもちで、味も香りも平均的」
人気商品ながら雑煮には少しやわらかすぎ
〈第7位〉国内産水稲もち米100% サトウの切り餅
サトウ食品/400g入り373円(100gあたり93円)
「サトウの切り餅の代表的な商品。万人に受ける味でなめらかに伸びるか、やわらかすぎるのが気になる」
トップメーカー、さすがのおいしさ
〈第6位〉サトウの切り餅 新潟県産 こがねもち
サトウ食品/700g入り798円(100gあたり114円)
「上位の切り餅ほどではないものの、もち米特有の風味があっておいしく、ほどよい歯ごたえもある」
【角もち5位〜3位】「もち米の風味」良いものが上位に
「高品質のもち米」と言われている品種の豊かな風味が持ち味の商品がランクイン。
高級もち米らしい味わいアリ!
〈第5位〉新潟魚沼産 こがね餅
越後製菓/400g入り478円(100gあたり119円)
「もち米の甘みと適度な弾力があって歯切れもよく、高品質のもち米といわれるこがねもちの良さが出ていると思う」
特別な個性はないものの普通っぽさと地元感がナイス♪
〈第4位〉山形県産ひめのもち100%使用 おいしいおもち
城北麺工/350g入り398円(100gあたり113円)
「際立った特徴はなく平均的なおいしさだが、クセがないぶん、どんな料理にも合いそう。パックもち市場は新潟県のメーカーが優勢のなか、山形県のメーカーが、県内産のもち米を使用して作っている地元感も好印象」
もち米の風味豊かで磯辺巻きもおすすめ
〈第3位〉国内産水稲もち米100% 切りもち
前原製粉/350g入り450円(100gあたり128円)
「今回食べ比べた中では唯一、西日本の兵庫県姫路市のメーカー。ほどよいのびで歯ごたえもあるので雑煮もいいが、もち米の味や香りがしっかりあるので、サッとしょうゆをつけた磯辺巻きなど、シンプルな食べ方もよさそう」
ふっくら焼ける「切り込み」にメーカーの工夫あり!
サトウ食品のもちの表面には十字の切れ目が入っていて、焼いたときにふっくらとふくらむ。また、十字の切れ目はひとつを小さくカットしやすいので、お年寄りや子どもが食べるときに便利。
越後製菓のもちには側面に切り込みが入っているので、こちらもふっくらとした焼き上がり。メーカーの工夫が光る。
【角もち2位〜1位】業界トップメーカーはやっぱり美味い!
角もちのベスト2はもち業界トップメーカーの高価格ラインが優勢!テレビCMでもお馴染みのメーカーが堂々のランクイン!
もちらしい弾力と風味があり、雑煮にするならコレ!
〈第2位〉新潟県産特別栽培米 切り餅
越後製菓/400g入り398円(100gあたり99円)
「今回食べ比べた越後製菓の3種類のパックもちの中では2番目の価格帯だが、原料(新潟県産『わたぼうし』)にこだわっただけあって、1位のサトウの切り餅とおいしさは遜色なし。ほどよいのびが雑煮にぴったり!」
超ド定番メーカーの高価格帯商品が堂々1位☆
〈第1位〉サトウの切り餅 新潟魚沼産こがねもち 至高の餅
サトウ食品/300g入り415円(100gあたり138円)
「高品質と定評のある『がねもち』というもち米を使用した商品。同じサトウ食品の6位と7位のもちと比べると、ほどよい歯ごたえがあり、噛みしめるほどに、もち米ならではの風味を感じる。
適度に弾力があるので雑煮に入れてもどろりとしにくい。表面に十字の切り目があり、子ども用などに小さく切り分けやすい点も高評価ポイント」
高いもちはうまいのか?1個100円弱のもち実食!
今回食べ比べた15種類の切りもちは、100gあたり51円~138円だが、番外で100gあたり187円の高級もち(「富山県産新大正もち米 杵つきおもち」日の出屋製菓産業/400g入り750円)も食べてみた。
「1位のサトウの切り餅の高価格帯でも1個70円弱だが、これは100円近く。だが、味にそれほどの違いは感じなかった。いつもより、ちょっと高価格のパックもちを買うなら、サトウの至高の餅で満足できそう」
【丸もち3位〜1位】全体的にパックもちの難点が目立つ
西日本ではメジャーな丸もち。特に雑煮ではゆでて食べる地域が多いが、ゆでることによりパックもちならではの難点が目立った。そのなかでも1位を獲得した丸もちは、その難点をしっかりと克服していた。
一度は食べてみたい関西メーカーの丸もち
〈第3位〉国内産水稲もち米100% まるもち
前原製粉/1kg入り800円(100gあたり80円)
「食べ比べた5つの中で唯一、丸もち文化とされる関西のメーカー。もちの風味に特別な印象はないが、ゆでた丸もちは白玉っぽいので、ぜんざいにしてもいいかも」
もち米の甘みもあってコスパよし!
〈第2位〉国内産水稲もち米100% 越後丸もち
マルシン食品/360g入り259円(100gあたり71円)
「下位の商品と比べると、パック臭のような風味はほとんどなく、もち米特有の甘みも感じる。買いやすい価格なので、コスパを考えると満足できる」
パックの丸もちを買うならコレ☆
〈第1位〉国内産もち米100% 越後生一番 まる餅
越後製菓/400g入り378円(100gあたり94円)
「今回食べ比べた丸もちは、ゆでたせいもあるのか、焼いた角もちに比べるとパックもちの難点が目立った感がある。あまりのびがなく、例えるとパックご飯独特のパック臭のような風味が気になったが、そんななか、越後製菓の丸もちはパック臭がなく、もちらしい風味があった」
日本料理のプロに教わる【雑煮レシピ】
【角もちレシピ】簡単“極”うま雑煮<江戸雑煮>
[材料(2人分)]
・切りもち……2個
・小松菜……1/4束
・鶏もも肉……1/4枚
・ゆずの皮……適量
・吸い地
だし汁……400ml
薄口しょうゆ……小さじ1
塩……小さじ1/5
[作り方]
〈1〉小松菜は湯がいて水に落とし、水けをしっかり絞り、食べやすい大きさに切る。薄口しょうゆ小さじ1(分量外)で軽くあえておく。
《ここがプロテク》
しょうゆであえて水っぽさ減!
〈2〉鶏肉はひと口大のそぎ切りにして、軽く塩(分量外)をふっておく。
〈3〉鍋に吸い地のだし汁を入れて沸かし、鶏肉を入れて火を通し、アクを取る。
〈4〉切りもちを焼いて器に入れ、鶏肉と小松菜を盛る。3のだし汁に薄口しょうゆと塩を加えて温めた吸い地を張り、ゆずの皮をあしらう。
【丸もちレシピ】レンチンでかんたん<白みそ雑煮>
[材料(2人分)]
・丸もち……4個
・大根……2cm
・にんじん……2cm
・白みそ……48g
・水……200ml
・だし汁……適量
・溶きがらし……適量
[作り方]
〈1〉大根とにんじんは丸く型抜きして厚みを半分に切り、耐熱皿に並べる。水をふりかけ、ラップをかけて電子レンジ(600W)で2分加熱する。やわらかくなったら薄く塩(分量外)をふる。
〈2〉白みそと水を合わせ、半量程度になるまで煮詰めたら、だし汁を加えて400mlにする。
〈3〉丸もちはゆで、やわらかくなったら大根とにんじんとともに器に盛る。2を注ぎ入れ、溶きがらしをあしらう。
【ゆでるかわりに電子レンジを使ってもOK!】
袋から出したもちを耐熱容器に入れ、浸るくらいまで水を加え、電子レンジで袋の表示時間どおりに加熱すると、鍋でゆでるよりラク!
丸もちは角もちとどう違う?
「東の角もち、西の丸もち」と言われるように、関ヶ原辺りを境にして、例外はあるが東の地域は角もち、西の地域は丸もちを雑煮にすることが多いとされている。
日本ではもともと、つきたてのもちを丸く成形していたが、江戸時代、のしたもちを四角く切る角もちが生まれたという説がある。また、雑煮にするとき、角もちは焼き、丸もちはゆでる地域が多く、今回も丸もちはゆでて食べ比べた。
残念ながら圏外になった角もち
◆岐阜県産たかやまもち使用 杵つき切餅
前原製粉/500g入り498円(100gあたり99円)
「雑煮向きだが、粉っぽい舌ざわりが惜しい」
◆新潟県産こがねもち100% 杵つき仕立て こがねもち
マルシン食品/750g入り782円(100gあたり104円)
「パックご飯のパック臭のような風味が気になる」
◆国内産水稲もち米100% 低温製法米 生きりもち
アイリスフーズ/1.8kg入り927円(100gあたり51円)
「一番買いやすい価格だが、味も食感もそれなり」
◆宮城県産もち米使用 低温製法米 みやこがねもち
アイリスフーズ/400g入り345円(100gあたり86円)
「食感はもちっとしているが、味や香りの印象が薄い」
◆佐賀県産特別栽培米 ひよくもち使用 ひよく切り餅
前原製粉/650g入り473円(100gあたり72円)
「雑煮に入れると、どろりとしてしまいそうなやわらかさ」
残念ながら下位になった丸もち
◆低温製法米水稲もち米100% 大判まるもち
アイリスフーズ/600g入り586円(100gあたり97円)
「大きくて食べごたえはあるが、もちの味がイマイチで残念」
◆国内産水稲もち米100% サトウのまる餅
サトウ食品/400g入り398円(100gあたり99円)
「パックもちのトップメーカーながら、丸もちは惜しい」
ジャッジしてくれた食のプロは……
取材・文/草柳麻子 撮影/齋藤周造