コロナ禍以降、映画館に行く人は減ったかのように思えるが、歴代の興業収益ランキングを見てみると、第1位『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』('20年)、第9位『ONE PIECE FILM RED』('22年)、第17位『トップガン マーヴェリック』('22年)など、ランキング上位となる作品は最近上映されたものが多い(※興業通信社調べ)。
現在公開中の『すずめの戸締まり』や『THE FIRST SLAM DUNK』も好調で、このままいけばランキング上位に食い込みそうな勢いである。
NetflixやAmazonプライムなど、家でも簡単に映画作品を見られる近頃だが、やはり映画館にいってじっくり作品を味わうのは格別。そして、どうせ映画館に行くなら、一番“良い席”で映画を堪能したい。一体、どの席が一番“良い席=おトクな席”なのだろうか?
「劇場の中央付近が良い席かな?」というのは、なんとなく誰もが思うところ。実際、劇場のチケットをネットで買うときなどは中央付近の真ん中から売れていくことが多いようだ。
映画館、座席で一番いいのはどこか聞いてみた
本当に真ん中は“おトクな席”なのか、映画ライターのよしひろまさみちさんに聞いてみると
「映画を観るならスクリーンに向かって中央。これは昔から言われてきたことで、シネコン以前、大型映画館で指定席・自由席の区分があった時代は、劇場内中央のエリアが指定席とされてきました。それは、映画の映像&音響効果を一番楽しめて、疲れにくく、没頭できる席だから。
それはシネコンが主流の今もさほど変わないものの、座席選択は早いもの勝ち。でも、劇場のサイズによっては、センターでも前方か後方にずらす工夫も。たとえば、スクリーンと座席の距離が近い劇場だと、ど真ん中では近すぎ。また、座席列に勾配がない劇場だと、ど真ん中では人の頭が気になるからちょっと前の席がいい……などなど、劇場によっての特徴もあります」
音響の観点から“おトクな席”を、イオンエンターテイメント株式会社の広報担当者に聞いてみると、
「映画館でどの席がおトクか?という質問には、好みなどもあると思いますので一概に申し上げることは難しいのですが……、音響の点からですと、中央より少し後ろの列の真ん中の座席が、シアター内のスピーカーからの距離と音響バランスが一番良いのでオススメします。
イオンシネマでは、Dolby AtmosやDTS:X、VIVE AUDIOなど、こだわりの立体音響システムを導入していますので、ぜひ劇場で体感してみてほしいですね」
この他、お手頃価格で座席をグレードアップできる劇場もあるようだ。
「イオンシネマでは、現在は19劇場のみですが、アップグレードシートという座席を用意しています。
座席の両サイドにパーテーションを設置したボックス席仕様で、当社の通常の座席よりも広く、専用のドリンクホルダーと荷物置きも設置されています。
隣の席からの目線を気にせず、スクリーンに集中できて、より映画の世界に没入できるはずです。このシートは、鑑賞料金に+ドリンク代500円(税込)で利用できますので、“おトクな席”だと思います」
作品や自分の好みによって座席を変えてみるのもアリ
観る作品によって座席を変えてみるのもオツ、というのは、前出の映画ライターのよしひろまさみちさんだ。
「ハリウッドの大作は、ド迫力の映像を最高の環境で観たいものですよね。たとえば『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』は、2D、3D、IMAX、4D、4DXスクリーン、とスクリーンの仕様が異なるバージョンで上映されてますが、それぞれベストの席が違います。
ざっくりいうと、IMAXや4Dの大きなスクリーンならできるだけ後方の中央寄り、スクリーンサイズにこだわらないならど真ん中。ただ、『アバター』は現在の最新技術によって、どの席で見ても同じ映像効果と音響効果が得られるよう作られているので、この作品に関してはどこに座っても大丈夫です。前方過ぎると首は疲れますけどね」
では、日本の作品やアニメの作品だとどこがよいのだろうか?
「日本映画に関しても、おおむね中央から後方中央がいいでしょう。たとえば『ラーゲリより愛を込めて』のように、美術セットやロケーションにこだわりを持って作られた作品だったら、全景をとらえ、細かな描写も目に入る後方中央。『THE FIRST SLAM DUNK』などのファン主体の作品だったら、作品に没入できる中央席がいいと思います」
このように、映画側からのオススメはあるが、最終的にはそれぞれの好みで選ぶのがベストだと、よしひろさんは言う。
「ちなみにあたしは前方か後方通路側が好き。自分が映画を観る体勢やコンディション、観るときのくせなどを考えるとこれがベストなんです。なので、映画側からのベストはふまえつつ、いろいろと体験していただいて、おのおのお気に入りの席を見つけてください」
このように、色々な視点からの“おトクな席”はあるようだ。映画館に行く際は、これらの視点を踏まえて座席を選んでみるのも一興かもしれない。
イオンシネマ公式HP:https://www.aeoncinema.com/
アップグレードシートについて:https://www.aeoncinema.com/event/future_theater/
(取材・文/志村結衣)