「栗原家のおでんは大根を食べるためにあります。なぜなら母が大好きだから。じっくり芯までやわらかく炊いて、だしを吸わせた大根はわが家のごちそうです」
大根を味わい尽くす母から受け継いだ味
にこやかに話す栗原心平さんの母は、料理家の栗原はるみさん。子どものころは、夕飯がおでんの日でも10品以上のおかずが食卓に並んだ。
「とにかくおかずが多い家でした。おでんも、冬に限定せずおかずのひとつとしてよく登場していましたね」
栗原家のおでんのメイン具材といえば、鶏の手羽先や手羽元と大根。練りものなども加えてたっぷり煮込んだものを、3日間くらいかけて食べていた。
「母が作ったおでんの大根は厚さが10cmぐらいあったんじゃないかな。でも箸で割っても白くないんです。中までしっかり煮汁が染みていて、やわらかいけれど煮崩れない絶妙な加減でしたね」
具材を食べきった最後にもだし味を活いかしたお楽しみが。
「煮汁とホロホロにほぐれた鶏肉がなじんで、それを白ご飯にかけて食べるのが大好きでしたね」
いつも食べきってしまう大根だが、たまに残ったときは片栗粉をまぶして揚げ物にアレンジも。心平さんはそこにさらに大根おろしを添えてダブルで大根を味わうのだそう。
「おでんをつまみに麦焼酎を飲みながら食べるのが最近の楽しみ。具材にかぼすをしぼると、さっぱりして香りも立ちますよ」
【とろける大根たっぷりおでん】
材料/作りやすい分量
・大根……900g
・下ゆで用〔水……7と1/2カップ、塩……大さじ1〕
・鶏手羽先……8本
・さつま揚げ……8個
・ちくわ……6本
・結び白滝……10個
・焼き豆腐……2丁
・つみれなど……適量
A〔かつおだし……10カップ、酒……1/2カップ、塩……大さじ1〕
B〔薄口しょうゆ……1/2カップ、みりん……大さじ3、砂糖……大さじ3〕
・和がらし……適宜
【作り方】
(1)大根は厚めに皮をむき3cm厚さの輪切りにする。鍋に下ゆで用の水、塩を入れて火にかける。しっかりと沸いたら大根を加え、中火で30~40分ほどゆでる。竹串で大根をさしてスッと入るくらいになったらざるに上げる。
(2)鶏手羽先は関節に包丁を入れて、先端と手羽中に分ける。ちくわは斜め半分に、焼き豆腐は食べやすい大きさに切る。
(3)厚手鍋に大根、手羽先、Aを入れて中強火にかける。煮汁が沸いたら、少しだけ開けて蓋をして弱火で1時間煮る。
(4)結び白滝、焼き豆腐、Bを加え、少しだけ開けて蓋をしてさらに30分煮る。
(5)大根にしっかりと味が染みていたら、ちくわ、さつま揚げ、つみれなどを加え、ひと煮立ちさせる。器によそい、お好みで和がらしを添える。
《POINT》大根のゆで加減は竹串で確認。じっくり下ゆですることで芯までやわらかくなり、煮たときの味染みもよくなる。
おでんのよき相棒【魚介ときゅうりのぬた】
材料と【作り方】
ゆでダコ(適量)は薄くそぎ切りにし、わかめ(適量)は水で戻し食べやすい大きさに切る。
きゅうり50gは薄い輪切りにし塩小さじ1/5をまぶす。15分ほど置いて水分がにじんだらしっかりしぼる。みょうがは縦5mm幅に切り、すし酢大さじ1を加えて1時間ほど漬ける。
器にすべて盛りつけ、白みそ・すし酢各大さじ1と1/2、砂糖小さじ2を混ぜた酢みそをかける。
最後の煮汁も主役に。おでんはうまみの宝庫
「寒さが深まって大根がおいしくなると、おでんの季節だなと感じます」
小林まさみさんの記憶に残るのは“黄金鍋”で煮込まれた実家のおでん。
「両親が鮮魚店を営んでいたので、練りものや手作りのいわしつみれ、ゆでたタコなど魚介のおでん種がいろいろ入っていましたね。大きな金色の鍋を家族5人でわいわい囲んでいました」
結婚しておでんを作るうちに追加したのは手羽先。練りもの類の魚に肉を組み合わせると、異なるうまみで1+1が2以上になると実感した。塩やしょうゆなどは控えめに、だしと食材の持ち味を活かすベースができた。
「だしは昆布とかつお節です。昆布だしが肝心なので鍋に昆布と水を入れたらごく弱火で20〜30分煮出し、その間に具材を用意。
大根はゆでずにレンチン、ロールキャベツはほかの素材の味を損なわないように肉だねを詰めません。煮込むうちに鶏肉や練りもののうまみが染みわたります」
たしかにロールキャベツをかじるとトロッとやわらかく甘さが広がり、肉だね不要のおいしさ。最後に残った煮汁は、義父まさるさんのリクエストで絶品炊き込みご飯に。
「おでんはみんなが喜んで、2日続いても飽きない料理。具材を変えておもてなしに登場させたり、気負わず作ってもらえたらいいですね」
【手羽先と具なしロールキャベツのおでん】
材料/4〜6人分
・鶏手羽先(骨に沿って切り込みを入れる)……12本
・大根……1/2本(600〜700g)
・キャベツ……8枚(約500g)
・ゆで卵……4個
・さつま揚げ……6枚
・いわしつみれ……6個
・ちくわ(斜め4等分)……大1本
・溶きがらし……適量
A〔だし汁……7カップ、酒……1/4カップ、砂糖……大さじ1/2、しょうゆ……1/4カップ、塩……小さじ1〕
【作り方】
(1)大根は2cm厚さで8枚輪切りにし、厚めに皮をむいて1/3くらいの深さまで十字に切り込みを入れる。直径25cmの耐熱皿に並べてふんわりラップをかけ、レンジで8分加熱する(竹串が通る程度が目安。かたければ延長する)。
(2)大きいラップを十字に広げてキャベツの葉を広げた状態でふんわり包み、レンジで3分加熱、裏返して3分加熱する。取り出して粗熱をとり、手前、両端を折って巻き、ようじで留め、8個作る。
(3)土鍋に大根、鶏肉、ロールキャベツを順に重ねて入れ、混ぜたAを注ぎ強火にかける。ひと煮立ちしたらアクを取り、蓋をして弱火で40分ほど、大根がやわらかくなるまで煮る。
(4)盆ざるに練りものを広げ、熱湯をかけて油抜きする。大根が煮えたら、ゆで卵とともに隙間に入れ、同様に15分煮る。お好みで溶きがらしを添えていただく。
《POIMT》具なしロールキャベツは、手前の芯の部分を折ってから両端をたたんでクルクル巻き、真ん中をようじで留める。
翌日はいつもの!【おでんの煮汁で炊き込みご飯】
材料と【作り方】
米2合(360ml)は洗って30分水につける。水けをきった米と冷ましたおでんの煮汁430mlを炊飯器の内釜に入れて普通に炊飯する。
炊き上がったら、おでん種の残り(さつま揚げ1枚とちくわ1切れを1cm角に切ったもの、鶏手羽先1本の骨を取ってほぐしたもの)を混ぜる。
こっくりと煮込まれたみその濃厚な味と香り
茨城県出身のほりえさん。「北関東はちょっと甘めに味つけした料理が多いんです」の言葉どおり、自慢のおでんはみその塩気と砂糖の甘みが溶け合った絶妙な甘じょっぱさ。
色の濃いみそを使うと、長時間火にかけなくても味にコクが出てしっかり煮込んだような色になる。「みそ味の大根は絶品です。厚めに皮をむくととろけるような食感になりますよ」
ご飯はもちろん日本酒と楽しむこともあるそうで、七味唐辛子や練りがらしで“味変”するのもおすすめ。
【甘辛みそおでん】
材料/3〜4人分
・大根……1/3本
・鶏手羽元……6本
・さつま揚げ……4枚
・ちくわ……2本
・こんにゃく……1枚
・油揚げ……3枚
・うどん(チルド)……1玉
・ゆで卵……2〜4個
・かんぴょう……適量
・だし汁……5カップ
A〔赤みそ、みりん、酒……各大さじ5、砂糖……大さじ4、赤唐辛子……1本、塩……少々〕
【作り方】
(1)大根は皮をむいて厚さ2.5cmの輪切りにする。面取りをして十字に切り込みを入れ、ひたひたの水と米大さじ1(または米のとぎ汁)を入れて15分煮る。鶏手羽元はひたひたの水からゆでてゆでこぼす。
(2)油揚げは半分に切って袋状にし、うどん(1玉を6等分にカット)を入れてかんぴょうで結ぶ。ちくわ、こんにゃくは食べやすい大きさに切る。
(3)土鍋にだし汁、A、すべての具材を加えて20分煮る。
《POINT》うどん巾着の作り方。チルド麺を袋から出して包丁でカットし、油揚げにサッと入る。煮るとみそ煮込みうどんのような味に!