高校生の部活動の全国大会のあり方が転換期を迎えている。
少子化の影響で全国の高校の部活動がピンチに
「全国高等学校体育連盟(高体連)が全国高校総合体育大会(インターハイ)において、ラグビー、サッカー、バスケットボール、バレーボール、ハンドボール、ソフトボール、ホッケー、アイスホッケー、水球の種目で、複数の学校からなる合同チームの出場を認める方向で検討しています。
早ければ‘23年度から実施。現在の開催基準要項では学校が統廃合される前の2年間に限り、合同チームによる参加を認めていましたが、少子化による部員不足を考慮した措置です」(スポーツ紙記者)
12月27日から大阪府東大阪市の花園ラグビー場で開幕する『第102回全国高等学校ラグビー大会』、通称『花園』。インターハイを兼ねている大会で、予選を勝ち上がった各都道府県の代表校が戦うが、1試合もせずに全国大会の切符を手にした学校もあった。
「鳥取県の倉吉東高校です。鳥取県予選には倉吉東の他に米子工業と倉吉総合産業がエントリー。当初はこの2チームが1回戦を戦って、勝者が倉吉東と決勝戦を行う予定でしたが、両校とも15人をそろえることができず。
12人制の参考試合となり、倉吉東の花園出場が決まりました。その後、“壮行試合”として2校の合同チームと倉吉東が試合をする予定になりましたが、合同チームに負傷者が出た影響でチームが組めずに実現しませんでした」(同・スポーツ紙記者)
予選が行われなかったのは「珍しいケース」
鳥取だけの問題ではない。今年度、山形県、福井県、島根県でも予選は決勝戦の1試合しか行われなかった。また、島根県では単独チームが石見智翠館のみだったため、対戦前から花園出場校が決まっていた。
日本ラグビー協会広報室に1試合も予選が行われなかった事態をどう捉えているか問い合わせたところ
「珍しいケースと存じますが、現行の大会規定に準じますと起こりうる事象と捉えています」
と回答。第70回大会から現在まで続いている各都道府県の代表の単独校が戦う大会システムについては
「高校大会を運営する高体連(全国高等学校体育連盟ラグビー専門部高体連)にて、インターハイでの合同チーム出場の可能性等含め、従来より課題の検討は行われています」(日本ラグビー協会広報室)
との返答だった。
さまざまな高校スポーツの競技人口が減少している
ラグビー以外でも競技人口が減ってきているものは多い。前述のインターハイへの合同チーム出場を認める動きになっている男子ソフトボールでは加盟校がまったくない県もある。事実、‘22年のインターハイでは北海道と秋田県からはエントリーがなかった。
こういったマイナーなスポーツの現状はどうなっているのか。“マイナースポーツ案内人”として多くのマイナースポーツを取材やプレーしてきた藤原昂亮(こうすけ)さんはこう話す。
「競技によって違ってきますが、最初からいきなり全国大会というものもあります。1つの学校では部員が足りないからほかの学校と連合してチームを作ることも多いです」
冬季五輪の人気種目カーリングも競技人口の問題になると厳しいようだ。
「全国大会では、高校単位で参加しているチームもあれば、県選抜チームとしての参加もあります」(藤原さん、以下同)
合同チームや選抜チームの参加も一つの手ではあるが、部員数を増やすことが解決につながる。だが、実際にはいくつもハードルがあるようで……。
普及活動もなかなか成果が出ない実情
「例えば、カーリングのような、練習や試合ができる場所が限定されるスポーツは部活動として成立できるかという問題にもなってきます。そういう環境の問題はウインタースポーツでは多いですし、川で行うカヌーなどのボート競技も同じです。
このようなハード面のほかに、専用の道具が必要であったり、しっかり教えられる人がいるかどうか。十分にプレーができる環境があるかないかで部活動として成立するか、地域のクラブチームのようなところでプレーせざるを得ないのかという差は出てきてしまいます」
普及活動も行っているが、なかなか成果は出ていない。
「競技の魅力を学校に教えに行き、体験してもらうことも徐々に増えていますが、1日や期間限定という形になってしまうことがほとんどです。部活動として根付くまでは至ってないのが現状です」
一方で“希望”もある。
「国が部活動を民間のクラブや指導者に委ねる地域移行という流れもあります。そうした動きで、願望ではありますけど、指導者問題が解決してほしいなという思いはあります。先生に限らず、教えられる人が地域にいればいいので、可能性は広がるかなと思います」
どの競技にもそこにしかない魅力がある。野球やサッカーのような人気スポーツだけではなく、いわゆるマイナー競技の部活動に汗を流す高校生にも、“密な青春”を過ごせる環境になってほしいものだ。