厚底やミニスカート、へそ出しスタイルが街にあふれた2022年。トレンドを押さえたファッションを楽しむ若者たちの姿(写真提供/日本ファッション協会)

「昭和がエモい」と話題になり、クリームソーダや老舗遊園地をはじめとする「昭和レトロ」が、今年注目された。

 しかし若者のファッショントレンドにおいては昭和を飛び越え、平成ブームが到来。
厚底でミニスカ、なんとなく「懐かしい」恰好がなぜ心をつかんだのか。

 令和における現代の若者のファッションについて、日本ファッション協会でディレクター兼フォトグラファーを務める、日根野哲也氏に話をうかがった。

平成のギャルファッションに憧れる若者

「彼女たちが好んでいるのは、“Y2Kファッション”と呼ばれており、1990年代後半〜2000年代のファッション、つまり平成のギャルファッションをベースにしたもの。Y2KとはYear2000の略称で、2000年を表しています。今の若者ファッションのトレンドです」(日根野氏、以下同)

 平成のギャルファッションといえば、歌手の安室奈美恵さんを思い出す人も多いだろう。日焼け肌に明るい髪色、そして厚底・ミニスカ・へそ出しスタイル。

 当時の若者はこぞって彼女のスタイルを支持し、流行語にもなった“アムラー”が街を席巻した。

「今の10代、20代の子たちは、元ネタの“平成ブーム”を知りません(笑)。このブームを韓流のものととらえ、“新しい”“かっこいい”と人気が出ている部分が大きい。でも、原点はそんな若者たちの母親世代にあります。親子で共感できるファッション、というところも人気を後押ししているかもしれません」

紅白で熱唱する安室奈美恵さん。ミニスカ×ロングブーツを今年、街中でよく見るように
当時のアイドルの衣装はへそ出しが多かった。写真は松浦亜弥さんが2001年ゴールデンアロー賞、最優秀新人賞を受賞したときのもの

 韓国をはじめとする世界のアイドルやファッションリーダーたちがこぞって着こなしているのが、かつての「ジャパニーズギャルファッション」。

 いわばこの平成ブームは、海外で進化を遂げ、逆輸入されたものと言える。しかし令和的にバージョンアップしている点もあるようだ。

「平成のときはどんなスタイルも、全体的にスリムなシルエット。でも今は、カーゴパンツにクロップド(丈の短い)シャツなど、シルエットの組み合わせにメリハリがあるのが特徴。またミニスカートはレザー素材が圧倒的に人気ですね。

 多くはエコレザーでしょうが、独特の張りと光沢のある素材感が好まれています。足元は、元祖平成ブーム時のようにニーハイ丈ではなく、ひざ下丈のロングブーツ。厚底シューズは”ボリューム命“で平成よりもかなり盛ったごつい商品が売れています。

 平成ファッションの潮流を汲みながらも、しっかり進化を遂げており、これは令和ファッションといえるでしょう」

クロップド丈のトップスを合わせると、肌との間にできる段差により体が華奢に見える。また、脚長効果も抜群(写真提供/日本ファッション協会)

カリスマアイドルがいない今、ファッションもカスタム化

 元祖平成ブーム時のファッションは、どこもかしこもアムラー一色。

 令和では、目指すアイドルがいない分、個人のカスタマイズ化が進んでいるという。

「時代を象徴するアイドルが1人いて、みんなでその方向を向いている、というわけではない。これは、みんなが同じTV番組を観ていた昔と、個々がスマホでSNSなどから情報を得る現代との違いが生む差なのかもしれませんね」

 ファッションを楽しむ人たちの体型も「やせ」が主流からはずれた。

「平成の時代には“おしゃれ”と“痩せていること”はセットでした。しかし、今はボディポジティブの考えが定着しつつあり、スリムでもぽっちゃりでもミニスカートやへそ出しスタイルを楽しんでいます」

 ファッションは“人に見せるため”ではなく、“自分が楽しむため”のものにシフトしている。人からどう思われようと、自分が楽しければという潮流がくっきりしてきたという。

「あんなにファッション誌を賑わせた“モテ系”という訴求も、今の若者の間ではほとんど話題になっていません。モテ軸ではなく、自分軸。同性にどう思われるかすら、あまり気にしていないように思います。まさしく多様性の時代なのです」