「容疑者と被害者は同い年で地元も一緒。常連の独身どうしで、2年前くらいから2人で飲みにくるほど仲がよかったのになぜ……」
とスナックのママは首をかしげた。
1月1日、大阪府警捜査一課と同府警平野暑は、大阪市平野区の無職・新田浩之さん(55)を包丁で刺殺したとして同区の職業不詳・稲掛躍(いなげたかし)容疑者(55)を殺人の疑いで逮捕した。
容疑者ら15人は12月30日の午後8時30分ごろから忘年会の2次会を冒頭のスナックでおこなっていたのだが、
「翌31日の午前1時過ぎにおひらきになり、事件はその店を出た直後の午前1時17分ごろ、路上で起きたのです」(大手新聞社会部記者)
会はもともと同級生の2人がお互いの知り合いを呼び合って集めた会で、男性12人と、その妻や恋人の女性3人。スナックは貸切り状態だったという。
「稲掛くんは“イナゴ”というあだ名で呼ばれとって、陽気で口数が多いやつ。会を盛り上げる宴会部長のようなやつやけど、短気でカッとなるところは確かにあった」(両者共通の知人)
一方の新田さんは、
「うーん、逆に言葉数が少ないクールなやつやった」(同・知人)
しかし、いつもは仲がいいのに、忘年会の2次会では離れて座っていて、ほとんど会話をしていなかった。とりわけ稲掛容疑者は異様に静かで、塞ぎ込んでいるようにも見えたという。
忘年会の途中で抜け出して包丁を購入
「会は和気あいあいとなごやかに進んでいて、喧嘩も言い合いもなかったんやけどねぇ」(前出・スナックのママ)
0時30分ごろ、
「ちょっとタバコを買ってくる」
と言い残してスナックを出た稲掛容疑者は、250メートル離れたコンビニ『ローソンストア100』でタバコ、そして包丁を購入。同店の防犯カメラにその様子が映っていた。実は容疑者はスナックに戻り席についたが、その場では何事もなかった。
2次会が終わると、稲掛容疑者は先にスナックを出て、他の仲間を待ち受けた。そして新田さんが出てきた途端、右脇腹にいきなり包丁を突き立てたのである。
「外が騒がしかったので店から出ると、新田くんが倒れていて、稲掛くんはもういなかった。あとでわかったのですが、自転車で逃亡したみたいで……。みんな何があったのかわけがわからず、ポカーンとしていた」(前出・スナックのママ)
その場にいた忘年会に参加していた仲間が119番通報。被害者は病院へ搬送されたが、時すでに遅く、新田さんは失血死で死亡した。
同級生を刺して自転車で逃亡
逃亡していた稲掛容疑者は年が明けた1月1日、かつて住んでいたことがあった兵庫県姫路市にいた。地元の警察官に職質を受け、名前を、
「ミヤザキです」
と答えたが、すぐに嘘だとバレて逮捕。警察の取り調べに、
「刺したことは認めますが、殺すつもりはなかった」
と容疑を一部否認している。
容疑者は犯行現場から、1キロメートル離れた築34年の古びたワンルームマンションに、単身で住んでいた。家賃は月2万5000円。
玄関ドアには、
《この部屋に用があるかたはご一報ください》
という警察の貼り紙があった。だが、このマンションで彼の存在を知る人は皆無だった。
容疑者は中学卒業後、社会へ出ていた。最近は関西では“労働者の街”として知られる西成地区で日雇い労働をしていたという。
バツイチのようで、彼のSNSには、『バツイチの会』と題して、
《やあベイビー、たくさんの独身の女の子に会いたい たぶん、あなたを助けることができます》
などの投稿があった。
かたや、被害者となった新田さんも中学卒業後、高校には行かずに働いていたようだが、
「持病があったため、仕事はリタイアしていた。具体的にどこが悪いのかはわからないが……」(前出・知人)
事件現場から600メートルの市営住宅で独り暮らしをしていた。
「母親と妹は、別の棟に住んどるよ。ほとんど見かけないが、昔からおとなしい感じの人やね」(近隣住民)
捜査関係者はこう話す。
「1次会でも、ほかの仲間が把握しているような揉め事はなかった。本格的な取り調べはこれからですが、いまのところはまったく理解できない」
事件の真相究明が待たれる−−。