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 血糖値、コレステロール値、がんリスク……健康を気遣ううえで、気をつけるべきポイントは多い。しかし、「健康に悪そう」とはわかっているのに、ついつい日常的に口に運んでいる食べ物はないだろうか?

「実は、人間は“毒”になるものが大好き。控えなければいけないのに、お酒や炭水化物などはおいしくてつい多く摂取しがちです。一方で、生きるために必要な食べ物であっても食べすぎは逆効果。何でもほどほどの摂取が肝心です」

 そう語るのは、薬剤師で人体と毒の関係にも詳しい船山信次先生。いわく、少しでも命を守りたければ、中毒や病気を招くような食べ物は控える意識が必要という。

識者が教える不健康な食べ物33品

「食品添加物にも注意が必要。殺菌や長期保存の効果を得るために、現代では多くの食品に入っていますが、健康を損なう危険があるものも多い。どういう商品にどのようなものが使われているのか、よく知ることが大事です」

 と管理栄養士の圓尾和紀先生が教えてくれた。スーパーで成分表示を気にかけることも健康を守ることにつながるのだ。

 ここで健康の専門家たちが気にする“危ない”食品をチェックしてみよう。

発がん性物質を含む食品は意外に多い

「がんを招く原因は、日頃食べている食品にも含まれています」

 と、AGE牧田クリニック院長の牧田善二先生は話す。体内では毎日およそ1兆個の細胞が生まれ変わり、DNAの設計図に従ってコピーされ作られている。がんは、この遺伝子情報が狂わされることでできる病気だ。

 遺伝子にエラーを引き起こすリスクのある成分で代表的なのが、揚げる、焼くなどの高温調理で作られた料理に発生する「アクリルアミド」という化合物。整形外科医の歌島大輔先生によると「これは国際がん研究機関が公表する発がんリスク分類でも『グループ2A』という上位の位置づけ。少し食べたくらいで身体に異変が生じるかは未知数なのですが、食べすぎがよくないことは明らか」とのこと。

 農林水産省によれば、じゃがいもを揚げたものや、小麦粉を使った焼き菓子などに高濃度に含まれている。

 アクリルアミドとあわせて警戒したいのが、同じく高温調理で発生する「AGE」。この厄介さを訴えるのはイシハラクリニックの石原新菜先生。

「これは糖質とタンパク質が熱で化合した物質で、体内のコラーゲンと結合し、若々しさを奪います。シワやたるみなどの老化につながると悪名高く、動脈硬化など万病の原因にもなります。こんがりと焼けた食べ物に多く含まれるので、私はなるべく避けています」

 また、魚卵や肉の加工食品によく使われる添加物「亜硝酸ナトリウム」も警戒が必要と、銀座予防医療クリニック院長の青木竜弥先生は言う。

「これを使うと肉類の筋肉色素と反応して食欲をそそるピンク色に色づきます。しかし、消費者からすれば悪魔のクスリ。肉類のタンパク質に含まれる『2級アミン』と反応して、『ニトロソアミン類』という発がん性物質に変化します。このリスクは常に考えたいですね」

WHOが発表した発がん性のある食材グループ

【IARC発がん性分類】 *IARC……世界保健機関(WHO)の中にある国際がん研究機関(International Agency for Research on Cancer)
グループ1/人に対して発がん性がある
 ……加工肉・たばこ・アルコール飲料
グループ2A/人に対しておそらく発がん性がある
 ……赤肉・熱い飲み物・アクリルアミド
グループ2B/人に対して発がん性がある可能性がある
 ……ガソリン・有機鉛
グループ3/人に対する発がん性について分類できない
 ……コーヒー・蛍光灯・カフェイン

いつものあの食材にも中毒リスクが!

 結局のところ、すべての食べ物は摂取しすぎればなんらかの毒性があると話すのは、船山先生だ。

「“毒”が含まれるものでも、ほんの少しなら殺菌や身体の機能活性化の薬になることもあります。しかし、致死量があることを念頭において、口に入れる量を加減する必要があるのです」

 代表的なのはコーヒー。中毒で死亡事例もあるカフェインが多く含まれていることは誰もがよく知ることだろう。少量なら体内で代謝されるので問題はなく、眠気覚ましにもなるが、依存して飲みすぎるのは命の危険にもつながる。

 圓尾先生は、果物などの虫食いやカビを防ぐ農薬でも中毒を起こす事例があると話す。

「日本の農園では『ネオニコチノイド系農薬』という殺虫剤がよく使われているのですが、これは子どもの発達障害などのリスクが考えられています」

 中でもイチゴやブドウなど、虫の被害を受けやすいデリケートな果物は散布される回数も多い傾向にあるので要注意だそうだ。

 圓尾先生は他にも、輸入フルーツの残留農薬を懸念する。

「アメリカなどでは、ポストハーベストという、収穫をしたあとに表面にまく農薬が食品添加物として認可されています。OPP、TBZ、イマザリルなどと呼ばれるこれらの成分は、ホルモン機能を乱し、がんや奇形の原因にもなりうるという報告もあります」

 石原先生は、人工甘味料の危険な依存性を語る。

「自然の糖ではないのに、舌に強い甘さを感じさせ、クセになるのがアスパルテームなどの人工甘味料。なかでもアルコール度数の強い缶チューハイなどは、するすると飲めて歯止めがきかなくなることも。その健康リスクも含め、ほとんど薬物といっていいです」

 人工甘味料は、近年の研究で腸や肝臓の機能に悪影響を与えたり、がんのリスクを高めるといった報告もあるが、その危険性の全貌は未知数。摂取しすぎないよう、注意は不可欠だ。

危うさが未知数な食べ物

習慣や体質によって有害になる食べ物

 毎日摂取する食べ物が健康状態を左右するが、中でも糖質や、脂質などの代謝が追いつかず、体内にたまってしまうことは、生活習慣病の大きな要因だ。

「やはり怖いのは糖尿病。甘いお菓子全般に加え、白米、うどん、パンなどの炭水化物は僕も食べすぎないように心がけています。特に、白米は1日に食べる量を茶碗1杯増やすごとに糖尿病リスクが11%上がるとする論文もあります」と歌島先生は話す。

 他にも気をつけたいのは脂質。代表的なのが、マーガリンやスプレッド、ショートニングなどの油脂に含まれるトランス脂肪酸だ。

「市販のケーキや揚げ物などによく使われるトランス脂肪酸は、とると悪玉コレステロール値が上がりやすくなります。動脈硬化に始まり、心筋梗塞・脳梗塞・認知症などいろいろな病気のリスクを高めます」と、石原先生。

 また、料理の味つけにも不健康がひそむ。圓尾先生は、顆粒だしなどのうま味調味料の影響について話す。

「よくないのは、感じるうまみが強いことで、味覚が狂うこと。あっさりした自然な味つけでは満足できなくなり、塩分や油分の多いものや加工食品などに走ってしまうんです」

 一方で、船山先生は激辛料理が好きな人にも注意を促す。

「例えば唐辛子なども、少量なら代謝や血流をよくする健康効果がありますが、食べすぎると辛味成分のカプサイシンが食道の粘膜に炎症を起こしたり、高血圧や排尿障害の原因にもなります」

 他にも、生活のなかで常用薬を飲んでいる人には、飲み合わせで危険を招く食べ物も出てくるという。船山先生がその代表を挙げる。

「グレープフルーツに含まれるフラノクマリン類という植物成分と相性が悪い薬は多いです。例えば、血圧を下げるカルシウム拮抗薬や、コレステロール値を下げるスタチン系薬剤は副作用が強く出てしまうので絶対ダメ。それから、健康食材の代表である納豆も、『ワーファリン』という血液をサラサラにする薬を飲んでいるときに食べると、薬の効果を減じるのでよくない。薬剤師の服薬指導に従ってください」

食べすぎ注意な食べ物

積極的に食べると吉!毒抜きに効果アリの食材

 ここまで、健康のプロがこぞって避ける食べ物を紹介してきたが、一方でプロたちが摂取を心がけている食品もある。

 石原先生は、腸内の善玉菌を増やす食品を積極的に選ぶ。

「善玉菌は、発酵食品に多く含まれ、食物繊維をエサにして増えます。そのため、これらを一緒にとることがポイントです」

 善玉菌のなかには、やせ菌と呼ばれるものも。これは悪玉菌の増殖を抑え、脂肪を燃焼する働きを持つ健康のよき友だ。また、善玉菌は脳内でやる気や幸福感をうながすドーパミン、セロトニンなどのホルモンを作りメンタルも元気にしてくれるという。

 食物繊維も善玉菌を育てるエサとなる大切な栄養素。余分な糖や脂肪を吸着して代謝をよくし、血糖値の上昇も緩やかにしてくれる。健康にはもちろん、美容効果も大だ。

 管理栄養士の圓尾先生がすすめる献立は和食。

「魚介類、豆類、海藻、野菜と、ヘルシーな栄養素の宝庫です。昔ながらのレシピを手本に、かつお節や昆布、しょうゆなどの自然な味つけにすれば減塩効果も得られます」

 今どき、化学調味料や添加物を完全に避けるのは難しいが、体外への排出が十分にできれば怖がる必要はない。代謝や解毒を行うのは肝臓なので、それを働かせる、良質のタンパク質やビタミン、ミネラルなどをとることが必要だ。

 良質な栄養源として、魚を積極的に食べていると話すのは歌島先生。

「1日60g魚を食べると、死亡リスクが12%減るという論文もあるんです」

 また青木先生は、日頃から食生活のバランスを見直すことは、さまざまな食べ物にあふれた現代だからこそ重要だと話す。

「現代人の多くは、炭水化物、タンパク質、脂質の三大栄養素による摂取カロリーは十分なのに、特定の栄養素が不足する新型栄養失調という問題を抱えています」

 ビタミン、ミネラル、食物繊維などの体内の環境を整える成分が慢性的に足りていない状態なのだという。過剰にとりすぎているものは引き算して、不足しがちな栄養を補う意識を持つことが重要だ。

 他には食材の調理法も健康に影響すると牧田先生。

「揚げ物や焼き物にはどうしてもAGEが発生してしまいますから、肉や魚などは刺身にしたり、ゆでるか蒸してさっぱり食べるのがおすすめです」

 毎日の献立を考える際の基本として、覚えておきたい。

命のプロが積極的に食べている「健康食材」
★発酵食品(みそ・ヨーグルト・納豆など)
→さまざまな発酵食品を食べることで、善玉菌の種類も増えて腸内がキレイに。

★食物繊維(海藻類・根菜類など)
→食物繊維を1日25g~29gとると、さまざまな健康リスクの減少効果が得られる

★MCT(中鎖脂肪酸)オイル
→体内でのエネルギー変換効率が良く、身体がぽかぽかになってダイエットにも効果的。

★青魚(ぶり、さんま、さばなど)
→EPA、DHAが豊富な青魚を1日に85g~170g食べると、心筋梗塞のリスクが低下。

★お酢
→悪玉菌を減らし、内臓脂肪の燃焼や血圧上昇の抑制にも効果アリ。

お話しを伺ったのは……

牧田善二医師●AGE牧田クリニック院長。糖尿病、生活習慣病、肥満治療の専門医で延べ2万人以上の患者を診ている。著書に『医者が教える食事術 最強の教科書』(ダイヤモンド社)など。

青木竜弥医師●銀座予防医療クリニック院長、一般社団法人国際予防医療協会代表理事。論文・文献から収集した最新医学を親しみやすく紹介。YouTubeにて「Dr.青木竜弥の健康授業」を運営中。

石原新菜医師●イシハラクリニック副院長、ヒポクラティック・サナトリウム副施設長、健康ソムリエ理事、ロングライフラボ理事。診療のかたわら、テレビ・ラジオ、雑誌などのメディアでも活躍中。

歌島大輔医師●整形外科医。「エビデンスをわかりやすく」をモットーに情報発信。YouTubeチャンネル「整形外科医 歌島大輔」は登録者数10万人超え。本記事の解説動画も配信中。

圓尾和紀管理栄養士●病院勤務を経てフリーランスとして独立。YouTubeチャンネル「カラダヨロコブ」は登録者14・9万人。著書に『体と心の不調が消えていく ゆる食事術』(マイナビ出版)など。

船山信次薬剤師●薬剤師・薬学博士。日本薬科大学教授などを経て、現在、日本薬史学会副会長・日本薬科大学客員教授。著書に『毒と薬の世界史』(中央公論新社)など。

(取材・文/オフィス三銃士)

 

発がんリスクの高い食べ物

 

危うさが未知数な食べ物

 

食べすぎ注意な食べ物