左上から時計回りに『夕暮れに、手をつなぐ』(公式HPより)、『ロングバケーション』の記者会見、『星降る夜に』(公式HPより)、『東京ラブストーリー』の記者会見

 昨年最も話題となったドラマ『silent』(フジテレビ系)に続き、今年も続々と恋愛ドラマがスタートする。

 King & Prince・永瀬廉と広瀬すず主演の『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系、火曜夜10時)、吉高由里子、北村匠海主演の『星降る夜に』(テレビ朝日系、火曜夜9時)など話題作がめじろ押しの1月期ドラマ。

失聴者と健聴者の名作ドラマといえば

「恋愛ドラマが再び盛り上がりを見せています。'90年代は『東京ラブストーリー』を皮切りに恋愛ドラマが数多く作られました。しかし'00年代に入るころに尻すぼみとなり、人間ドラマや医療ドラマが多くなってきました。今再び、恋愛モノがフューチャーされているなと感じます」(テレビ誌編集者)

 しかし「'90年代と令和の今では見せ方が異なる」と、ドラマウォッチャーの神無月ららさん。

「ヒロイン像、仲間内での恋愛模様の描き方、それぞれまったく異なります」

 '90年代と今を比べると、驚きの違いがたくさんあった。'90年代と令和の恋愛ドラマの最大の違いは“ヒロイン像”だと神無月さん。

「失聴者と健聴者の恋愛ドラマといえば、TBSで'95年に制作された『愛していると言ってくれ』が、思い出されます。『愛している~』では、ドラマのクライマックスシーンとして、駅のホームで豊川悦司さん演じる晃次が、常盤貴子さん演じる紘子の名前を叫ぶシーンがありました。

 紘子は晃次の声を知らないことにコンプレックスを抱えており、自分の名前を言ってくれない晃次に“もういい!”とキレて去っていきます。それを晃次が駅のホームの反対側から大声で名前を叫んで呼び止める、という場面でした」(神無月さん、以下同)

 正確な発語ができないもどかしさや、それを人に聞かれる恥ずかしさを捨ててでも、愛する紘子を引き止めるために、大声で彼女の名前を叫んだ晃次。当時は感動したという声があふれていたが……。

「よくよく考えてみたら、自分への愛の大きさを知りたがる欲求のためだけに、失聴者の恋人に発語を強要する紘子ってどうなんだろう……とジワジワ思うようになったんです(笑)」

 と、ヒロインの主張が強めだったと指摘する。一方で『silent』のヒロイン・紬(川口春奈)は、

「目黒蓮さん演じる想にどんなにひどい振られ方をしても、再会時になじられても、まっすぐに向き合うことをやめないし、自分にできる努力はすべてする、とても心の強いヒロインです。ましてや、自分から想の声が聞きたいなどというワガママも言いません。

 絶えずSNSで人とつながり、周りの目を気にする環境に置かれた令和の若者に、気配りスキルは重要です。人と正しい距離が取れて、気遣いのできる紬のような主人公はすごく“令和っぽい”なと思います」

'90年代の恋愛ドラマには必ず嫌なライバル役が

 '90年代のヒロイン像として神無月さんはもう1人『ロングバケーション』(フジテレビ系)の南(山口智子)をあげる。

「山口智子さん演じる、花婿に逃げられた南が、木村拓哉さん演じる瀬名の部屋に、第1話で強引に転がり込みます。家もお金もないとはいえ、瀬名が花婿とルームメートであったため連絡を待ちたいからという理由だけで強引に見知らぬ男の部屋に居着く。

 当時の好感度No1女優の山口智子さんだから許されましたが、ワガママの通し方が度を超えていた。常識よりも自分の欲望に忠実で、欲しい物をはっきり欲しい!と言えるヒロインが、魅力的に見える時代だったんだと思います

昨年末に絶大な支持を集めた恋愛ドラマ『silent』(フジテレビ系)

 脚本家が違うとはいえ、現代は「多少ワガママでガムシャラでも、恋愛にまっすぐなヒロイン」というのは、時代的に好まれないかも。

 '90年代の恋愛ドラマには必ず嫌なライバル役がいた。

酒井法子さん主演の『星の金貨』では細川直美さん演じるライバルが意地悪でこれでもかと酒井さんに嫌がらせをする令嬢役でした。『東京ラブストーリー』の有森也実さんが演じる役は意地悪ではないですが、ジワジワと追い詰めてくる嫌な女で視聴者から殺害予告をされるほど嫌われてしまいました。

『ずっとあなたが好きだった』でもヒロインの賀来千香子さんに対して宮崎ますみさん演じる恋敵は自殺未遂までして追い詰めます」(前出・テレビ誌編集者)

 一方で令和の恋敵は、無駄な意地悪はしない。

「『silent』と『初恋』で恋敵を演じた夏帆さんの役はどちらも人物の背景がしっかり描かれているので見ている側が同情してしまうような恋敵でした。ただの当て馬として描かれないのが令和の特徴のような気がします」(テレビ誌編集者)

令和ドラマは“無理に恋愛しない”

 主役を引き立てるために存在する脇役の描かれ方をしていた'90年代と、すべての登場人物の背景を丁寧に描く令和。多様性がうたわれる現代では必須なのかもしれない。

 '90年代の恋愛ドラマは「群像劇が多いのも特徴」だと神無月さん。

'91年のフジの月9ドラマ『東京ラブストーリー』は男女5人の複雑に絡み合う恋愛模様を描いた名作ですが、身も蓋もありませんが、仲間内で付き合ったり離れたりの繰り返しだったな、と。それゆえ奔放ではあれど、カンチに一途なリカへの応援が、一大ブームとなって爆発したんだと思います。

 そして同じ柴門ふみさん原作で'93年の月9ドラマ『あすなろ白書』では主演の石田ひかりさんに筒井道隆さん、恋のライバル役としてまだブレイク前の木村拓哉さん、ヒロインの友人には鈴木杏樹さん、その思い人として西島秀俊さんがメインキャストとして登場します。ここまでで5人。さらに筒井道隆さんの元恋人なども参戦して複雑な恋愛模様に」

酒井法子、竹野内豊、大沢たかおが出演した『星の金貨』

 神無月さんは仲間内で恋愛することにアメリカのドラマの影響をあげる。

「これは当時アメリカで大ヒットを記録したドラマ『ビバリーヒルズ高校白書』、続編の『ビバリーヒルズ青春白書』の影響も大きいかもしれません。とにかく大人数、仲間内で恋愛しまくるし絶えず相手が入れ替わっていく、大変面白いドラマでした」

 一方、令和では、

「『silent』ではキャスト全員が恋をしているわけではないのも興味深いですね。紬と別れた湊斗は、無理やり新しい恋を始めたりしないし、紬の親友の真子は良き相談相手ではあるけど、彼女の恋愛自体は描かれません。'22年後期のNHK朝ドラ『舞いあがれ!』では、航空学校でヒロインの舞が、同期生の柏木と恋人同士になるも、舞に片思いする吉田学生が、告白する気配はまだありません。

 ヒロインの幼なじみである貴司は、まずは自分の生きがいを探し求めることを優先し、舞に恋をするような描写も今のところありません。恋人のいない人同士をくっつけたりしないし、キャラクターが追いかけたい夢があれば、恋愛よりも夢を優先するのが今っぽいなと思います」(神無月さん)

『silent』の脚本家の生方美久氏はトーク番組『ボクらの時代』(フジテレビ系)で「よくドラマで使われる『当て馬』というのが嫌いで、そうはしたくなかった、当て馬とされる人間にもちゃんと人生があるし、それを大事に描きたかった」と話していた。これからの恋愛ドラマは、登場人物たちの人生を丁寧に描くことが求められている。

◆'90年代ラブストーリードラマ視聴率

※視聴率は最高視聴率

1位『101回目のプロポーズ』('91年フジテレビ系)36.7%

『101回目のプロポーズ』に出演した浅野温子と武田鉄矢

 

 

 

 

 

 

 

 


1位『ロングバケーション』('96年フジテレビ系)36.7%
3位『ずっとあなたが好きだった』(TBS系'92年)34.1%
4位『ラブジェネレーション』(フジテレビ系'97年)32.5%

木村拓哉と松たか子が共演した『ラブジェネレーション』

 

 

 

 

 

 

 

 


5位『東京ラブストーリー』(フジテレビ系'91年)32.3%
6位『あすなろ白書』(フジテレビ系'93年)31.9%
7位『魔女の条件』(TBS系'99年)29.5%
8位『バージンロード』(フジテレビ系'97年)28.3%
8位『神様、もう少しだけ』(フジテレビ系'98年)28.3%
10位『愛していると言ってくれ』(TBS系'95年)28.1%
11位『続・星の金貨』(日本テレビ系'96年)26.4%

 

 

'16年の雑誌『セブンティーンの』の撮影で顔を寄せあう広瀬すずと山崎賢人(セブンティーン公式YouTubeチャンネルより)

 

同じ大学の後輩でジャニーズJr.の永瀬廉(左)と阿部顕嵐(右)と一緒に現れた中島。式の前に3人で記念撮影

 

'19年、映画『君の瞳が問いかけている』の打ち上げに参加した吉高由里子

 

 

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【出演】
TK(芸能記者)
あっきー(芸能記者)

【パーソナリティ】
木村彩乃(フリーアナウンサー)

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