田口翔被告(インスタグラムより)

「被告側から阿武町に解決金347万円が支払われ、民事での和解が成立しました」

 そう話すのは、町議会関係者。昨年、12月15日に行われた定例議会で発表された。

 阿武町の名を一躍有名にした騒動が起きたのは、昨年4月。山口県阿武町で新型コロナウイルス感染症対策のひとつとして生活困窮者への支援が行われたのだが、そこであり得ないミスが起きてしまう。

「1世帯につき10万円の補助金が配られるのだが、阿武町役場の職員のミスで1世帯に4630万円を振り込んでしまった」(全国紙社会部記者)

 つまり、事務手続きの際の手違いで本来の補助金とは別に、対象のうちの1世帯に合計額相当を二重振込してしまったのだ。役場は直ちに誤送金した相手である同県同町に住む田口翔被告に連絡して返金を求めたのだが、

「被告はそのまま姿をくらましてしまう。その後、弁護士を立てて現れ、“金はオンラインカジノでほとんど使い切っったから返せない”などと主張。被告の身勝手な言い分に批判が集まりました」(同・社会部記者)

ヒカルの食品会社で雇用してもらい、正社員に

 その後、被告は電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕されたのだが、

「被告は強運の持ち主でした。まず、誤送金4630万円はオンラインカジノの決済代行業者によってほぼ全額返還されるという奇跡が起きた。さらには人気YouTuberのヒカルという“ホワイトナイト”も」(スポーツ紙記者)

田口翔被告(左)とヒカル(ヒカル公式Twitterより)

 被告はヒカルに保釈金を払ってもらい、

「彼が出資する食品会社で雇用までしてもらい、今も正社員として働いています」(同・スポーツ紙記者)

 一方、当時、被告とともに世間に叩かれたのは、ミスをしたと疑われた新人職員A氏。

「フロッピーディスクを使って振込先のデータを金融機関に渡していたこともあとから発覚。この時代錯誤な阿武町役場の体制が火に油を注いだ。新人職員A氏も炎上し、名前、個人情報がネット上に晒される事態に」(スポーツ紙記者)

 8月に本誌が取材した際は、阿武町役場に勤務し続けるも針のむしろ状態だった。あれから4か月経った今は……。

「まだいますよ。何事もなかったかのように働いています」(前出・町議会関係者、以下同)

 だが、炎上の火種はまだ消えてはいないという。

「騒動にかかった費用は、弁護士の着手金330万円と成功報酬の463万円(誤送金の10%)、職員の出張費などで合計約1002万円でした」

 冒頭にあるように町は被告から解決金347万円を手に入れたわけだが、

「差額の約650万円は町税で支払われており、町民が“借金”を背負わされたようなもの。町議会で“民事では解決したのだから後ろ向きな発言は今後控えよう”と町の方針が発表されたのですが……。町民が納得するとは到底思えません」

 そんな中、田口被告の刑事裁判が27日、山口地裁で行われた。検察側は論告で「大胆で悪質な犯行」とし懲役4年6か月を求刑した。弁護側は無罪を主張しており、まだまだ話題の尽きない誤送金騒動。職員A氏が心の底から安心できる日は来るのだろうか。

田口翔容疑者が描いたと思われる奇妙な絵(インスタグラムより)

 

田口翔被告が借りていた一軒家は自然豊かな場所にある

 

田口翔被告の長靴とスニーカーは庭先に残されたまま

 

山口南署から保釈された田口翔被告(日テレNEWS公式ツイッターより)