堺雅人が昨年末を持って所属事務所『田辺エージェンシー』を退所して独立したことが報じられた。28年──四半世紀以上も所属した事務所を離れることに、なぜ今と疑問に思う人もいるだろうが、ベテラン俳優が事務所を退所して独立するのは特に珍しい話でもなく、しかも円満退社ということで、報道が出ても大きな騒ぎにはならなかった。
だが、事務所サイドから正式な発表はないままに公式サイトから堺のプロフィールページが削除されていたため、業界内では様々な憶測が飛んでいた。
そんな矢先に『週刊新潮』が大手芸能事務所・田辺エージェンシーの田邊昭知社長を直撃。同誌の取材に田辺社長はこう答えている。
《“独立して会社をやりたい”と彼が言うので、どうぞ、と。それだけです》
芸能界のドンの影響力
記事には堺が今年7月期にTBSの“日曜劇場”の枠(日曜9時)で放送されるドラマの主演に起用され、阿部寛と共演することが決まっているとも書かれている。記者による田邊氏への取材は続く。独立の理由について尋ねられると、語気を強めて、
《理由はわかんないよ。マネジメントを自分でやりたいと言うのだから、そういう人を引き留めてもうまくいくわけないじゃない。もう一緒に仕事なんてできないよ。自分でやりたいって言うのにさ、“君じゃダメ、僕じゃなきゃ”って誰が言えるんですか。(日曜劇場は)TBSと堺君で直接やってくれとなっていて、うちは関わっていません》
そう語ったという。
あくまでも記事から感じ取る田邊氏の口調だが、円満退社ではなかったように見えることから、業界内では堺の今後を不安視する声が出始めている。というのも、かねてから田邊氏は“芸能界のドン”、それも“ドン中のドン”と呼ばれているからだ。逆鱗に触れてしまったらタダで済むわけがないだろうと。彼のことを知る老舗芸能事務所の幹部はこう語る。
「芸能プロの社長になる前はザ・スパイダースの“バンマス(バンドマスター)”。一癖も二癖もあるメンバーをまとめるのは一筋縄ではいかなかったそうで、若いころは血気盛んだった聞きます。さすがにあの歳(84歳)なので今は当然穏やかなんだと思いますが、現在も芸能界における影響力は相当なものです。何かにつけて田邊社長の名前が浮上するのを見てもよくわかるでしょう」
『週刊新潮』直撃取材の舞台ウラ
だとすれば、恩義のある事務所を出ていった堺の今後も心配になるが、
「堺が干されることを心配する声がありますが、そんなことはないでしょう。同事務所の秘蔵っ子だった夏目三久と有吉弘行の交際報道が出たとき、“これで有吉は終わったな”とさんざん言われました。しかし何も起きませんでした。筋を通せばわかってくれる人ですし、事務所の横やりが入る時代ではなくなりましたから」(同・老舗芸能事務所幹部)
ではなぜ、『新潮』の取材にあのような突き放した言い方をしたのだろうか。
「そもそも田邊さんは、メディアの取材を受けないことで有名です。なんでも記者がダメもとで田邊さんの携帯に電話したところ、“出ないと思っていたら出ちゃった”と聞きました。急にかかってきた電話で、取材を意識していなかったのでしょう。また田邊さんの言っていることは一般論にも聞こえます。たしかに事務所を離れてしまったら一緒に仕事することはないですからね。一概に堺さんの退所に怒っているとは思えないのですが」(ワイドショースタッフ)
また、現在は別に“注力している”ことがあるようで、
「いま田邊さんは『私が女優になる日』という番組でTBSや秋元康さんらと組んで新たなスター発掘に力を注いでいます。自ら前に出てこのプロジェクトに取り組んでいるんだとか。堺さんにはもう十分働いてもらったし、古株の所属タレントに固執していないのでは。また田邊さんの息子さんは大手広告代理店に就職していて、後を継がないと聞いています。事務所は社員が後を継ぐか誰かに譲ることになるでしょう。それもあってか、残りの人生はやりたいことをやりたいと思っているのでは。ですから、今は所属タレントが退所することにどうこう言うことはないと思います」(前出・老舗芸能事務所幹部)
堺の今後を不安視する声はどうやら杞憂だったようだ。
<芸能ジャーナリスト・佐々木博之> ◎元フライデー記者。現在も週刊誌等で取材活動を続けており、テレビ・ラジオ番組などでコメンテーターとしても活躍中。