日曜劇場『GetReady!』(番組公式HPより)

 TBSの日曜劇場と言えば『下町ロケット』『半沢直樹』など、現実的な社会派ドラマを思い浮かべる人も多いだろう。内容が作りこまれたものが多く、時には『JIN-仁-』『テセウスの船』のような視聴者の涙を誘う話も。しかし、今回の日曜劇場は一味違うようで――。

 今期の日曜劇場は『Get Ready!』(TBS系)。メインの登場人物は、孤高の天才執刀医・エース(妻夫木聡)、神出鬼没の交渉人・ジョーカー(藤原竜也)、凄腕オペナース・クイーン(松下奈緒)、若き万能ハッカー・スペード(日向亘)である。主人公エース(本名:波佐間永介)は報酬の額ではなく、「その患者に生き延びる価値はあるのか」を判断基準にオペで助けるか否かを判断するこだわりを持つ。素顔を隠し、多額の報酬と引き換えに日本で認可されていない最新技術を駆使して、患者の命を救うべく奔走する4人の闇医者チームによる医療エンターテインメントだ。

ありえない医療シーンに……

 毎話ごとのゲストには柄本明、三浦貴大など豪華な俳優陣が名を連ね、“生きる意味を問う”異色のヒューマンドラマに深みを出している。ぶれない主人公のまっすぐな考え方や患者たちのエピソードに、

「医師として一本芯のあるエースの考え方がかっこいい。過去に何があったのか気になる」

「闇医者が主人公のドラマは斬新。自分が生かされている意味を考えちゃう」

「当たり前に生きてた日常が奪われ、もう先が長くないと分かったとき、その人の真価が問われるんだね。考えさせられる…」

 と感動する声が相次いでいる。

 しかし、医療シーンに関しては「設定が謎すぎる」と困惑の声が多数。特に医療従事者とって、現実との乖離があり、疑問を感じざるを得ない場面が繰り広げられているようだ。

 例えば、1話ではiPS細胞によって肺区域のブロックごとに作られた人工臓器“iPSブロック肺”を移植するという未知の術式を披露。“iPSブロック肺”を素早く繋ぎ合わせて特発性間質性肺炎を治療するシーンに対し、医療従事者からは

「最先端の手術とはいえ、さすがにやりすぎな設定すぎて苦笑いなんだけど…」

「違和感しかないわ。でも医療従事者じゃない人は、実情知らずに楽しめる部分もあるのかも」

「将来、技術的には可能になるのかもしれないけど、謎設定すぎてちょっとついていけないな」

「執刀医とオペナースの2人であの大手術を?あんなたくさんの種類の医療器具のメンテナンスは誰がしているの?とかいらんことばっか気になった」

「いや、医療監修してんのどこだよ」

 と散々な言われよう。

「看護師なのに執刀もするの!?」

 第3話ではオペナースのクイーンがエースと同時に別箇所を執刀する描写があり、

「え、クイーンさん執刀もできるんすか」

「看護師なのに執刀もするの!? さすが闇医者業界」

「クイーン、執刀するってことは医師と看護師の免許2本り!?」

  といったの意見も。一方で、

「手術室にアレクサいるやん…斬新すぎて、一周回って好き」

「AIにより、コメディカルや麻酔科医が要らない世界にまで突入しちゃってるのね」

「医療シーンここまでぶっ飛んでると逆に面白いわ」

「医療従事者だからこそ、こんな最先端の技術があればどんなにいいかと観ながら思った」

「ストーリー設定はとんちんかんだけど、生きていくべき命、それに値しない命を選んでいるというところは妙に現実的」

 など、ドラマ独自の設定を楽しむ医療従事者もいるようだ。

 ちなみに以前、同じくTBSドラマ『ブラックジャックによろしく』で研修医を演じた経験があり、今回は闇医者を演じる妻夫木。「医療ロボット」「iPS細胞」などの現代医療、それを飛び越えた近未来をも感じさせる『ブラック・ジャック』の世界線に関連させて、

「ビジュアル的に『ブラックジャックによろしく』の研修医・斉藤英二郎の未来の姿なのか…?私が思うに、研修医時代にいろいろあって闇医者になったんだと思うわ」

「ブラックジャックの名前が間黒男(はざまくろお)、今回の役が波佐間永介(はざまえいすけ)。絶対ねらってるでしょ」

「ドクター・キリコとかも出てきたりして…」

「この感じだと、ピノコ出てくるんじゃないか?」

 といった、想像を膨らませるコメントも散見された。

石原さとみ主演『アンサングシンデレラ』でも

 そもそも、医療ドラマに対する医療従事者の目は厳しい。実際、2020年に放送された『アンサングシンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ系)で薬剤師を演じる石原さとみの役柄に対し、

「調剤の忙しい時に、なに患者に会いに行っちゃってんの?」

「看護師を差し置いて、薬剤師が心臓マッサージまでやるのはありえない」

「あれほとんど医師や看護師の仕事だよ。薬剤師が病気を見つけるのは現実的ではない」

「薬剤師を無理やり主人公にさせて医療現場をかっこよく見せている印象。そんなキラキラしてないのよ、だから医療ドラマは見たくないんだよね」

 など現実との矛盾を指摘する声が集まった過去も。ドラマだからフィクションとは分かっているものの、毎日現場で責任をもって働いている彼らだからこそ、誰よりも医療ドラマの設定不備が気になるのだろう。

 いつもの日曜劇場とは打って変わって、近未来な医療シーンが繰り広げられる『Get Ready!』。奇をてらった理由が第4話以降に明らかになるのか、それとも……謎が深まるばかりである。

 
藤原は時折、人目を気にしていたが、妻と子どもに寄り添いながら楽しそうに話していた

 

夫婦で楽しそうに話しながら店を後に

 

’18年の日本アカデミー賞授賞式では、妻夫木とのレアなツーショットを披露した(藤原竜也公式ツイッターより)

 

役作りの一環なのか、マンガを熟読する藤原竜也