GACKT

『芸能人格付けチェック 2023お正月スペシャル』(テレビ朝日系)にGACKTが出演した。ワインの味や楽器の音色などを判定させ、出演者を「一流芸能人」から「映す価値なし」までランク分けするこの番組で、彼は圧倒的強さを発揮。10数年にわたって個人71連勝を継続し「GACKT専用部屋」まで設けられた。彼が答えた時点で正解が予想でき、視聴者は興味がそがれるからという理由だ。

「ステージで空を飛びたい」

『紅白』でいえば毎年、特別枠で大トリを務めるような存在かもしれない。ただ、前回は不参加だった。2021年9月、命にも関わるという体調不良のため、活動を休止。その後も「声を発する仕事の続行は不可能」という診断を受け、翌年6月まで療養していたからだ。

 それに加え、'21年11月には人妻との不倫を報じられた。また、かつて広告塔を務め「ガクトコイン」とも呼ばれた仮想通貨のビジネスをめぐる詐欺疑惑も再燃。という具合に、この時期はかなりの危機だったともいえる。しかし、彼はその危機を無事乗り越えたようだ。その決め手は、不思議キャラを貫けているからだろう。

 '95年、ヴィジュアル系バンド・MALICE MIZER(マリスミゼル)のボーカルとして世に出た彼は「1540年ヨーロッパ生まれ」という設定や「ステージで空を飛びたい」といった発言でも注目された。

 が、3年後に失踪騒ぎを起こし、'99年に脱退。ほかのメンバーとの確執もささやかれ、バンドのリーダーが「彼の発する言葉に真実など見えなかった」とファンクラブの会員に説明したともいう。

 ちなみに失踪騒ぎはソロデビュー後もあって、

「当時の事務所の社長とめちゃくちゃモメて、(自分のバンドの)メンバー引き連れてペンションで半年生活した」

 とのこと。地元の沖縄にいたらしい。そんなわけで、何かと謎の多い人だが、彼の場合はこうした不思議キャラが一種の持ち味になってきた。

 ソロ転向後、歌番組などでストイックな食生活やトレーニングについて語り、それがカリスマ性を高めることに。その持ち味を理解し、うまく料理してきたのがダウンタウンの浜田雅功だ。『格付けチェック』のMCが浜田なのも、偶然ではないだろう。

「パーフェクトショーにうんざり」

 ほかの出演者が数問すら連続で当てることもできないなか、GACKTが10数年負けなしということについては「やらせ」疑惑もつきまとうが、ではこの「個人65連勝中」という状況が彼以上にハマる人がいるだろうか。

 '07年のNHK大河ドラマ『風林火山』では軍神と呼ばれた上杉謙信を演じ、大量の弓鉄砲を浴びせられても無傷で酒を飲み続けるという場面が印象的だった。神がかりな無敵感が、とにかく似合う人なのだ。

GACKTが出演した『芸能人格付けチェック2023お正月スペシャル』(テレビ朝日系)

 とはいえ、不思議であり続けるのは難しい。これが悪そうな人の「実はいい人」なら好感度につながるし、よさそうな人の「ちょい悪」もスパイスになるのだが、不思議な人の「意外とフツー」はその後の展開を中途半端にしがちだ。

 つまり、不思議な人は不思議なままでいなくてはならない。『格付け』の連勝記録も簡単にストップさせるわけにはいかないのである。ただし、番組のファンからは「必ず正解する人がいるのはつまらない」「パーフェクトショーにうんざり」といった声もちらほら。彼のような人にとって、不思議さを面白がってもらえなくなるようでは商売あがったりだ。最大の危機が訪れるのは、そのときだろう。

ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)
 

 

取り巻きに囲まれながら車に乗り込むGACKT(2014年)

 

マルタ島の自宅からの配信後は「危機感が足りない」など非難の声が殺到し、波紋を呼ぶことに

 

映画『moonchild』で共演したHYDEとGACKT(2002年)