記者会見に臨む五ノ井さん('22年12月19日)

「自衛隊には今でも感謝していますが、この被害については、しっかりと責任をとっていただきたいと思います」

 そう語ったのは元自衛官の五ノ井里奈さん。昨年12月19日、自身が告発した自衛隊内での性被害について、都内で記者会見を行った。

「五ノ井さんは'20年に自衛隊に入隊し、郡山駐屯地に配属。男性隊員から日常的に卑猥な言葉を投げかけられたり、身体を触られたりといったセクハラを受けていました。耐え続けていたものの、'21年の6月と8月に決定的な性被害を受け、『強制わいせつ罪』として被害届を提出。しかし、“目撃者がいない”として不起訴処分になってしまいました。自衛隊退職後の

'22年6月から“再発防止と直接謝罪”を求めてメディアやYouTubeで実名告発を行い、大きな反響を呼んでいます」(全国紙記者)

被害者ではなく“五ノ井里奈”として─見据える未来

 決死の告発が実を結び、昨年9月には一度出ていた不起訴処分について『不当』の議決が下り、再捜査がスタート。同月、防衛省や加害者らが性加害の事実を認め謝罪し、12月15日に5名が懲戒免職処分となったが……。

示談交渉の場で、加害者3名の担当弁護士から“個人責任があるか疑問だが~”と前置きされ、1人30万円の示談金を提案されたことを会見で明かしていました。五ノ井さんは金額よりも“個人責任があるか疑問”という言葉について“事の重大さを軽く受け止めているのではないかとあきれ、驚きました”と話しています」(同・全国紙記者)

 完全決着にはもう少し時間がかかりそうだが、五ノ井さんは昨年10月に受けた加害者からの直接謝罪をもって気持ちの“ひと区切り”にしている。同月には『週刊女性PRIME』のインタビューで、

《これからは被害者としてではなく、ひとりの人間として強く生きて、いろんな人を笑顔にさせたい。私がそうして生きている姿を見て、元気を出してくれる人がいればいいなと思います》

 と語っていた。

 冒頭の記者会見でも、

「これからは被害者としてではなく“五ノ井里奈”として生きていきたい。まだ戦いは続きますが、自分の人生は自分で歩んでいくつもりです」

 と決意表明しており、すでに未来を見据えているようだ。

 昨年12月には石川県で“最初の一歩のすすめかた”というテーマで講演会を行い、1月1日には『女子相撲日本一決定戦』にも出場。多忙を極めるなか、精力的に活動する原動力は、どこからきているのだろうか。

'22年12月、石川県で行われた講演会(本人のツイッターより)

私は幼いころから柔道をやっていて、それが自分の軸。今も道場で働いています。今回ここまでやってこられたのも、柔道で鍛えたおかげかなって思ってるんです。なので、同じように被害に遭われた方たちも含めて支援できるような、心も身体も強くなれる柔道教室をつくることにしました。いま、準備を進めているところです」(五ノ井さん)

 前を向く彼女の思いは、これからもたくさんの人を勇気づけていく─。

 

女性の先輩自衛官は、「オオカミになるから覚悟しとけ」と言われ、恐怖で動けなくなったという

 

配属された郡山駐屯地の部隊で上官や先輩からセクハラを受け続けた

 

東日本大震災がきっかけで自衛隊に入隊した五ノ井さん

 

五ノ井さんがセクハラを受けている最中に送信した、先輩隊員に助けを求めるLINE