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 スーパーやコンビニなどでセルフレジの導入が急速に進んでいる。2022年のスーパーマーケット年次統計調査によると、セルフレジの設置率(「設置店舗がある」と回答したスーパーの割合)は全体の25.2%。2020年の15.8%と比べると、コロナ禍でセルフレジの導入が一気に加速したことがわかる。

操作方法がわからない

 さらに、セミセルフレジ(バーコードスキャンは店員が行い、会計のみを自分で行うセルフ精算レジ)の設置率は75.1%となっており、実際に日々の買い物で使う機会も増えているはずだ。これまでの「会計は店員がやってくれるもの」という常識は、もはや通用しない時代となってきている。

「セルフレジの導入が進んだ背景には、コロナショックで非接触・非対面ニーズが高まったことと、人手不足を補いながら業務の効率化を図りたいという、2つの大きな要因があります。特に流通業界の人手不足の問題は非常に深刻で、セルフレジが今後さらに普及していくことは間違いありません」

 そう語るのは、流通ジャーナリストの石橋忠子さん。セルフレジの導入は店舗側に多くのメリットがある一方、使い方になじめず戸惑っている消費者が多いことも事実だ。そこで今回、全国1000人の男女を対象に「セルフレジで困ったこと」についてアンケート調査を実施したところ、セルフレジ普及の裏側でさまざまな問題が起きていることが判明。続々と寄せられた“悲痛な叫び”を紹介していこう。

 セルフレジの困り事として最も多かったのが「操作方法がわからない」という声。「あまり機械の操作に慣れておらず、まず何をしたら会計がスタートするのかさえわからなかった。使い方の説明書きも不十分で、結局ひとりでは何もできずに店員さんを呼ぶことになった」(62歳・広島県・女性)と、機械を触ることが苦手な人にはセルフレジは買い物の大きな障壁だ。

 また、タッチパネルなどの操作になじみのある若い世代と異なり、「どこがボタンなのかよくわからなかった」(66歳・京都府・男性)、「自分ではちゃんとやっているつもりでも、すぐにエラーが出てしまって申し訳ない気持ちになる。できれば有人レジを使いたい」(64歳・神奈川県・女性)など、機械の操作自体に苦手意識を持つ高齢者は思いのほか多いこともわかる。

「セルフレジへの苦情でいちばん多いのが、やはり操作方法にまつわる問題。特に初めて使う人にとっては、操作自体が難しいというのも仕方ありません。ただ、基本的には店員さんがサポートをしてくれる体制がありますし、困ったときのためにスタッフの呼び出しボタンがついていることがほとんど。

 あまり怖がらずに“初めてなので使い方を教えてもらえますか”と遠慮せずに声をかけて、まずは勇気を出して使ってみることも大切ですね」(石橋さん)

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 操作に戸惑っているのは高齢者ばかりではない。やり方はわかっていても、慣れない作業に対してストレスを感じるという声も上がっている。特に、「バーコードの読み取り感度が良すぎるのか、よく同じ商品が2度スキャンされてしまう。キャンセルには店員を呼ばなければならず、わずらわしい」(46歳・福岡県・男性)、「バーコードが見つけにくかったり、うまく読み取れない商品も多く、イライラしてしまいがち。なんだかんだで有人レジのほうがスムーズだなと感じます」(39歳・大阪府・女性)と、バーコードのスキャン作業では、多くの人が苦戦している様子。

 また、「お店によって使われている機械がバラバラで、そのたびに操作方法や支払い方法をいちいち確認しなくてはならず面倒くさい」(38歳・埼玉県・男性)、「近所のスーパーは重さを量りながらスキャン漏れがないかを確認する方式のセルフレジですが、かごの置き場所やスキャン済みの商品をどうすればいいかなど、本当に使い方がわかりにくかった」(51歳・東京都・女性)など、店舗ごとに使い方が異なるセルフレジに対しては、不満の声も根強い。

後ろの人の視線がストレスになる

「セルフレジだけを設置している店舗というのはまだ少なく、基本的には有人レジとの併用をしている店舗がほとんどです。購入する商品数が多い場合などは、慣れている店員さんにスキャンを任せたほうがスムーズに済むことも多いので、買い物の状況に合わせてセルフレジか有人レジか柔軟に選択することも必要ですね」(石橋さん)

 精算のみを自分で行うセミセルフレジに対しても、苦言が集まっている。「みんながスムーズに操作できるわけではないので、結局支払いのところで混雑している。ひとりの人がつっかえてしまうことで、長蛇の列ができていることもよくある」(36歳・大分県・男性)、「お年寄りなどは、店員さんがいる対面のレジでお金の受け渡しをしたほうが結果として早いのではと思う。精算時にもたもたされると迷惑です」(41歳・東京都・女性)など、多くが混雑にまつわるものだった。

 必要以上に待たされてしまうことはストレスだが、操作にもたついて待たせてしまう側の悲鳴も。「お金を投入する場所が見つからずにまごついたり、クレジットカードをうまく読み取ってくれなかったりすることもあり、後ろに並んでいる人の目が気になってストレスを感じる」(54歳・島根県・女性)、「小銭を多く入れすぎたのか、機械が止まってしまい、後ろの人に舌打ちされて嫌な思いをした」(34歳・東京都・女性)など、混雑時のセルフ精算レジは必要以上に焦ってしまうという人も多いようだ。

「日本は特に現金志向の人が多く、海外に比べるとキャッシュレス決済の普及が遅れていましたが、近年一気に普及が加速し、現金以外の決済方法が選べるお店も格段に増えました。

 実は、電子マネーやキャッシュレス決済は、意外にも高齢の方にとってのメリットも多く、目が悪くなって小銭を探すのに苦労したり、財布から現金を出し入れする動作が遅くなったりしてしまう高齢者にとっては利便性が高いんです。セミセルフレジと同時にキャッシュレス決済が普及することも、混雑緩和のひとつの解決手段になるかもしれません」(石橋さん)

電子マネー、現金、クレジットカードなど希望の方法で支払いづらいという声も上がっている

 非対面がメリットであるはずのセルフレジだが、逆に不便さを感じるという人も。「エラーが起きて店員を呼んだが、混雑時で忙しかったのか態度が悪く、不快感を覚えた」(47歳・東京都・男性)、「生理用品などは買いやすいが、タバコやお酒などはセルフレジでは購入できず、わざわざ店員さんを呼んだり、有人レジに並び直さなくてはいけないので不便」(35歳・佐賀県・女性)といった意見も少なくない。さらには、「スキャンをできていない商品があり、万引きと間違われて店員に呼び止められた。こちらのミスなので必死に謝ったものの、有人レジなら起きなかったことだと思うと悔しい」(50歳・兵庫県・女性)など、セルフレジならではのトラブルも新たに起こっている。

「お酒やタバコなどの年齢確認については、マイナンバーカードとの連携案が出されるなど、対応の動きもありますが、現状はまだセルフレジの課題です。店側も客側もメリットやデメリットをきちんと理解しながら活用していくことが大事になっていると思います」(石橋さん)

 ウィズコロナ時代を迎え、完全セルフレジ社会がくる日もそう遠くない。少しずつ慣れておくことが必要なのかも。

1000人アンケートでわかったセルフレジのイライラ体験

 セルフレジを使って困ったこと、イライラしたことは何か。全国1000人の男女に聞いた結果はこちら。2022年12月28日、ネットアンケートサービスFreeasyにて実施。

1位 操作方法がわからない 76件

 バーコードのスキャンの仕方、決済方法の選択、かごの置き場所など戸惑いの声が多数

2位 バーコードのスキャンがうまくいかない 61件

 商品のバーコードがうまく読み取れないという声のほか、2回スキャンしてしまったという声も

3位 混雑する、待ち時間が長い 56件

 操作方法に戸惑う人がいて、後ろがつかえてしまう、時間がかかってイライラしたという声が

4位 希望の支払い方法が使えない等 43件

 現金が使えなかったという声や、クーポンなどお得なサービスを使いづらかったという意見も

5位 店側の対応が不十分 39件

 操作がわからないときや機械が不具合を起こしたとき、店員がすぐに来なくて困ったという声が

6位 買いづらい商品がある 32件

 電子マネー、現金、クレジットカードなど希望の方法で支払いづらいという声も上がっている

1000人アンケートでわかったセルフレジのイライラ体験(2022年12月28日、ネットアンケートサービスFreeasyにて実施)
石橋忠子(いしばし・あつこ)●流通ジャーナリスト。一橋大学卒業。出版社勤務を経てフリーとなる。主に経済・ビジネス誌に執筆し、流通分野の記事が多数ある。著書に『グッドカンパニーへの挑戦』などがある

(取材・文/吉信 武)