ディズニーキャラクターがプリントされたお弁当箱、レトロなコカ・コーラの瓶やロゴがインパクト大な紙皿、ちいかわのマスキングテープなど。すべて100円(税抜き)で購入

 掃除用具や食器類、文房具に化粧品まで。生活必需品のすべてがそろうといっても過言ではない100均ショップ。いまや全国に9000軒以上もあり、業界最大手の『大創産業』が展開するダイソーは『DAISO JAPAN』として、世界中のさまざまな国や地域に出店している。

 そんな100均ショップでひときわ目を引く商品がある。ミッキーやミニーなどのディズニーキャラクターや、子どもから大人まで爆発的な人気を誇っているちいかわなどとコラボした、いわゆる「キャラクター商品」だ。最近では、コカ・コーラとコラボしたレトロでかわいい食器やインテリアなどもあり、一目では100円だとは分からないクオリティの商品も多い。

 ここで、ある疑問が。キャラクターには著作権があり、無断で使用することは違法。使用する際には許諾を受けて、企業にライセンス料を支払わないといけない。そうなると、ライセンス料が高そうなディズニーキャラクターがプリントされたお弁当箱などは、とても100円で売って利益が出る商品とは思えない。それなのになぜ、100均で販売することができているのか。ミリオンセラー『経済のニュースがよくわかる本』などで有名な経済解説者の細野真宏さんに話を聞いた。

トータルで見れば実は儲けている!

 キャラクターの権利を持っている企業が、商品を作りたい側の企業と契約するときには一般的に「○○○万円でこのキャラクターの商品を何個作って良いですよ」というような具体的な「金額」で取引をするのではない。「売り上げの何%をライセンス料として支払うか」といったキャラクター使用に関する「印税」という形で交渉をしていくと細野さんは解説する。

一般的な許諾に関する印税の相場は、売り上げの3%~5%ですが、ディズニーなど人気がありブランド価値も高いものだと、5%~10%のどこかで落ち着いているのではと想定されます。最近だと『鬼滅の刃』のキャラクターといった人気の高いジャンプ系なども、そのくらいのパーセンテージなのではないかと思います」(細野さん、以下同)

 また、企業にとってみれば、そのライセンス料の契約をする相手が、100均ショップなのか、大手の玩具メーカーなのかはあまり関係ないという。なぜなら100円だろうと、定価が2000円のおもちゃだろうと「売り上げの何%を支払う」という契約をしているので、定価2000円のおもちゃを作る企業に許諾を出すよりも、大量の商品を全国規模で展開している100均に許諾を出すほうが利益は多くなるということにもなりうるからだ。

 そして、この「大量の商品を全国規模で販売できる」というのが、そもそも100均ビジネスが成立するキーだ。

「100均」は効率的なビジネスモデルだった

全国で大規模展開という会社の規模のメリットをいかして、大量の原材料を安く仕入れることが可能になっているのが、100均ショップが成立する一つの理由。原材料を作る企業も、100均のようにたくさんの量を一度に発注してくれる相手と仕事をしたほうが、安定した収入を得られますよね。100均が成立するもう一つの大きな理由は、商品の値段を固定化することで、すごく効率的なビジネスモデルになっているという点です。

 まず、広告費は基本0円。商品は基本すべて100円なので、『この商品はいくらで、今度セールで10%オフになる』などの広告を打つ必要がありません。また、品出しなども通常の形態のお店に比べると圧倒的にシンプルで、商品の値段を決めるなどの工程もないので人件費も抑えられています」

 とは言え、そんなとことん無駄を省いた100均ビジネスであっても、人気キャラクター商品を作るとその商品の原価は上がり、一見すると利益は減りそうだが……。

「これは、回転寿司を例にすると分かりやすいでしょう。回転寿司も基本的に一皿の金額は、100円~120円と統一している。ただ、使用する具材の原価が同じかと言われれば、全然違う。玉子やかっぱ巻きの原価は相当低いけれど、原価の高いマグロやハマチも同じ値段になっています。消費者は原価を考えて商品を選んでいるわけではないので、マグロを食べつつも、玉子などの原価の低いものも食べているので、全体の売り上げとしてみると原価のバランスが取れて利益が出ているから成立するんです」

 100均ショップで1人が一度に使う値段は、直近では600円程度という調査結果が出ている。そのなかにキャラクター商品が何点か含まれていても、そのほかはノンブランド商品なので、著作権料は発生せず原価が抑えられている。そのため、比較的、利益幅の薄いキャラクター商品を売ることができるのだ。

キャラクターたちが担う“目玉商品”の役割

「それなら、いっそのこと原価の高い商品を除いたほうが儲かるのでは?と思いがちですが、そうすると目玉商品がないのでお店の魅力が減ることになります。キャラクター商品を置くことで『100円でこれが買えるんだったら』とお客さんが来る理由になるんです」

 有名キャラクターのブランド価値をつけることで、その商品を目当てにお客さんが来る。100均ショップでは、前述したように一人あたり平均600円ほど使うため、結果的に原価の高いキャラクター商品が全体の利益アップにも貢献しているのだ。