12月22日にいよいよ最終回を迎えるドラマ『silent』(フジテレビ系)。
「川口春奈さん演じる主人公・青羽紬の高校時代の恋人で、中途失聴者になってしまう佐倉想を演じるSnow Manの目黒蓮さんや、彼に手話を教えた奈々を演じる夏帆さんの演技への評価が特に高いですね。目黒さんはグループでの活動のほか、NHK朝ドラ『舞いあがれ!』に出演中とあり、移動時間にも手話の練習をする多忙ぶりです」(テレビ局関係者)
俳優のキャスティングが決まったあとに“当て書き”で脚本が書かれていることもあり、全員がハマり役になっているが、意外にも当初は違う役者がキャスティング候補に挙がっていたという。
戸川湊斗役の第1候補
「村瀬健プロデューサー(以下、村瀬P)は、'16年に手がけたドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』でメインキャストを演じたAAAの西島隆弘さんのことを気に入っており、川口さんが主演に決まった際、物語序盤の恋人である戸川湊斗役の候補に考えていたのは西島さんだったそうです」(フジテレビ関係者)
その後、'21年に放送されたスペシャルドラマ『教場』(フジテレビ系)を見て、目黒の演技にひと目惚れし、元カレの想役をオファー。
「湊斗と想は高校の同級生という設定だったため、目黒さんと西島さんの年齢差はストーリー的に違和感があると断念。20代の役者を探したところ、テレビ朝日系で放送されていたドラマ『六本木クラス』での好演を見て、鈴鹿央士さんにオファーしたとか」(同・フジテレビ関係者)
手話がリアルだと絶賛されている夏帆が演じる奈々役は、名前の同じあの女優が第1候補だったようだ。
ドラマを制作しないスタッフを集めて生まれた苦悩
「清野菜名さんにオファーしたものの、3月に第1子を出産したばかりとあり、断られてしまったそうです。村瀬Pは『信長協奏曲』での夏帆さんも高く評価していたため、清野さんが無理なら彼女しかいないと考えたみたいです」(同・フジテレビ関係者)
緻密なストーリーの伏線や映画のように美しい映像も、『silent』が人気の理由のひとつ。村瀬Pもウェブメディアのインタビューで、
《カメラマンや、照明、録音などにはCMや映画畑のスタッフを集めました》
と語っているように、普段はドラマを制作しないスタッフが集められたことで、こんな苦悩も……。
「ドラマよりも余裕のあるスケジュールで進行することが多い映画畑のスタッフと、村瀬Pのこだわりの強さもあり、スケジュールがかなり押しているんです。第1話のラストで、元カレの想の耳が聞こえなくなったことを知り、紬が涙するというシーンは30分以上かけて撮影。川口さんは10テイクほどトライしたといいます」(制作会社関係者)
強いこだわりが作品のクオリティーの高さにつながっているのは間違いないが、一部の俳優やスタッフたちからはブーイングも起きているようだ。
「かつては徹夜も当たり前だったテレビ業界ですが、'19年4月に施行された『働き方改革』もあり、深夜でなければ成立しない撮影以外は、終電前に終わるのが一般的になりました。しかし『silent』は撮影が深夜に及ぶこともザラ。今期いちばんの話題作になったことで俳優やスタッフたちもモチベーションを維持できていますが、撮影も終盤に差しかかり、みんなかなり疲弊していますね」(同・制作会社関係者)
主人公が同じ服を何度も着回すなど、地に足のついた現代の若者をリアルに描いていることも、視聴者の共感を呼んでいるポイント。しかし、村瀬Pのお金のかけ方はというと……。
「撮影に使用する照明などの機材は映画で使用するものを使っていたり、小道具にもこだわりの高級品が使われていたりするため、通常のドラマより経費がかなりかかっています。加えて撮影が深夜に及ぶことも珍しくないため、タクシー券も次から次に使用している状態。局側がクランクアップまでにこれでやりくりしてほしいと、まとまった数のタクシー券を村瀬Pに渡したそうなのですが、序盤の撮影ですべて使い切ってしまい、局の上層部から注意を受けたと聞いています」(前出・フジテレビ関係者)
“劇場版”製作の可能性
メディア研究家の衣輪晋一さんは、村瀬Pのこだわりの強さについてこう語る。
「作品への愛が強いため、小道具などの細部にもこだわるタイプです。手がけたドラマ『信長協奏曲』でも、小道具の素材にまでリアリティーを追求していました。予算を度外視して制作するのは会社員としては失格かもしれませんが、クリエイター寄りの方だからこそ、ここまでクオリティーの高い作品を作ることができたのでしょう」
見逃し配信の累計再生回数で記録を更新するなど、秋ドラマの話題を独占しているものの、予算と時間をかけすぎたことで、収益面では厳しい状態だというから驚きだ。
「放送されている木曜午後10時枠はこれまで視聴率で苦戦しており、“死に枠”と呼ばれていました。そのため『silent』も、地上波放送のスポンサー料はフジの看板枠の『月9』などに比べると、割安に設定されていたんです。見逃し配信で局側に入る広告料は、地上波のスポンサー料に比べるとまだまだ格安。記録を塗り替えるほど再生がされていても、村瀬Pのお金のかけ方を考えると、億単位の赤字は避けられないのでは?と言われていますね」(広告代理店関係者)
フジテレビの動画配信サイト『FOD』の加入者の増加に貢献しているだけに、広告収入以外も含めればプラスにはなっているが……。
「大きな話題になっていることは間違いないので、ドラマの制作費の赤字分を回収するために、劇場版を製作するべきでは?という声も局内では上がっています」(前出・フジテレビ関係者)
ドラマを映画化してヒットさせるのはフジの得意分野でもあるため、『silent』も可能性はありそうだ。
「続編などは編成にも決定権があるため、現場の意向だけでは制作できませんが、村瀬Pは『信長協奏曲』の劇場版をヒットさせた実績もありますからね。ドラマ版の終わり方次第ですが、劇場版の製作は十分考えられると思います」(衣輪さん)
フジテレビにドラマのキャスティングや収益面について問い合わせたが、
「番組制作の詳細に関してはお答えしておりません」
記録ずくめのドラマの舞台裏は、やはり“静か”ではなかったようだ─。
衣輪晋一(きぬわ・しんいち) メディア研究家。雑誌『TVガイド』やニュースサイト「ORICON NEWS」など多くのメディアで執筆するほか、制作会社でのドラマ企画アドバイザーなど幅広く活動中
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【出演】
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