1月27日に公開した木村拓哉主演映画『レジェンド&バタフライ』(『THE LEGEND & BUTTERFLY』、東映)。木村にとって『武士の一分』(2006年、松竹)、『無限の住人』(2017年、ワーナー・ブラザーズ)に次ぐ3作目の時代劇映画となる。
「東映70周年記念作品」として封切りされるだけに木村に寄せる期待は大きく、投じた総製作費は20億円。さらにヒロイン役の“濃姫”には人気女優・綾瀬はるかを据えるなど万全のお膳立て。
そして連日にわたってテレビ出演する、木村と綾瀬による“番宣”行脚だ。
「木村さんに至っては、キー局全てに顔出しする力の入れよう。以前はゲスト出演の際にはピリッとした雰囲気に包まれたものですが、収録外でも笑顔を絶やさずに他の共演者を気遣っていたといいます。
何としても映画を成功させたい、尽力してくれた太秦・京都撮影所のスタッフに報いたい気持ちが十分に伝わりますね」(テレビ誌編集者)
1月21日から23日にかけては愛知、岐阜、福岡、京都の4都市をめぐる公開記念キャンペーンにも参加。最終日に“凱旋”した京都では映画スタッフと再会し、改めてねぎらいの言葉をかけたという木村。
もちろん、映画出演も仕事である以上は結果、数字も求められる。
小栗旬の『信長協奏曲』は46億円
「当面の目標は製作費の倍額、興行収入40億円超えになるのでは? まずは“信長映画”としてのトップを狙いたい」とは、興行面にも精通する映画ライター。
日本映画において最も観られた織田信長題材の映画は、小栗旬主演の『信長協奏曲』(2016年、東宝)。興行収入は46億円超えと、木村の『HERO(2)』(2015年、東宝)や『マスカレード・ホテル』(2019年、東宝)とほぼ同額とのこと。なるほど、現実的な数字と言えよう。
「達成するには1月27日から土日を含めた3日間で動員数50万人、興収6億円には届かせておきたい。まずはランキング1位の獲得で注目を集めてロケットスタートを切りたいところ」(前出・映画ライター)
ところが、大きな“壁”が立ち塞がる可能性も。2022年12月に公開したアニメ映画『THE FIRST SLAM DUNK』(東映)が、8週連続の1位を達成中で興収89億円超えを記録。このまま9週、10週となれば、100億円突破も現実味を帯びる大ヒット作だ。
そして翌週の2月3日には、興収400億円超えの『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』(2020年、東宝/アニプレックス)の続編となる、『鬼滅の刃 上弦集結、そして刀鍛冶の里へ』が公開を控えている。
新シリーズ放送を4月に控えた映画『鬼滅』の2作目は、テレビ版「遊郭編」のクライマックスと、新たに「刀鍛冶の里編」第1話を収めて公開するイレギュラー作。それでもテレビ放送を待ちきれない、多くのファンが足を運ぶのは必至。
SNSのトレンド入りで「見なきゃ」
『レジェンド&バタフライ』とはジャンルが違うとはいえども、大ヒットを狙うには『スラダン』や『鬼滅』のアニメ勢に打ち勝つことが最低条件となりそう。
「『レジェバタ』目当てに劇場に足を運ぶのは、現時点でおそらくは木村さんや時代劇、歴史ファンが中心。さすがに“レジェンド”の『無限列車編』超えは困難でしょうが、“先のムーブメント”を再現できれば近づけるかも」
企業マーケティングを担当する広告代理店営業マンが言う“ムーブメント”とは、2022年11月に開催された岐阜県岐阜市の『ぎふ信長まつり』のこと。“信長”に扮装してパレードに参加した木村を見たさに詰めかけたのは、同市人口を上回る46万人。それ以上に、観覧チケットを求めて96万人以上が応募するなど、連日にわたっての“信長パニック”がニュースなどで伝えられた。
「この大きな“ムーブ”を生んだのが、今や“口コミ”の役割を果たしているツイッター等のSNS。大スターである木村さんが“地元に来る、見れる”との投稿が徐々に拡散されていく内に、特別ファンでない人にも“見なきゃ”という気持ちにさせて、市内外、県外に広がっていきました。
映画でも『鬼滅』や『スラダン』に通じるのは、大宣伝を打ったわけではなく、映画の話題や感想を投稿するユーザーが多くて自然とSNSのトレンドに上がったこと。こうなると、今まで作品に触れたことがないライト層も“観なきゃ”とばかりに、ブームに動かされて劇場に足を運ぶ流れができます」(前出・広告代理店営業マン、以下同)
若い世代の興味を引くために
もちろん、作品自体がおもしろいのは大前提だが、他にも『鬼滅』の登場キャラクターをネタにした動画がTikTokでバズったり、影響力があるインフルエンサーが勧めていたことも若い世代の興味を引いた一因になり得たとも。
近年のロングランヒットの傾向として、初動でランキング1位を獲得する以上に、公開後いかにSNSで話題にされているか、トレンドに上がってくるかが重要視されているようだ。
「『レジェバタ』はツイッターで情報発信こそしていますが、それ以外は積極的にSNSマーケティングを仕掛けるというよりも、これまでと同様にテレビ露出による番宣、そして全国の劇場を舞台挨拶で回る“アナログ戦術”を優先しているように見えます。
物作りのプロたちと完成させた作品に自信があるのでしょうが、そもそも若者世代はテレビを見ませんからね。レジェンド級の大ヒット作を狙うのならば、例えば木村さんらによる“信長TikTok”の展開など、もっと固定ファン以外に向けたアプローチをするのもおもしろいのかなと」
天下統一に向けて、木村信長はどんな戦術を仕掛けていくのだろうか。