「ご主人はもの静かな人で、奥さんに声を荒げるようなことは一度もなかったんやけどねぇ……」
と話すのは、事件現場となった奈良県天理市にある容疑者自宅近くの住民。
奈良県警天理署と同県警捜査一課などは11日、無職の坂口佐登美容疑者(64)を殺人未遂の現行犯で逮捕した。同日の午前6時40分ごろ、佐登美容疑者は、自宅1階で夫の充弘さん(65)の右脇腹を刃物のようのもので刺した直後、
「夫を刺してしまった。死ぬかもしれないので、早く来てほしい」
と119番通報。
「救急車やパトカーのサイレンで目が覚めて、ふと見ると、最初にご主人が救急車で運ばれていき、続いて奥さんがパトカーに乗せられた。その後、お孫さん2人も連れていかれて……いったい何が起きたのか、最初はわからなかったんですが、あとで殺人事件だとわかって、もうびっくりでした」(別の近所の住民)
病院へ搬送された充弘さんは、およそ1時間半後に死亡が確認された。
「死因は刺創による肝臓損傷の失血死。警察はすぐさま容疑を殺人未遂から殺人に切り替えて、捜査を続けています」(全国紙社会部記者)
警察の取り調べに対して佐登美容疑者は、
「刺したことは間違いないが、殺すつもりはなかった」
と供述している。
初老夫婦のあいだに、何があったというのかーー。
夫婦はおよそ20年前に、事件現場となった一戸建てに引っ越してきた。
「はっきりせんのだが、最初はご夫婦と一人っ子の娘さんの3人だったような気がしたね。そのうち、娘さんにいつの間にか2人の子どもができとった。結局、娘さんは家を出ていって、孫2人(現在、高校生男児と中学生男児)の4人暮らしをするようになった」(冒頭の住民)
容疑者が夫を怒鳴り散らす声が響いていた
なぜ記憶がぼんやりしているかというと、
「実は引っ越してきた当初から、奥さんがどきどきご主人を怒鳴り散らす声が響いとってね。いや、近所トラブルとまではいかない程度の声やけど。
よその人にはそんなことはなくて、きちんと挨拶もするんやけど、なぜかご主人にだけはキツく当たる。そんな変わった奥さんやったから、近所はつきあいを避けとった。関わりあいになりたくなかったから、ようわからんのです」(同・住民)
そんな状況でも、孫たちはすくすくと育っているという。
「2人とも素直なええ子でね。1人は男前で、自宅前でよう野球のバットの素振りをしてましたわ。野球部で頑張っとるんやろうね」(別の近所の住民)
亡くなった充弘さんは会社員だったようで、
「朝5時30分か6時ごろに車で出勤しとった。でも、最近になって引退されたんやろ、車がなくなって、出かける姿も見なくなかったから。ちょうど今は自治会の班長だったので、回覧板を回したり、集金したりしてはった」(同・住民)
殺人に発展するほどのトラブルは見当たらないように思えるが……
「奥さんは癇癪持ちではあったけど、孫の子育てはちゃんとされていました。熱心さのあまり、学校にクレームを入れたこともあるようでね。一度、電話でご主人に“孫は○○○なんだから!”という怒鳴り声が聞こえたから」(近所の主婦)
佐登美容疑者の犯行動機については、これからの捜査で明らかになっていくだろう。そんななか、警察は困った状況があるようで……。
事件から5日経っても遺体は警察署の霊安室に放置
「遺族である娘さんが引き取りに来ないので、充弘さんの遺体は警察署の霊安室に今もあります。司法解剖が終わって、事件からすでに5日も経っているのに放置されたままなのは異例です。
お孫さんについては、殺人現場となった自宅に2人だけで住まわせるわけにはいかないので、児童相談所に一時的に預かってもらっています。ええ、娘さん(母親)が引き取りに来ないので……」(捜査関係者)
荼毘に伏されない充弘さんはもちろんのこと、孫たちも不憫でならない。傷ついた子どもたちを唯一癒せるのは母親しかいないのではないだろうか。