「びっくりしました。YouTubeでも『歌ってみた』という企画をやっているので、“いつかカバーアルバムのようなものができたらいいよねえ”と、仲間内で話してはいたんですが、まさかオファーしていただけるとは想像していなくて」
1月25日にカバーアルバム『セカンドプロポーズ』をリリースする宮迫博之。レコード会社からオファーを受けたときの気持ちを、こう振り返る。山口智充との音楽デュオ“くず”や『歌ってみた』企画などで歌のうまさは折り紙付きだが、今作は想像を上回る名盤。シャ乱Qやさだまさしなど、珠玉の名曲のカバー10曲+オリジナル曲『セカンドプロポーズ』で、歌ウマ芸人・宮迫の真骨頂を心ゆくまで堪能できる。
“嫁迫”にサプライズしなくなった理由
“セカンドプロポーズ”というコンセプトは本人発案。
「結婚するとき、きちんと“結婚してください”と言ってなかったので、あらためてセカンドプロポーズとして、その思いを伝えたいなと。カバーした楽曲も、出会った19~20歳のころにカラオケボックスでよく歌っていた曲など、嫁との思い出の曲が多いんですよね」
ジャケットは、ボックスを開けて指輪を差し出しているような写真。この指輪は以前、宮迫が妻にプレゼントしたものだという。もしかして実際の結婚指輪?
「いやいや、当時は僕がどん底だったので、とても買えませんでした(笑)。誕生日かクリスマスか? ちょっと忘れてしまいましたけど。嫁はこれがいちばん気に入ってるんじゃないかなあ。指輪は何個かプレゼントしているので、どれがいいか、家で一緒に選びました。これは一粒ダイヤでプロポーズっぽく、“映えそうやなあ”と」
昔から、誕生日や結婚記念日などに、サプライズをすることが好きだったという宮迫。だが、今はもうしなくなったという。そのワケは?
「あるとき、高級イタリアンでサプライズをしたんです。ちょうど話題のカルパッチョが出てきたタイミングで、僕が“ちょっとお腹痛いわ”って席を立って。で、帰ってきて“おい! トイレの隣におまえの欲しがっていたカバンが置いてあったぞ!”って、やったんですね。
そしたら、“え、ありがとう”って言いながら、カルパッチョを取ったんですよ! “おい! 完全に(気持ちが)カルパッチョに行っとるやんけ!”“あー、ごめんごめん”“もうサプライズせえへんからな!”となって、普通にプレゼントをあげるだけにしました(笑)」
今年で結婚25周年を迎える
“嫁迫”として宮迫のYouTubeに仮面をつけて登場することもある妻は、彼にとってどんな存在なのだろう?
「出会って30年以上。運命を変えてくれた人ですね」
出会いは19歳。友達の紹介で、当時はまさか結婚するとは思っていなかったと振り返る。
「僕は高校卒業までサッカーばかりやっていて、遊ぶことを知らなかったんです。その反動で卒業後、お笑いでやっていくと決めたにもかかわらず、むちゃくちゃ遊ぶようになって。そんな時期に出会った彼女は、今まで出会ってきた女性と全然違う人だったんです。清楚なお嬢様でクラシックバレエをやっていて、本当にちゃんとした人。ひと目惚れでもあるし、“自分もちゃんとしよう!”と思えた。そこからお笑いに集中できるようになって、“天然素材”に入れていただいたり、いい方向に急に変わっていったんです」
その後、東京に進出。だが、仕事がなくどん底の苦しみを味わう。そんな時期に、大阪から“結婚するか、もう二度と会わないか、どっちか決めて”と電話が。
「番組とかで話してるんですけど、だいぶ端折っているので“もっといろいろあったやろ!”って何回か怒られてます(笑)。でも、大まかな流れはそんな感じですね。この状態の俺に、よう結婚って言うねえ、というときに結婚して。そしてまた、お仕事が来るようになったんですよね」
雨上がり決死隊としての成功、そこからの闇営業問題や事務所退所、YouTubeのスタート、コンビ解散……。まさに“病めるときも健やかなるときも、富めるときも貧しきときも”宮迫を支えてきた妻。ラスト曲の『セカンドプロポーズ』には、“ごめんな”“ありがとう”という、彼の率直な思いが詰まっている。
今年は結婚25周年、銀婚式だ。
「嫁がフレンチが好きで、“25周年はフレンチが食べたい”と言っているので、どこか喜んでくれるようなところを予約しようかなと思ってます。あと、“社交ダンスしよう”って事あるごとに言ってくるんで、もうちょっと年いったら一緒にやろうかな。そんなんもええかなあ」
<アルバム全曲解説>
1 シングルベッド(シャ乱Q)
「シャ乱Qはデビューが同じ時期で年も近く、仲が良かったんです。当時、よく歌ってましたね。すてきな曲なので、おこがましいですけど、今の時代にも伝えたいなという意味も含めて1曲目に」
2 ひまわりの約束(秦基博)
「単純に、この曲が好きで。でも、歌えると思い込んでたんですけど、レコーディングのときに実はサビしか歌えないことが発覚。みんなもびっくりしてましたけど、自分がいちばんびっくりしました(笑)」
3 オワリはじまり(かりゆし58)
「『行列のできる法律相談所』で、かりゆし58さんの演奏を目の前で聴いて、ものすごく感動した思い出があります」
4 哀 戦士(井上大輔)
「これはもう、ファーストガンダムファンなので。カラオケに行ったら必ず歌います。好きなのはランバ・ラルやスレッガー中尉。サブの渋いキャラが好き」
5 TRUE LOVE(藤井フミヤ)
「奥さんにリクエストされてよく歌っていた曲。“声が曲に合っている”と言ってもらった記憶がありますね。あと、中学のころフミヤさんの髪型にしようと髪を伸ばして、そこで初めて自分がくせ毛だと知ったんです。前髪も後ろもクリ~ンとなってしまって、すぐ短髪にしました」
6 Missing(久保田利伸)
「これも奥さんと出会ったころ、よく歌っていました。当時、カラオケパブでバイトをしていて、お客さんからもリクエストされたな。久保田さんと似たような髪型だったので、似てると言われて調子に乗って歌ってました(笑)」
7 GLORIA(ZIGGY)
「これもよう歌ってたなあ。ただ、昔は大丈夫だったんですけど、今回のレコーディングでちょっと酸欠に。ブレス(息つぎ)するポイントが少ないんですよ。若いときはみんなで一緒に歌っていたから、ひとりで歌ったらこんなにしんどいのかと」
8 道化師のソネット(さだまさし)
「子どものころから大好きで、アルバムをカセットで買って、この曲ばかり聴いていました。“笑ってよ 君のために”とか“それぞれの高さ目指して”とか、詞がしみるんです」
9 LOVE LOVE LOVE(DREAMS COME TRUE)
「ドラマ『愛していると言ってくれ』が大好きで。エンディングで毎回かかって、ええ歌やなあと。カラオケでもよく歌ってました」
10 雨あがりの夜空に(RCサクセション)
「コンビ名の由来であり、出囃子で使わせていただいていた曲。清志郎さんが大好きなんです。“コンビの名前で使ってくれているんでしょ?”という言葉をいただいて、すごく感動した思い出が。あと、竹中直人さんの誕生日会で、最後に清志郎さんがこの曲を歌ってシメという場面で、清志郎さんと竹中さんに呼んでいただいて、一緒に歌ったことがあるんです。一生の思い出ですね。なので、どうしてもこの曲は入れたかったんです」
11 セカンドプロポーズ(オリジナル曲)
「嫁は、“ええやん!”って言って、すごい喜んでました(照れ)」
Cover Album『セカンドプロポーズ』
(1月25日発売 3000円 徳間ジャパンコミュニケーションズ)