料理研究家の大柳珠美さん

 多くの女性が経験する更年期。ただその症状は、十人十色で個人差が大きい。メディアで元気な姿を見せる料理研究家たちも湿疹、動悸、吐き気などの不調を経験し、身体の変化に戸惑いつつ、シフトチェンジを図る。更年期を乗り切り、より輝くための秘訣とは──。今回は、大柳珠美さん(54)が教えてくれた。

動悸と吐き気などの不調をヨガと「主食のとり方」で改善

 42歳から月経周期が乱れ始めたという大柳珠美さん。その2年後にストップしたが特に不調はなかった。

「45歳のときに勤務先のクリニックに向かう電車内で動悸(どうき)と吐き気に襲われ、下車したことが計2回あったんです。これはもしや、と思い、婦人科で血液検査をしました」(大柳さん、以下同)

 女性ホルモンの分泌を促す、黄体形成ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)の数値が基準値を超えており、医師に「更年期ですね」と言われる。

「医師に宣言され、『暮らし方をギアチェンジする時期がきた』と実感したのです。そのころは夜型で朝はコーヒーだけ飲んで出勤することもあり、体調管理の意識は薄かったですね」

 電車内の不調は更年期障害と診断されたが、それ以降はなかったので薬は服用しないことに。そのころから、閉経後の体調変化を見据え、まずは軽い運動を習慣にした。

「女性ホルモンなどをつくる材料になる『DHEA』には体内の炎症を抑える働きもあることから、“若返りホルモン”とも呼ばれています。検査結果では基準値以内でしたが、加齢とともに減っていくもの。軽い負荷のかかる運動で増やせると医師に聞いたので、ヨガスタジオに入会し、週に1~3回、3~4年通っていました」

 コロナの感染拡大で教室はやめてしまったが、今も自宅でヨガは続けている。

「今も階段を使ったり、ひと駅歩いたり日常の活動量を増やすことも心がけています」

内食は糖質を節制、夜の食事は軽めに

 閉経後、女性ホルモンのひとつエストロゲンの分泌が減ると高血糖、高血圧、高コレステロールの3つのリスクが高まることがわかってきている。そのため、管理栄養士でもある大柳さんがもっとも気をつけているのが食事だ。

「魚介類や大豆製品、野菜や海藻などおかずは毎食とります。以前から糖質は控えめ。最近では、朝食に旬の果物や胚芽米、雑穀をいただくようにしています」

 胚芽米や雑穀は食物繊維が多くとれ、生の果物からは酵素をとれるという利点もある。パンや菓子類はほとんど食べていない。

「朝昼は食事の量をしっかりとっていますがその分、夜の食事は軽め。例えば具だくさんの汁物と納豆だけにし、夜中に絶食時間をつくって胃腸を休ませています」

気をつけていれば外食はラーメンもOK!

 大柳さんのコレステロール値に異常はないが、閉経後に上がる人が多いことからサラダ油やオリーブ油などの「液体の油」はほとんどとらない。

「脂質は魚や大豆、ゴマ、かぼちゃの種、クルミなどから摂取するように。今までとは“油の質”を変えて悪玉コレステロールを増やさないように気をつけています」

 これは加齢とともに減る体内の消化酵素や、抗酸化力のためでもあると話す。

大柳さんの朝食例

「脂っこい食事は消化にパワーを使うので、消化に優しい和食が自然と増えました。この1〜2年は大好きなアルコールも断酒日を設けたりして、自然と飲む量を減らせるようになりましたね」

 その反面、外食するときは制限を設けていない。

「私は熊本県出身なのですが、東京にある熊本ラーメンの店には定期的に足が向きます(笑)。平日の食事に気をつけている分、たまの外食は気にせずに楽しみます」

 生活改善のおかげか、動悸に襲われることもなく、現在はすこぶる快調だ。

趣味のピアノをリラックス習慣に

 更年期の対処法として、自分が心地よくなるような、リラックスできる習慣も大切だという。

「40代はちょうど仕事がいちばん忙しく、プライベートでは子どもが思春期だったのでストレスも大きかった。そこで、コロナ禍にヨガスタジオをやめたあと、ピアノを習い始めました。更年期を越えてシニアになったとき、楽しめる趣味があることは、健康増進にも効果があるといわれています」

 昨年は発表会にも初参加。2年間練習してきたショパンの曲を発表会で弾いた。今は新しい曲に挑戦中だ。

「45歳のときの不調は、ストレスフルな生活を見直せという身体からのサイン。気づいたからこそ、更年期を自覚してムリせずに過ごせてきたのかもしれません」

大柳さんの朝食例

 おおやなぎたまみ ●料理家。管理栄養士。おいしく続けられる糖質制限食の情報やレシピを発信。クリニックにて栄養指導も行う。近著に『腸からきれいにヤセる! グルテンフリー・レシピ』(青春出版社)など。

〈取材・文/宇野美貴子〉