「ヤバい女になりたくない」そうおっしゃるあなた。有名人の言動を鋭く分析するライターの仁科友里さんによれば、すべてのオンナはヤバいもの。問題は「よいヤバさ」か「悪いヤバさ」か。この連載では、仁科さんがさまざまなタイプの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」を分析していきます。
『3時のヒロイン』福田麻貴

第81回 『3時のヒロイン』福田麻貴

「もう一軒行きましょうよ」と・・・岡田将生&「3時のヒロイン」福田麻貴が「ハシゴ酒デート」イケメン俳優に甘える意外な女性を発見撮!

 2023年1月6・13日号「FRIDAY」の何とも意味深なタイトルの記事ですが、読んでみるとなんてことはない、俳優・岡田将生と「3時のヒロイン」福田麻貴が一緒にお酒を飲んだだけのことなのでした。

 しかし、タイミングがいいというか悪いというべきか。2023年1月8日配信「NEWSポストセブン」によると、二人がお酒を飲んでいたのは、岡田が交際を噂されていたフジテレビ・鈴木唯アナの誕生日だったそう。岡田と鈴木アナは破局が報じられていますが、誕生日というイベントの日に鈴木アナではなく、福田サンと過ごしたことから略奪ではないかと見る人もいるようです。

'19年8月、朝ドラ『なつぞら』の打ち上げに参加した岡田将生、中川大志、藤本沙紀

「ナイーブだから記事は見ない」

 福田サンはインスタグラムのストーリーズで「ファンの方、優しいの嬉しいけど、私ネット見てないから、何か言われてるの教えてくれるのやめて。それで知っちゃう。あと多分、記事のことで言われてるんだろうけど、まず書かれてることが事実と全然違いますぅ!」「私ナイーブなんで見ないようにしているんです!だから見ていないということを念頭に置いて応援してください」とアップし、詳細の説明は避けています。

 交際相手のいる人や既婚者とお酒を飲んだくらいで、“略奪”呼ばわりされたらたまったものではありませんし、何も福田サンが嫌がる相手の首に縄を付けて、飲みにつれて行ったわけではないでしょう。鈴木アナの誕生日に飲みに行くなんて!という声もあるようですが、彼女のいる人と飲みに行くときに、彼女が誕生日かどうかを福田サンが確認するのは現実的ではありません。福田サンがヤバい扱いされるのは気の毒だなと思います。

 その一方で福田サンも「芸能人として」ちょっと過剰反応というか不誠実だとも思うのです。

 彼女は「3時のヒロイン」のリーダーとして、番組内で二人の相方にキツめのダメ出しをすることもありますし、「グッとラック!」(TBS系)や「ホップUP!」(フジテレビ系)のコメンテーターを務めて、週刊誌などの報道をもとに自分の意見を言ってきました。仕事だから、そういう役割を引き受けてきただけのことでしょうが、このまま、彼女が身に覚えがないのに沈黙を守っていると「人にはいろいろ言うけど、自分のときはダンマリかい」と面倒くさい人と思う人も出てくるでしょう。記事を読めば、二人に怪しいことがなかったことはわかるわけですから、さらっと「こういうことだったんですよ」と説明しないと「本当は岡田とどうにかなりたいという気持ちがあった」「写真に撮られたのがまんざらでもないんだろう」というさらなる憶測をよんでしまうかもしれません。

サバサバしているオンナはこの世にいない

 しかし、時すでに遅し。「私ナイーブなんで」という福田サンの弁は、SNSでは「私ってサバサバなんで」に置き換わってしまっているようです。「私ってサバサバしてる」と自称するサバサバ女子とは、性格的にさっぱりとしていて陰湿なところがまるでないため、女性より男性のほうがつきあいやすい。だからオトコ友達のほうが多いと自ら言う女子を指します。なぜ女性の性質がねっちょりで男性がさっぱりと二分されているかは謎ですが(それは性別ではなく、個人の問題なはず)、それはさておき、よく見ていると、案外自称サバサバのほうがサバサバを口実に、男性に接近していることが透けて見えることもある。その面倒くささから、自称サバサバは「オンナに嫌われるオンナ」としてみなされ、「あの人はあんなこと言っているけれど、自称サバサバだ」と言われてしまうのですが、ここで「亀の甲より年の功」で言わせてください。

 サバサバしているオンナなんて、この世にひとりもいませんことよ。

 私の記憶が正しければ、サバサバしているキャラが台頭したのは、約10年前。当時は女優・篠原涼子や鈴木砂羽がその代表格と言われていました。その二人を起用したのが、ドラマ「オトナ女子」(フジテレビ系)でした。篠原は仕事はできるものの、男性には甘え下手、後輩女子からはこっそり「イタい」と呼ばれている40代の女性を演じています。男性に甘えたいけれど、甘えられない。こんな時に「どうして私は甘えられないのだろう」と関心を自分に向ける人と、「いいトシをして男性に甘えたいなんてバレたら、周囲におかしい人と思われてしまうのではないか」と他人からの評価を気にしてしまう人がいます。

篠原涼子

 いくつになっても異性によく見られたい、甘えたいという気持ちは全く恥ずかしいものではないと私は思いますが、「他人にどう見られているか」に敏感すぎる人は、「男性に甘えたい自分は、周囲にイタいと思われてしまう」と決めつけて、だからこそ、甘えない自分、つまりサバサバを自分から演じてしまうのではないでしょうか。けれどもサバサバを演じたところで「男性に甘えたい」という願望そのものがなくなるわけではないので、ふとした瞬間にそれが駄々洩れてしまう。その結果、はたから見ると「サバサバを自称しているけれど、実はねっちょりしていて面倒くさい」と思われてしまうのです。

3時のヒロイン(左から)ゆめっち、福田麻貴、かなで

 積極的に自分のかわいらしさをアピールする“ぶりっ子”は「ともかく男性に好かれたい、同性にどう思われてもいい」というメンタルの強さや潔さを持っていますが、サバサバは「異性によく思われたいが、同性にも悪く言われるのは嫌」という強欲と気弱さを同時に抱えています。

 つまり、サバサバの源泉は「他人にどう見られているかを気にしすぎてしまう」ことだと言えるでしょう。無人島に住んでいるわけでない限り、人目を気にしないことは不可能ですが、この気持ちが強すぎると、誰も何も言ってないのに「私のことを周囲が笑っている」というふうに被害妄想的な思考に陥ったり、反対に急に攻撃的になることがあるので本人も周囲も注意が必要です。

 さて、サバサバしているオンナなんていないと書きましたが、男性だってサバサバしている人はいないと思います。自分をフったあの子、不合格だった学校や内定をくれなかった会社、そんなに仕事が出来ているように見えない同僚が評価されているのを目の当たりにすれば、ねっちょりすることでしょう。真正サバサバという言葉もありますが、それも本当にサバけているわけではなく、「単にその人や事柄に興味がない、もしくは終わったことなのでどうでもよくなった」だけであり、人はねっちょりとサバサバを繰り返して生きているのだと思います。

自称サバサバというキャラ偽装

 男女ともサバけてなんていないのに、なぜ女性の自称サバサバばかりが話題になるのかというと、それは女性をとりまく圧と関係があるのではないでしょうか。上述したとおり、「オトナ女子」のイタいと笑われる主人公は40代、現在NHKで放映中のドラマ「ワタシってサバサバしてるから」の自称サバサバの主人公はふくよかな体型をしています。「女性は若くて、細身が正統である」という考えが強いからこそ、若くない、細身でない女性が男性と親しくなりたいときに、口実というか秘策が必要となり、それが自称サバサバというキャラ偽装なのだと思います。努力で体型は保てたとしても、加齢は避けられません。ですから、すべての女性は自称サバサバ予備軍となり、サバサバ被害が頻発するのでしょう。

  さて、福田サンに話を戻しましょう。芸能活動のボーダーレス化と言うべきか、近年、芸人の活動は目覚ましく、情報番組のコメンテーターやドラマ、文筆業と幅広い活躍をしています。今や女子アナより、芸人になるほうが人気者への近道と言っていいのかもしれません。

福田サンは「国民の女友達」になれるのか

 オンナ芸人として大成するかどうかは「国民の女友達」になれるかにかかっているのではないかと私は思いますが、そこを目指すのであれば自サバのイメージはつかないに越したことはない。福田サンも今後ますますイケメン俳優との共演や交友が増えてくると思いますが、本心は別として、タイミングよく事実だけ伝えることをおすすめしたいと思います。