左から滝沢秀明、平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太

 副社長だった滝沢秀明氏(40)がジャニーズ事務所を退社して約3か月が過ぎた。その後、King & Princeの岸優太(27)、平野紫耀(25)、神宮寺勇太(25)の退所が発表され、さらにSexy Zoneのマリウス葉(22)が引退。ジャニーズJr.内のユニットIMPACTorsも7人全員が退所することになった。

 このため「ジャニーズ帝国崩壊」などとも言われるが、実際のところ、どうなのだろう?「崩壊」は2016年のSMAP解散騒動時にも叫ばれたものの、事務所は続いている。今回はどうなのか。企業としてのジャニーズ事務所を検証してみたい。

ジャニーズ事務所、企業としてはどうなのか

 カリスマ社長だったジャニー喜多川氏(享年87)が2019年に他界し、姉で名誉会長だったメリー喜多川氏が一昨年に亡くなった後、複数の民放幹部は「ジャニーズ事務所は資産管理会社になるのではないか」と読んでいた。

 メリー氏の長女で現社長の藤島ジュリー景子氏(56)が芸能ビジネスから撤退し、資産の管理に専念するのではないかと予測したのである。

 そう見られたのはジュリー社長は芸能界の荒波をくぐり抜けたジャニー氏、メリー氏とは違い、元フジテレビ役員秘書のお嬢様と思われていたせいだ。さらに事務所の資産が莫大なので、「今さら苦労の多い芸能ビジネスをやらなくたって」という考え方も背景にはあった。

 その資産は確かに巨額。まず不動産を確認したい。東京・港区赤坂にある本社ビルは地上6階建で威容を誇っている。資本金1000万円で従業員200人弱の企業なのだが、とてもそうとは思えない。

 それもそのはず。2018年までは大手レコード会社のソニー・ミュージックエンタテインメントが本社として使っていた。だからスタジオも完備されている。芸能事務所で一番立派な本社ビルである。

 劇場「東京グローブ座」(新宿区百人町)も所有している。客席は3階まであり、収容人数は約700人。最上質の音響設備を誇る。ここで三宅健(43)の主演劇や関ジャニ8の大倉忠義(37)がプロデュースした関西Jr.内ユニットのAmBitiousなどの公演が行われる。コンサートも出来る。

 ほかに港区赤坂の旧本社ビルなどがあり、少なくとも8つのビルと劇場を持つ。すべて都心の1等地にあり、資産価値は推定数百億円。本社ビルだけでも100億円前後になる。

ファンクラブやCMで余裕の億超え

 年間売り上げ額は非公開であるものの、業界トップの1000億円以上に達していると芸能界内でささやかれている。なぜ、こんなにも売り上げが多いかというと、理由は単純。売れっ子が多いからである。

 ファンクラブのあるグループはKAT-TUN、Sexy Zoneなど17つ。世間一般から「誰、それ?」と言われるレベルのグループはない。すべて売れている。

 同じく個人は木村拓哉(50)ら3人。これだけ人気者がいると、事務所としては心強いだろう。テレビ局や映画制作会社に強い発言力が持てる。

木村拓哉

 ファンクラブの年会費は4000円(1年目はプラス入会金1000円)。1個人、1グループに5万人ずつ会員がいたら、計100万人。年会費総額は40億円になる。グループのファンクラブ会員は5万人以上いるはずだから、実際の年会費総額はもっと上に違いない。

 もちろん本業の売り上げもある。CDやチケット、グッズの販売。さらに、テレビ、映画の出演料、CMの契約金など。1000億円以上の売り上げがあったとしても納得である。

 不動産以外の資産も「数千億円ある」(芸能事務所幹部)と言われている。財務面では超優良企業なのだ。ジュリー社長が芸能ビジネスへの関心を失わない限り、あるいは投資にでも失敗しなかったら、ジャニーズ帝国は崩壊するどころか、少なくとも10年先、20年先までは継続するに違いない。

 社会貢献度も芸能事務所の中では一番。ノブレス・オブリージュ(財産・権力・地位を持つ者は相応の社会的責任や義務を負う)は果たしている。阪神・淡路大震災(1995年)の被災地に8億円以上を寄附したのを始め、自然災害に襲われた被災者、コロナ禍の医療現場への支援を続けており、寄附総額は約27年間で100億円を軽く超えている。

 もっとも、副社長だった滝沢氏の退所はやっぱり痛い。暗い影をさしている。滝沢氏が担っていたジュニアの育成は井ノ原快彦(46)ジャニーズアイランド社長に引き継がれたものの、その手腕は未知数である。

 またジャニー氏は滝沢氏の「未来のスターを見抜く能力」も買い、自分の後継者に指名したが、これも井ノ原やほかの誰かが代役を果たせるかどうかは分からない。

「ジャニーさんは女子高生の目を持つ」

 ジャニー氏の眼力は凄まじかった。ファンならご存じの通り、滝沢氏や松本潤(39)らは10代前半のころは突出した存在には見えなかった。ところが、ジャニーさんはやがてスターになると確信していた。

 音楽業界などでは「ジャニーさんは女子高生の目を持つ」と言われた。確かに女子高生が「この子はカッコ良くなる」と評した少年は男前になることが珍しくない。ジャニー氏はセンス抜群だった。

ジャニーさんは、“子どもたち”がオリンピックに関わるのが夢だった

 そのジャニー氏が他界し、滝沢氏も去った後、誰が将来のスターを見抜けるのか。事務所の大きな課題に違いない。

 滝沢氏はテレビ各局のトップを相手とする営業活動、タレントらの相談相手なども1人で務めていた。営業はほかの人間も代わりが務まるだろうが、タレントの相談相手はどうするのか。

 その存在が不在だと、「自分は冷遇されている」などと考えるタレントも出てくるだろう。また退所者が出る可能性がある。それでは会社は継続しようが、先細る。

 事務所自体は企業としてのアップデートが進んでいる。昨年6月にはNHKから大物理事(民間企業の元・役員)を顧問として招き、幹部にも大手広告代理店出身者がいる。コンプライアンスの強化や新事業の展開、必要に応じてのデジタル化などはスムーズに運ぶはず。

 むしろ心配されるのはジャニー氏、メリー氏が築き上げた古き良き事務所の伝統が守れるかどうか。メリー氏は自分に反旗を翻したタレントを除くと、かわいがり、守った。それが「うちの子たち」という独特の呼び方に表れた。ほかの事務所のように「うちのタレント」とは言わなかったのである。

 平野紫耀らの退所を止められなかったのはハッキリ言って痛い。勿体ない。事務所側は「うちの子」という感覚で接したのだろうか。

取材・文/高堀冬彦(たかほり・ふゆひこ)放送コラムニスト、ジャーナリスト。1964年、茨城県生まれ。スポーツニッポン新聞社文化部記者(放送担当)、「サンデー毎日」(毎日新聞出版社)編集次長などを経て2019年に独立。
ティアラたちの憶測が飛び交った『ベストアーティスト』でのキンプリたちの疑惑のハンドサイン

 

平野紫耀のブログを縦読みするファン(Twitterより)

 

観戦スタンドに姿を現したメンバーひとつ上の階にいた岩橋も入るように6人で自撮りをしているKing&Prince(ツイッターより)

 

ドラマの撮影中の平野紫耀('22年11月)

 

King&Prince・高橋海人

 

2015年9月、夜の街にそろって繰り出した滝沢秀明と今井翼