12月18日、結成15年以内の漫才師日本一を決定する『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)が行われ、ウエストランドが史上最多7261組の頂点に立った。
「ボケの河本太さんがあるなしクイズを出すと、ツッコミの井口浩之さんのひがみや偏見とも思える悪口が暴走していく……という毒舌漫才で会場を沸かせました。松本人志さんも“こんな窮屈な時代ですが、キャラクターとテクニックさえあれば、こんな毒舌漫才もまだまだ受け入れられるんだなとすごい夢を感じた”と絶賛していましたね」(テレビ誌編集者)
ぺこぱの“人を傷つけない”漫才が話題になった2019年大会以降はテレビ業界のコンプライアンスの強化もあり、毒舌ネタは敬遠される傾向にあったが、最近は毒のある笑いが復権しつつある。
「今年3月にフジテレビ系で放送された『R−1ぐらんぷり』で、“大声早口で関西弁で面白くない男が好き〜♪”といった皮肉を歌にしたお見送り芸人しんいちさんが優勝。ケンカを止めに入ったタレントに毒を吐く“ケンカ芸”でおなじみの鬼越トマホーク、先輩であるTKOなどを容赦なくイジるピン芸人のみなみかわさんなど、毒舌ネタを売りにする芸人たちが次々ブレイクしています」(テレビ局関係者)
毒舌ネタの需要が高まっている
お笑い事情に詳しいフリーライターの大塚ナギサさんは、毒舌芸人たちのブレイクをこのように分析する。
「基本的に笑いには毒の要素は必要ですが、コンプライアンスの強化で毒のあるネタが排除される傾向がありました。そんな時代を窮屈に感じているスタッフや視聴者も少なくないため、視聴者の声をズバっと笑いに変えてくれる毒舌ネタは需要が高まっている印象です」
鬼越トマホークやウエストランドの井口に関しては、上の立場のタレントをイジったり、弱者が成功者をイジっているのも大きなポイントだという。
「イジメの構図にならない上で、視聴者も感じていたことを代弁してくれるからこそ共感してもらえる。毒を吐く側が“ここからはイジメや差別になる”というラインをきちんと理解した上で、笑いに変えられる技術があるというのが重要です。技術が伴っていない若手芸人や、共感できるイジりの境界線を理解していないスタッフが安易にマネをすると、それはただの悪口になってしまうので、粗悪な毒舌ネタが増えてしまう懸念はありますね」(大塚さん)
「人を傷つけるお笑い最高」歓迎する声
とはいえ、毒舌芸人たちの相次ぐブレイクはテレビ業界にとっても明るい話題になりそうだ。
「これまではスポンサーや視聴者のクレームを気にして、“毒舌ネタは危険だから止めておこう”と、完全排除する番組も少なくありませんでした。しかし、ブレイクする毒舌芸人たちが増えたことで、“若手が上の人をイジるのはOK”など、ネタにしていい範囲は広がった印象です」(放送作家)
鬼越トマホークの金ちゃんはツイッターで、
《人を傷つけるお笑い最高!! ウエストランドさんおめでとうございます!! 時代変われ!!》
と祝福していたが、毒舌芸人たちが息苦しい時代を笑いで変えてくれるかもしれない。