山Pこと、山下智久の新たな主演作が決まった。日韓共作の恋愛映画で、目が見えなくなる漫画家を演じるという。
2020年10月、ジャニーズ事務所を退所した山P。昨年は主演ドラマ『正直不動産』(NHK総合)がヒットし、全裸で敵役を演じた『今際の国のアリス』シーズン2も好評を博した。
その一方で、わずか30秒のチョイ役ながら出演したハリウッドデビュー映画が配信のみになってしまったり、別の映画が製作中止になったりと、不運にも見舞われている。
そもそも、ジャニーズ退所は一大事。最近は「辞めジャニ」という言葉が生まれるほど、退所組も目立つが、この言葉はまた、ジャニーズを辞めることが芸能界でのポジションを大きく変えることを示している。
その点、彼はよくやっているほうだ。ただ、その活動には、以前からどこか中途半端な印象がつきまとう。歌では『青春アミーゴ』(修二と彰)、ドラマでは『コード・ブルー ―ドクターヘリ緊急救命―』(フジテレビ系)のような大ヒット作を持つ一方で、トータルに見ると、不完全燃焼な気がしてしまうのだ。
かつて所属したグループ『NEWS』の迷走で
退所の2か月前には、年齢を偽っていた未成年女性との飲酒やお泊まりを報じられ、活動を自粛。そこから海外進出もにらんでの決断となったが、あまりカッコいい辞め方ではなかった。
そんな芸能人生になっている原因として、避けて通れないのが、かつて所属したグループ『NEWS』の迷走だ。
9人で結成されたものの、6人が脱退。光GENJIと並び、史上最も多くの「辞めジャニ」を輩出したグループでもある。
その成り立ちについては、当初「期間限定ユニット」だったという話がある。ジャニーズJr.でダントツ人気だった山Pを売り出すべく、とりあえず「CD1枚」の予定でつくってみたとのこと。
実際、グループ名が決まるまでは、彼の名字から「Yプロジェクト」と呼ばれていたともいわれ、最初のシングルはセブン-イレブン独占販売という変則的なリリースだった。本格デビューは、その半年後だ。また、彼とともにJr.内ユニットを組み、彼に次ぐ人気者だった生田斗真や風間俊介はあえて外されていた。つまり、山Pとそれ以外のメンバーには格差が存在したわけだ。
グループ向きではなかった彼の8年間は
彼が脱退した4年後には、小山慶一郎がテレビでこんな自虐的発言をしている。
「『○○の愉快な仲間たち』の“愉快な仲間”だけしか残ってない」(『櫻井有吉アブナイ夜会』TBS系)
〇〇に入るのが、山Pなのは言うまでもない。
そんな成り立ちのせいか、NEWSは足並みがそろわず、メンバーの不祥事による活動休止も経験。それでも、彼はソロで結果を出し続け、格差は埋まらなかった。
ただ、彼自身、グループ向きではなかったようにも思える。迷走するグループの中で活動した8年間は、やや窮屈だったのではないか。脱退後は積極的に海外進出を目指したが、欲張りすぎた感もあり、また、どうせならいっそ、もっと早く退所する手もあっただろう。
ジャニーズを辞めるという転機の活かし方についても、いまひとつだった印象だ。
とはいえ、新旧メンバーを通じ、誰より「ニュース」になるのは今なお山P。いや、こんなふうにグループ名を絡めた語り方をされ続けるのはおそらく不本意だろう。
そうされないほど圧倒的な存在になること。そのとき初めて、転機を活かせたといえるのかもしれない。
ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)